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ちみっこ魔王は呵呵とは笑わない。  作者: おおまか良好
■■2章-ただ守りたいものを、守れるように-■■
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2章-整う舞台、演者は淡々と爪を研ぐ

復帰にあわせてTwitterも再開致しました。

もうすぐ100話目も見えて参りましたので、

それを機に、1話から改稿しようと企んでいます。


処女作ということもあり、開始当初はただ黙々と作成していたので、

今でこそ改行など、PCだけでなくスマホで閲覧して頂いている方が、

少しでも読みやすいよう工夫するようになりました。


そう言ったところの改善をできたらと考えております。


訓練所の様子を観覧席で見学していたマサルとレオンは、

苦虫を噛んだ様な顔をして、こちらにやってきたエドガーを出迎えた。


「かかっ、なんつーツラしてんだお前らっ」

「むしろ、何故お前はそんな嬉々としてるんだ」

「それは僕も同感、控えめに言ってルイ君がボロ雑巾みたいなってるよ」

「そんなもん知るか。馬鹿弟子が対応出来れば傷も減るだろうさ。

 そもそも、今回の鉄火場は複数相手どるのは確定だろうが。

 あの数、程度で根を上げてりゃ世話ねーぜ」


動員される戦力は300前後と予測される襲撃者たちは、

複数箇所において陽動をしかけてくるとエドガー達は考えている。


王都へ戻るマサル、ルーファスを除くと、

彼らが最も警戒すべき対象は、エドガー、レオン、リズィクルとなる。

次いで、当然だが領主であるオルトック辺境伯とその戦力。


200前後の動員で、

エドガーたちの内、1人とオルトックの全兵力を釘付けする事が必須。

あわよくばもう1人、足止め出来れば大成功。


襲撃し2人を攫う部隊、移動の補助する部隊、中継地点で陣を張る部隊。

陽動を除き残った100程度の人員で以上を考えると、

シュナイゼルたちを襲撃する人員は40~50と目される。


恐らくこの数字は、限りなく正解に近いとマサルは断言できる。


王子と王女の誘拐を、現地調達した傭兵や冒険者崩れにさせる訳にいかない。

何かの手違いで、殺されてしまったら目も当てられない。


なので、誘拐自体は何がなんでも、シュナイゼル擁立派の息のかかった貴族、

またはその私兵に実行させるしか選択肢ないのだ。


だからと言って、誘拐成功の可能性をあげるために、陽動の人員を減らすか言えば、

この陽動自体を失敗させる訳にもいかない。


故に、仮想ルイの敵対者は最大で50。


そこでエドガーは、マサルの出した結論を踏まえ、

短い猶予期間内で行えるの訓練内容を、従来の物から刷新。


シェラを筆頭にクロエやリルネッサに"連携に定評がある"班隊(パーティ)を挙げさせ、

エドガーからの指名依頼として、協力を依頼。


こうして、対多数戦闘の経験が乏しいルイは、

徹底的に模擬戦を繰り返す事を指示されて今に至る訳だ。


「対多数の経験値を積ませたいエドの親心は当然、僕だってわかっているさ。 

 でも、レオンに聞いたけど、攻撃どころか防御も禁止するのはなんでだい?」

「非力で、ちみっこ馬鹿弟子が、まともに防御なんざしたら吹っ飛ぶだけだろ。

 攻撃なんざ"死神"様から暗殺者として太鼓判もらってんだぞ?

 体勢も崩れず、安定した回避、そうなりゃ落ちるのは相手の首だ」


―― 連携して襲いかかる相手から延々と攻撃にされるのを全部かわせ。

   ちなみに、攻撃禁止。防御行動も禁止だ。ただただ回避しろ。

   制限時間は設けない。

   疲労で動けなくなるまで続けろ。

   

3週間足らずのこの期間、日々別の班隊(パーティ)を用意して毎日繰り返させた。


素材がいくら良くとも、それはただの6歳児。

身体も小さい、力などあるはずもない。

体力だって並の子供よりはあると言っても、

冒険者や傭兵に敵うはずはない。


ルイがギルド内の無法者を打倒できるのは、

急所を狙い、的確にそこを突く技量、そして大人顔負けの素早さがあるからだ。


「さっきも何度か咄嗟に防御して吹っ飛んだの見てたろ。

 横薙ぎを受けりゃ、簡単に吹っ飛ぶ。袈裟切り受けりゃ足が止まる。

 切り上げを受ければ、お空の散歩。」

「……レオンもこう言われてしまったから、黙って見守るしかなかったと」

「そう言う事だ」


レオンは眉根を上げ複雑な顔をして頷く。マサルもまったく同じ心境だ。

だが、この件は荒治療であることには違いないが、

まだ幼いルイには、しばらく付いて回るであろう事柄なだけに反論の余地がない。


「回避に無駄な動きがなくなれば、精神的にも余裕が出るから選択肢も増える。

 大聖堂で見たルイの動きを鑑みれば、攻撃技術に関しては心配はないのは確かだな」

「だろ?・・・お、調度良いとこかもな。あれ見ろ、あれ」


エドガーがそう言い顎で指した向こうでは、

相変わらずルイがナルシェたちの攻撃に晒され続けている。


「そろそろ限界かい?あからさまに動けなくなってきてるね」

「あ?もっとちゃんと良く見ろ。節穴か?節穴陛下なのか?てめぇは」

「面白い冗談だね。喧嘩なら買うよ?」


険呑な雰囲気を2人が醸しだしたところで、

レオンがマサルの頭を掴み、力任せにルイの方向へ向かせた。


「馬鹿相手にムキになるな。そんな事より、もう一度よく見ろ」

「痛い…いたたっ、わかったよ。ちゃんと見るからっ」


首を擦りながら改めてルイの姿に注視すると、

すぐにエドガー、そしてレオンが言わんとする事を理解した。


「動けないんじゃなくて…"動かなく"なってきてるのかい?」


カリィ、スリンが巧みに繰り返す、挟撃や時間差攻撃。

その間も、執拗に繰り返される牽制と、常に足下を脅かすカチェス狙撃。


初めは多様していた"(ブリット)"だけではなく、"(アロー)"や"(ランス)"も弾幕に組み込み。

魔法自体の速度に緩急を付け、威力の強弱も織り込んだ弾幕を繰るナルシェ。


そして絶え間なくルイの隙を窺い、投擲剣の様な羽根を幾重にも散らし、

滑空しては鋭い爪と衝撃を産む声を上げ襲いかかる2体のハルピュイア。


元々低くはない水準であった彼女たちの連携の精度は、再構築を経て、

ルイとの訓練の中、絶えず試行錯誤が繰り返された事もあり、

元来のそれを大きく超え飛躍していた。



だが、

それでもなお、

ルイの動きの前では霞んでしまう。


それは、まるで予定調和だと感じるほど、

極自然にルイの傍らを通過してゆく槍と剣。

動き出しも動き終わりもほぼ無いルイのどこに牽制して良いかわからず、

ただ闇雲に射られた矢をルイは見ることもなくかわして行く。

緩急、そして強弱を加えたうねる様に遅いくる弾幕は、

ルイの立つ場から、5歩程離れた位置に多重展開された魔力障壁に阻まれ沈黙。


それらを作業の様に繰り返すルイの瞳は、隙を探る2体のハルピュイアから離れない。


いつまでたっても隙を見い出せず、焦燥に駆られた二体のハルピュイアは、

ついには動きに精彩を欠き、ただただ破れかぶれに爪を振るうだけとなった。


「あはははっ、嫌になるよっ。今の僕は自分の語彙力に欠片も自信がない」

「ふふ、ああ、良くわかる。陳腐な言葉しか俺も出てこない」


もう笑うしかないとマサルは声を漏らし、

珍しくレオンも声を出して笑い、マサルの言葉に同意を示した。


そんな2人のやり取りを横目に、しばらく厳しい視線で、

ルイの動きを追っていたエドガーは、頭を掻きながら訓練場の出入り口へ向かった。


「?」

「彼女たちを明日以降も、ルイの相手にと思っていた宛がはずれたんだろ」

「なるほどね、明日以降の訓練相手の手配と言う訳か。

 たしか彼女達ってDランクだったっけ?」

「実力的にはC。実績が足りてないとシェラの資料にはあったな」


マサルは彼女たちに目を向けたまま、嘆息して口を開く。


「あれで?」

「ああ、あれでだ」


レオンも困った顔を浮かべてそう返した。


「あれでDも大概だけど、Cも詐欺だね。すぐBにするべきだと思うよ」

「同感だ。クロエあたりに早急に実績を踏ませる様に伝えておこう。

 …だが、そうなってくると明日以降の相手探しが難しいな」

「B以上で連携が上手い班隊(パーティ)ね。心当たりがあることはあるから、

 エドが戻ってきたら提案してみるよ」

「そうしてやってくれ。明日は予定通り、お前とルーファスは王都に戻るのか?」

「ああ、僕とルーファスは王都で吉報を待つとするさ。」

「吉報を待つ…か、課題は突破と言うことか?」

「僕の課題だけじゃないよ。ルーファス、リズの課題も乗り越えたよ」


領主館でリズィクル、ルーファスと3人が出した結論。

各々の課題内容と、今現在のルイの評価を客観的な意見をマサルへ伝えた。


途中、リズィクルの課題を想像以上の成果で突破し驚嘆さらしめた話や、

ルーファスが口にした"王城程度なら"対応可能な隠密能力。


それらの話題の際は、さしものレオンも驚きの声をあげた。

最後に、バイセルの抜き打ち試験の話題になり、

激昂したルイが、そのままオルトックを暗殺しに行きそうな勢いだったと、

楽しげに笑って話すマサルに呆れた顔をし、

バイセルの事も「困った人だ」と小さく零した。


マサルがレオンに説明を終えた頃、ルーファスとエドガーがやってきた。


「おーおーおー、これじゃあ後輩ちゃん苛められてるみたいっすね」

「茶化すな」


開口一番、わざとらしく頭を抱えて嘆いてみせるルーファス。

エドガーは、そんなルーファスを胡乱な眼つきで睨みつけた。


お手上げとでも言う様に、諸手をあげておどけて見せたルーファスは、

値踏みする様な視線をルイとナルシェたちに移す。


「ああ、今のが短剣。それで無手…いやこれは鋼糸か。

 それで…魔法…発現(コール)っすね。…そして、特異能力(ユニーク)の間合いは、そうっすね。

 んー、"黒鎖"はもう少しってとこっすか…。"百舌(もず)"の発動はスムーズになったすね」


ぶつぶつと顎に手を当てルイの観察を続けるルーファス。


現段階で、一番戦闘スタイルの似通った点の多いルーファスは、

回避を続けるルイの動きを目で追いながら、

ルイならばどんな反撃をするか、そしてその成否、精度を分析していた。


それをするよう、ルーファスに依頼したエドガーは、

時折、その言葉に同調し頷いてみせ、逆に眉根を歪ませルイの姿を追う。


レオンとマサルは、そんな2人の意図を察してか、口を挟まず黙って見守った。


「あの水準の相手を基本にするなら、遭遇戦で容認出来るのは今と同数。

 得意のかくれんぼで、後輩ちゃんが先手とれるのなら、初手で3人は落とせるっすね」


しばらく観察していたルーファスは、身体を起こしそう総評を口にした。


「追加で増員きたらどーなる」

「はあ、誰に言ってんすか。エドの堪頼りの索敵じゃあるまいし。

 後輩ちゃんの索敵範囲舐め過ぎっす」


エドガーが懸念を口にすると、

ルーファスは呆れたと言わんばかりに、素気無く返す。


「んでどうするっすか、軽く及第点を超えてきたっすよ後輩ちゃん」


そして、続けて出た言葉はルイに護衛をさせるか否か。


「やらせる」

「「「・・・」」」


即答。

何かしら注文をつけて、ぐだぐだ文句を言うとばかり思っていたのは、

何もルーファスだけではない。

レオンとマサルも思わず、口を開けて呆然とした。


「んだよ、揃いも揃って黙りこくりやがって」


恐らく3人が驚いているであろう理由も、少し心当たりがあるエドガーは、

多少の苛立ちを感じはしたものの、静か息を吐き出し言葉を続ける。


「まぁ、ぶっちゃけ昨日までの様子を見る限りでは渋るつもりだった」


その言葉に偽りはない。

エドガーは実際、今日のルイの様子を目にするまでは渋るどころか、

一度、白紙に戻す事すら考えていた。


「バイセルの爺さんが、やらかしてくれたのが原因かは知らねぇが。

 馬鹿弟子のツラが変わりやがった。あれは腹括った野郎のツラだ」

「覚悟だと?もともと、それはあっただろう

 ここ3週間ほどのルイに気の緩みがあったとは俺は思えん」


エドガーの物言いが、些か腹に据えかねたのか。

レオンの言葉には若干の怒気が混ざる。


「気が緩んでたとは言ってねーよ。課題つーか、試験か?

 …絶対に文句ひとつ言わせねー、合格って言わせてやる。

 そんな生意気なツラして燃えてたのは俺も知ってる」

「昨日まではそうだったと。じゃあ、あのルイ君はどうなんだい?」

「ゼルとリーヌを俺の手で守るってツラしてやがる」


ぶっきら棒にそう口にしたエドガーが誇らしげに笑みを深める。

そこに敏感に反応し、苛立ちを隠さずに口を開いたのはルーファスだった。


「自慢の玩具を見せびらかすガキみたいな顔してるとこ悪いっすけど、

 課題に取り組む動機も2人のためを思ってなんじゃないっすか?

 エドっちの言う面構えが整わなかったら、その努力も認めないって聞こえるっすよ」

「あ、そうか」

「そうかじゃないっすよ、ったく。

 まあ、その反応見たら後輩ちゃんの努力は認めてるのはわかったっす」

「ルイが弱音を吐かず努力する事が、当たり前と感じている証拠だな。」

「だから、悪かったっての」


エドガーはエドガーなりにルイを高く評価している。

それをルーファスもレオンも理解している。

素直に謝罪を口にした事からも、本人に悪気はない。

それまで口を挟まずにいたマサルもそれをわかっている。


「あははっ、なんかこういうの学園の時、思い出すね」

「もっと殺伐としてたっすけどね」

「かかっ、ちげーねーな。あー、それで相棒。お前はどーなんだ」

「反対する理由がない。ただ、しっかりと俺からルイには釘は刺す。

 反応も気になるからな、明日少し時間をもらおう」

「「「・・・」」」


"釘を刺す"と言ったレオンの言葉に、各々が様々な反応を見せる。


ルーファスは、祈りを捧げる様に天井を見上げ、

マサルは、頬をひくつかせて"ほどほどにね"と零し、

エドガーは、ルイに視線をおくり不安そうな顔をした。


「大事の前に、心をへし折る様な真似はしない。

 俺をなんだと思ってるんだ」


不服そうに眉を寄せ、その太い腕を組み憮然とする。

幾ばくかの不安が捨てきれない3人が見つめた先には、

これから起こる事を暗示するかのように、体力が尽きたルイが倒れていた。


慌てて駆け寄るナルシェ達の姿に、無意識に3人は自分の姿を重ねた。

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