60話:四人での昼食
天宮と朝比奈達と席を合わせた。
そんな光景に周囲の男子達から嫉妬の眼差しが向けられる。嫉妬の他にも羨望も混ざっていた。
そんな中、小さな声であったが陰口が聞こえてきた。その向けられる先は――必然的に樹であった。
まあ、そうなるよな。
樹はそうなる事が当然とばかりに受け入れていた。一条も朝比奈も聞こえていたのか、不機嫌そうな表情をするもすぐに元の表情に戻し明るく振舞っていた。
「さっ、早く食べよう!」
「そうだぜ! ってあれ? 樹、今日は弁当なのか?」
「え? あ、ああそうなんだ」
弁当を開けると色とりどりで唐揚げなどもあり綺麗な弁当であった。卵焼きが黄金に輝いているように見えてしまう。そして天宮も弁当箱を開けた。
「……へぇ~」
そんな樹の弁当を見た一条は何かを察した顔をしており、朝比奈も樹と天宮の顔を交互に見て「ふ~ん。そうなんだ。いいなぁ~」と何かを悟っていた。
あかん。バレてる……
事実、樹の弁当は天宮が作った物である。それがクラスにバレれば弁当狙った校内戦争が勃発しかねない。
天宮もそんな二人の反応に冷や汗を流していた。一瞬樹と目が合うも、少しだけ頬を染めるだけでそっぽを向いてしまった。
「た、食べようぜ? 昼休み終わっちまうぞ」
「そうだな」
そうして樹、天宮、一条、朝比奈の四人は昼食を食べ始めた。
「まっしーってなんでも出来るよね」
「そんな、なんでもではありませんよ」
「もう謙遜しちゃって~」
朝比奈はニヤニヤしながら肘で天宮の脇腹をツンツンと突っついた。
「なに話しているんだ?」
「気になる」
「桐生のやつ珍しく弁当だな」
「まさか、天宮さんの手作り弁当だったり!」
「「「ないない」」」
数人が真顔で手を横に振って即否定した。
クラスメイトの会話が聞こえた樹と天宮はホッと胸を撫で下ろした。そんな二人に一条と朝比奈のジーっとしたジト目が向けられる。
「な、なんだよ?」
「あの、なにか……?」
「「なんでも」」
そう言って二人は食べ始めてしまった。
食べ始めて少し、朝比奈が樹に質問してきた。
「ねえつっきー」
「なんだ?」
朝比奈が耳を寄せて囁いた。
「まっしーと付き合えて良かったね」
「ッ!?」
バッと樹は朝比奈の方を向くと非常にイラつくような表情でニマニマとこちらを見ていた。樹は天宮の方に顔を向け小声で。
「もしかして、言ったのか……?」
樹の問いに天宮はボソッと答えた。
「その、はい……」
「まあいいか。二人には感謝してるしな」
「ですね」
そんな会話を聞いていた一条と朝比奈の二人は笑みを浮かべ、「友達として当たり前」と返してくれた。正直二人は両想いの二人がいつまで経っても付き合わないことにムカムカとしており、付き合わせる計画を練ってもいたのだ。
結局はその計画も無駄になったのだが……まあ結果オーライという事だろう。
それからは色々な他愛もないも楽しい会話をして昼食が終わった。
「つっきーにまっしーもまた明日一緒に食べようよ!」
「それがいいな。楽しいし。樹もいいだろ?」
「まし――天宮さんさえよければ」
樹の言葉に天宮は頷く。
「是非明日も一緒に食べましょう」
「やったぁ! つっきーの分のお弁当は明日私が作ってくるね」
「楽しみにしてるよ結花」
「楽しみにしてて!」
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