51.月の石と向き合ったら…
その夜、三人は眠りにつく前、それぞれの月の石とにらめっこしていた。
リゼラとフォーリーは、慣れないながらもルーク王子に、ネルデラと無事に会えたことやいきさつ、昨日から今日までの事を事細かく報告している。
石を握りしめ、ひたすら念じるように会話する様は、端から見たら異様だ。
(変な宗教にでも入っているのかと疑われそうな光景である。)
もちろん、案内された客間に籠ってからである。
ルミアーナは、ルークへの報告を二人にまかせて、気になっていた事を正確に聞き直す。
月の石よ、知っているなら教えて…
今、あの人は、何を思ってる?
石はぽうっと光りミウに答える。
『ルミアーナ…ノコト…』
『え?本当に?』
『…ホント…』
『ダルタス様に私以外にも好きな人…あ、愛人なんているの?』
『ダルタス、スキナノハ、ルミアーナダケ…アイジン?…イナイ』
『えええっ?じゃあ、どうして?どうして教えてくれなかったの?』
『?…アルジ…ルミアーナ、キカナカッタ…ドリーゼ、カンチガイシタダケ、ウソ、ツイテナイ』
『ルミアーナ、キイタ…ハ、ドリーゼ、ウソツイテルカ?…ダッタ』
『そ、そんな…だって…』
どうしよう…どうしよう…どうしよう…
私…また…ダルタス様の気持ちを疑ってしまった。
しかも、超絶、嫌味ったらしい手紙を残してきてしまった!
どうしよう~~!と、ルミアーナは焦り狼狽する。
その呟きにも、ルミアーナの月の石は、たどたどしくも淡々と答える。
『シタイヨウニ、スレバイイ』
『…って!ち、ちょっと冷たくない?なんか、突き放すみたいな言い方だよ?』
…と恨み言を心の中で呟くと、また、石が答えた。
『…ウマレタバカリデ…マダヨクワカラナイ。アルジ…コマッテルノカ?』
ルミアーナは、はっとした。
自分はなんて自分勝手なんだろう!
そうだよ!この月の石は、私を慰める為に生まれたんだよね!?(ルーク王子の説明によるとそう言う事らしい)
生まれたてのほやっほやなのよ!
頭の中だけとはいえ、しゃべれるだけでもすごい事なのよ!
(しゃべる…というよりは言葉を感じるっていう感覚だけれど)
それなのに、自分の早合点で、困ったからって、月の石を責めるなんて、私のバカっ!
とミウが自分を責めたら…
『アルジ、バカト、チガウ』
とつたなくも優しい言葉をかけられた。
『なんて、優しい月の石なの!』と感極まる!
『うわ~ん、大好きだよう!』
月の石をぎゅ~っと、胸元で、握りしめると石が嬉しそうに黄色みを帯びた柔らかい光と淡いピンクの光を交互に瞬かせたた。
むちゃくちゃ、可愛い。
ルミアーナ十六歳、月の石と向き合ったら…自分がバカだった事を知りました。




