58.似た者同士?
ネルデアとフォーリーに付き添われてルミアーナは部屋に戻ってきた。
ネルデアが召使に命じて、いくつかルミアーナにも着れそうなネルデアの若い頃のドレスを持ってくる。
はい、そうです。
ネルデア様もまた、女の子が欲しかったんですね?そうなんですね~?
それで、着せ替えとか、したかったんですよね?
はいはい。
もう、このパターン慣れてきましたよ?と、ルミアーナは思った。
「さあ、ミウちゃん♪どれがいい?」と言われて一瞬、何か違和感を感じる。
見習い騎士の茶色の瞳と髪の時にはミウと呼ばれるのに抵抗はないんだけどルミアーナの姿の時にはルミアーナって呼ばれないとなんだか、感覚が違うのである。
もはや、条件反射とでもいうべきであろうか?
「姫様、もはやそのお姿を見られておしまいになったのですからネルデア様にだけは、本当の事をお話になったほうが、よろしくありませんか?」フォーリーが心配そうに、ぼそぼそと小声でルミアーナに話しかける。
「そ、そうだよね?私も、この姿の時にミウって呼ばれるの何か抵抗があるし…」
「なに?なあに?内緒話??私も混ぜて混ぜて?」とネルデアが、割って入ってきた。
「あ…あのネルデア様、ホントにホントの内緒話をしても宜しいですか?」と覚悟を決めてルミアーナはネルデアに本当の事を伝えることにした。
どうせ、ダルタスには帰ってくるなと言われているし、実家はまさかの自分の葬式中で帰れるはずもない。
匿ってもらわないといけないなら事情ぐらい話すのがせめてもの礼儀だろう。
ましてや、自分の愛する人の実のお母様である。
後々からばれて嫌われたくはない。
今ならまだ、大丈夫そうな気がする…多分…。
「まぁ、もちろん、秘密は守るわよ!なあに?」
瞳を輝かせるネルデアに、さすがは王妃様と仲良しだっただけあるな…なんかノリが似てる…と思いつつ、ルミアーナか覚悟を決めてこれまでのいきさつを「じ…じつは」と、ネルデアに打ち明けた。
1.ダルタスに愛人がいると誤解して家出した事。
2.その間に王城に何か事件があり自分は死亡扱いになった事。
3.当然、自分は死んでないし元気だけど捜査の為だか何だかで、ダルタスに帰ってくるなと言われて帰れない事。
4.実家も自分の葬式でしばらく帰れそうにない事…等々…。
「ええええええええええっ!!!」
「あ、貴方が公爵令嬢のルミアーナ?息子の婚約者だって言うの?」
「そうっ!そうなんですぅ~。ネルデア様!黙っててごめんなさいぃ~。嘘ついてごめんなさいぃぃぃ~」と頭をこれでもかという位に下げる。
「ま!まあまあまあまあ!公爵令嬢がそんなに簡単に頭をさげてはなりません。でも、じゃあルミアーナ様とお呼びしないと」
「まさかっ!ルミアーナと呼び捨てにしてくださいませ!長いのがお嫌でしたら縮めてルミィでもルミアでもかまいませんから」と可愛らしく瞳をウルウルさせて哀願する。
「まぁ、でも公爵令嬢の貴女に、そんな…」とネルデアは困惑した。
「だってダルタス様のお母様という事は私にとっても、お、お、お義母様になる訳ですし…」
自分で言って気恥ずかしくなり、真っ赤になるルミアーナにまたもやネルデアは、きゅんとした。
はうぅぅぅぅっぅっ!
な…何なのこのコ、可愛い…なんかものっ凄く可愛らしいんですけどぉ~と、身悶えた。
きゅん死にしそうなネルデアである。
上級貴族なんて高慢ちきな姫君ばっかりだと思ってたけど、この子ってば全然素直で人なつっこいんですけどぉ~!
と、心の中で叫びまくるネルデアである。
「ま、まぁ、そう?そうね、息子のお嫁さんになる人ですものね?えっと、ルミィ?お言葉に甘えてルミィと呼ばせてもらうわね?そ、それでルミィは息子の事をちゃんと好きでいてくれているの…よね?」
噂では息子がむりやり婚約を強いたとかなんとか言われている。
ここは確かめておきたい!とネルデアは思い、否定されたら立ち直れないと思いつつも(怖いけど)聞いてみた。
「は、はい。大好きです」とますます真っ赤になるルミアーナである。
歓喜のあまり、ネルデアはくらっと眩暈がした。
『も、もうたまらん!』
この超絶に可愛らしい公爵令嬢が、あの強面で嫁のきてがなかったらどうしようかと思っていた息子の事を大好きだと言っているのだ!
『神様ありがとう!』
思わず心から運命の神に感謝するネルデアである!
「わかったわ!ルミィ!私におまかせなさい!貴女の事は私が必ず守ってみせてよ!ここで、いくらでも匿ってあげるから自分の家に帰ったつもりでくつろいでいらっしゃいな!」と請け負い、
「あなたは息子の嫁ですもの!娘も同然!命に代えてでも護ってみせてよっっ!」と握りこぶしを高く掲げた!
その、何ともたくましく頼もしい所作にフォーリーが感動してパチパチと手をたたく!
「よかったです!私、感動いたしました!ネルデア様!なんとお心が広くて!お優しい!しかも、なんだか姫様と似ておいでです。まるで本当の母娘のようでございますわ」と涙を流しながらいった 。
「「え?ほんとに?」」二人が同時に叫んだ。
「「嬉しいっ」」と、これも同時に叫ぶ。
二人は同時に全く同じ台詞をかぶらせて、お互いを見合って思わず笑った。
「私たち、とても気が合いそうね」とネルデアが言い、ルミアーナが頷く。
二人は手を取り合って喜び合った。
間違いなく似た者同士なようである。




