54.ネルデアの密かな、いけない好奇心
家出したあくる朝、『王城での騒ぎ』をまだ知らぬルミアーナ達三人は、昨晩遅くまで月の石と向き合っていたせいもあり、日が昇っても、まだすやすやと眠りの中だった。
三人が起きてくるのを待ちきれなかったネルデアは、リゼラの部屋にやってきた。
現役騎士のリゼラならもうこの時間には嫌でも目が覚めているだろうと思ったからである。
しかし、どうやらリゼラもまだ眠っているようだと思いベッドをちらりと覗いてみた。
「まぁ!」
「なんて可愛らしいの?」と、思わず声をもらすネルデアだった。
身体を丸めるようにして泣きべそ顔のまま眠るミウをまるで雛をまもるかのように囲んで眠るリゼラとフォーリー。
(三人で一緒に眠ったのね?あらあらまぁまぁ♪ふふっ)
客人の寝顔をしげしげと見つめるなど、マナー違反ではあるとは思いつつ、ついついネルデアの好奇心が勝ってしまう。
その可愛らしさが微笑ましく三人の寝顔をしげしげと眺めてしまった。
(はふん!なんて微笑ましいの)
この国ラフィリル一番の美貌の女性騎士として有名なリゼラ…弟が可愛くてたまらないのね?ん?弟???
いくら子供でも、そろそろ思春期?の男の子が姉やましてや侍女とまで一緒に眠るものかしら???
この侍女も随分と可愛らしい…とリゼラは思った。
それに、とても品がある。
多分、上級ではないにしても貴族の出だろうと思われた。
ん?ん?ん~?
だとしたら普通に考えたら、公爵家や侯爵家などの上級貴族に仕えるのが普通じゃないかしら?たしか騎士リゼラのご実家は子爵家(どちらかと言えば下級貴族?)だと聞いたことがある。
おかしいな?と、次々に疑問が浮かぶが、この三人の寝顔はまさに天使か女神か聖母か?という風情である。
悪だくみをしそうな感じは全くしない。
少々、疑問に思うところはあるもののネルデアは自分の人を見る目には妙に自信があるので警戒するどころか余計に興味をそそられるだけだった。
そして、きらりとルミアーナの首から胸にかかった光るものが目に入る。
「これは?」とそっと手をやるとミウの柔らかい胸にあたった。
ん?んん?
あらあらあらまぁ~…と顔がほころぶ。
『女の子』だったのね…?そうか、そうよね…まだ見習いのうちなら、男の子のふりをしているほうが修行中は何かと都合が良いかもね?
お姉さんのリゼラの提案でかしらね?と、思った。
自分も元は、女性騎士である。
見習いの頃は立ち会う相手にすら困る有様だったものね。
今だって女性騎士はまだまだ少ないものね…うんうん…と頷く。
女の子三人で昨日はきっと遅くまで話し込んでいたのね?
女の子のミウにはあの強面の二将軍が怖くなっちゃって泣いちゃったのかしら?
そんな風に勝手に解釈し納得するネルデアだった。
(う~ん…可愛すぎる…)
そして、どうせ二将軍、カークもアルフも遅くまで飲んでいたから、まだ寝てるんだし…と、もう少しだけ寝かせてあげる事にして、そ~っと部屋を立ち去るネルデアだった。




