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目覚めれば異世界!ところ変われば~【Kindle本で1巻発売中】  作者: 秋吉 美寿(あきよし みこと)
ところ変われば、騎士見習い?
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53.王城でルミアーナ死す!?

 そして、その頃(真夜中だが)王城では大変な騒ぎが起こっていた。


 王妃の部屋の続きの間、つまりルミアーナの為に(しつら)えられていた部屋で火災が起きていたのである。


 なんと、ルミアーナがいつも使っていたベッドの下に火薬が仕掛けられていたのだ。


 状況から見て、それは明らかに公爵令嬢ルミアーナを狙ったものであると思われた。


 誰もが王妃の部屋の間近での、この大胆な犯行に驚きを隠せなかった。


 事を重く見た王家は、直ぐ様ダルタス将軍を通して厳重な警備体制をしき事件解明の為の捜査を命じた。


 この時ばかりは、ルミアーナが家出をしてくれていて良かったと思うダルタスだった。

 もしも、ここで彼女が眠っていたらと思うとゾッとした。


 ルミアーナの家出については、箝口令がしかれ、ルミアーナ捜索も秘密裏に行われていたので、今回の犯行は明らかにルミアーナがこの部屋のこのベッドで眠っているという事を前提として行われた犯行と思ってまず間違いは無いだろう。


 王城の一室、円卓を囲みアクルス王太子とルーク王子そしてダルタス将軍の三人が国王夫妻を待ちながらこの事件について話し合っていた。


「ルミアーナ嬢が、命を狙われていたのは私の妃候補だったからではなかったのか?」王太子アクルスがダルタス将軍に問う。


「私と婚約してからのこの犯行…同一犯であれば目的は別だな。それに妃候補がらみの線は既にかなり調べた。今となってはむしろそれ以外の可能性が高い」


「そうか!なるほど」


「何が、なるほどなんだ?ルーク」と、アクルスが不思議そうに聞いた。


「いや、ルミアーナがうまい具合に城を離れることになったのは、実はルミアーナの勘違いのせいだけじゃなくて、やっぱり月の石の精霊の意志があったんだなと思っただけだよ」


「え?月の石は、そんな事まで予測できるのか?」


「確かな事は言えないけど、月の石がルミアーナの命を繋いで以来、月の石の精霊とルミアーナとの間に何らかの絆が生まれたように思うんだよね。それが何故かなんてわからないけど…だって、月の石はルミアーナが怒ったり悲しんだりするだけで、それを宥め励ますように次々とこの大地から生まれ落ちて話しかけてたって言うんだよ!?凄くないか?」


「なぜ、お前がそんなことを知ってる?」と、ダルタスがむっとして、聞く。

 そんな事は、初耳である。

(ルミアーナ自身だって、ついこの間まで知らなかったのだから仕方がない事なのだが)


「嫌だなあ、たまたま聞いただけだよ。月の石の事は僕なら色々知ってると思ってルミアーナも聞きやすいんだろ?機嫌悪くしないでよ」とルークはちょっと呆れた様に言う。


「そうだそうだ!嫉妬は見苦しいぞ」とアクルスがちゃかす。


「む!お前(アクルス)にだけは、言われたくない!」とダルタスは憤慨するがすぐに真面目な顔で話を進める。


「いやしかし、ルミアーナが家出していてくれて本当に良かった。これでは実家のアークフィル公爵家の方だって安心とは言えまいしな」と溜め息をつくダルタス。


「そうだな、ダルタスにしてみれば面白くはなかっただろうが、家出してなきゃ最悪死んでた。良くても全身大火傷(おおやけど)だ」と、アクルスも神妙な面持ちで相槌をうつ。


 三人が話し込んでいると、そこに、ようやく王と王妃が入ってきた。

 アークフィル公爵夫妻も一緒である。


 王はあまりの事の重大さに、今が深夜にも関わらず使者を走らせ、ルミアーナの両親である二人を呼び寄せたのである。


 呼び寄せられた両親は、愛娘ルミアーナの命がまたもや狙われた事にショックを隠せず青ざめている。

 無理もない事である。


 三人はさっと立ち上がり礼をとる。


「よい!楽にしろ。とにかく座れ」と王が声をかけ席につくと王妃と公爵夫妻もそれにならう。


「はっ」と返事をしてのち、三人も着座した。


「この度の事は見逃せない重大事だ。むろん、ルミアーナ可愛さだけの事ではない。此度の事件はこの国の王妃の部屋の続きの間で起こっている。しかも王妃の部屋と自由に行き来できる中でだ。これは王室への反逆と考えてもおかしくない大罪だ」


 皆、緊張した面持ちで頷く。


「しかし、解せぬのはルミアーナをそこまで執拗に狙う理由だ。当初、次期国王である王太子の妃候補であるが故に王太子妃の座を狙う貴族たちの誰かの犯行ではないか?と疑っていたが、この一年調べ尽しても確固たる証拠はあがっておらぬ…。こうなっては、もはや何か全く別の方向から調べることが必要だろう。ダルタス…どう思う?」


「陛下、それについては私も思っておりました。多少の妨害工作程度のことなら仕掛けていた貴族はおりましたが、さすがに暗殺、ましてや王妃の部屋の続きの間に何かをしかけようなどという大胆な所業をしそうなものは見当たりませんでした。そこで提案なのですが…」


 一同は一斉に息を呑み込み、ダルタス将軍の言葉の続きに聞き入る。


「ルミアーナは、この王城にて死んだことに…」


 皆は一瞬、ぎょっとしたが一様に納得した。


 少なくとも、()()()()()()()()()、これ以上狙われる心配はない。


 そしてルミアーナが目的通り死んだと思った犯人が何らかの動きを見せるかもしれない。

 ルミアーナが死ぬことによって何を成したいのか?


 結果、ダルタス将軍としては非常に非常に不本意ではあるが、ルミアーナの家出を支援する羽目になった。


 そして、翌日。

 国中に公爵令嬢ルミアーナの訃報が公布されたのだった。

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