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目覚めれば異世界!ところ変われば~【Kindle本で1巻発売中】  作者: 秋吉 美寿(あきよし みこと)
ところ変われば、騎士見習い?
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49.ネルデアと対面

 ミウ達一行は、馬に乗って郊外にあるネルデアの屋敷を目指していたが、馬の手配に意外と手間取りネルデアの屋敷近くにまで来た時にはとっぷり日が暮れていた。


 黒毛の馬にリゼラがフォーリーと乗り、栗毛の馬にミウが三人分の荷物と一緒に乗っている。

 いよいよ一つ先の丘の上にネルデアの屋敷が見えてきたとき、前方の道をふさいで荷馬車が立ち往生していた。


 どうやら、車輪が溝に嵌っているようである。


「どうかされましたか?」リゼラが馬を降り近づいて声をかける。


「ああ、旅の騎士様ですかい?実は、あそこのお屋敷の買い出しの帰りなんだけど車輪が溝にはまっちまってね…夕食の準備の買い出しだったっていうのに間に合わないよ。くそっ」と屋敷の下男らしき男がぼやいた。


「どれ、私たちの馬で引っ張ってみましょう」とミウが荷物の中から綱をとりだし荷車にくくりつける。


 ここでも美羽時代の記憶が大いに役立った。

 小学校の低学年まで在籍していたガールスカウトで学んだ解けにくく解きやすいロープの結び方でさささっと手際よく馬の鞍と荷馬車の取っ手を縛り付ける。


 テキパキと作業をこなすミウにリゼラは驚いた。

 騎士である自分よりよほど仕事が早いではないか。


「さあ、姉さまの馬の鞍にも縛るからフォーリーも馬から降りてね?あ、姉さまも手綱を引っ張ってね?」

 ミウの時はリゼラのことを姉さまと呼ぶのはもはや日常慣れ親しんだ条件反射である。


「はぁあ~、まだお若いのに随分と頼もしいですなぁ」と下男は感心してそのテキパキとした動きや指示に感心した。


 それからすぐに二頭の駿馬に引かれた荷車はごろっという音をたてて溝から出ることができた。


「ああ~、良かった良かった。本当にありがとうごさいます!」と下男がミウ達に頭をさげていると屋敷のほうから二頭の馬がかけてきた。


「ティブン、どうした?」恰幅のいい四十代後半くらいの男性が騎乗したまま下男に声をかけた。


 そして、じろりとミウたちの方に目をやると、

「お前たち、何者だ!この先はラフィリアード公爵夫人の館しかない。こんな時間に何用でうろうろしているのか?」とまるで不審者を咎めるような言い方で問い詰めた。


すると、「アルフ!やめてちょうだい!見てわからないの?溝にはまっていたうちの荷馬車を馬で引っ張って下さった様にしか見えないでしょう?」と後ろから馬に乗ってきた美しい婦人が、きつい口調でアルフと呼ばれた人をを叱った。


「さ、左様でございます。アルフ様!ネルデア様!この方たちは通りすがりに困った私を助けてくださったんでさぁ」と下男があたふたとして訴える。


「「「えっっ!?ネルデア様?」」」とミウ達三人の声が重なる。


「あ、あら?私をご存じなの?うちの下男がお世話になりました。使いを頼んだもののあまりに帰りが遅いので、心配で様子をみにきたのよ」


「そうだったんですか?」とリゼラが答えて、三人が小さく頭を下げた。


「うちの下男がお世話をかけましたね?大したおもてなしもできないけれど、良ければうちにお立ち寄りくださいな、どこへ行く途中かは知らないけれどこの辺りはもう宿屋もないし、良ければ泊まっておいきなさい」とネルデアは優しく声をかけた。


((( や、やさしいい~)))と心の中で思うミウ達である。


 ところが後ろから不機嫌そうな声でアルフと呼ばれた偉そうな男性が、

「こんな時間に通る旅人なんぞ怪しい!ネルデア、そう簡単によく知りもしないよそ者を招くな」とネルデアに言った。


 (なんか、感じ悪いな~このおじさん)とミウが思っているとネルデアが反撃してくれた。


「まぁぁぁぁ!アルフ!貴方の目は節穴なの?この三人のどこが怪しいっていうの?こんな綺麗で可愛らしい旅人さんなんてめったにお目にかかれないわよ。それにほっといても誰も責めないのに困ったうちの下男を助けてくれたのよ?うちの者が世話になったのだから主人(あるじ)の私がお礼をするのは、当たり前ではないの!」とびしっと言い切る。


 (きゃあ~!ネルデア様かっこいい~)と心の中でルミアーナはパチパチと手をたたく。


 ドリーゼ様にいびられて出ていったという先入観から、もっと儚げな方を想像していたのだけれど何か違う気がしたが、そうだった!この方は元女性騎士だったのだわ!とミウは思いだし納得したのだった。


 ***


「あ、あの…アルフ様?と仰るとこの国の三将軍のお一人、南東を守護されるアルフ・ソーン将軍閣下ではございませんか?」と騎士であるリゼラが声をかけると、


「む!貴様、何故それを?何者だ?」とアルフはギロッとリゼラをにらみつけた。


 それに対しリゼラは、さっと、騎士の礼をとると、胸に右手をあて頭をさげ、


「大変失礼致しました。私は王室直属、近衛騎士団ウルバ隊に籍を置くリゼラ・クーリアナと申します。そして、ここにおりますのは弟のミウ・クーリアナと侍女のフォーリーです。本日は休暇をとり、近場を巡っておりましたが、ダルタス将軍のご生母が訓練場をお庭に作られ見習い騎士にも門戸(もんこ)を開かれているというお噂を聞きまして、見習いである弟の為にとこちらに立ち寄らせて頂きましてございます」と、口上をのべた。


すると、アルフは、「何?では其方が噂のウルバ隊の女騎士リゼラか、なるほど、噂通りの赤い髪と美貌だな」と少しだけ警戒を解いてくれた様子だった。

 さすがはリゼラ姉様だね?うふふんとミウは思う。


「あらあら、もともと私のお客様だったのね。じゃあ、さあ、いらっしゃいな。こんなに可愛らしい三人なら大歓迎よ」と機嫌よく屋敷に招いてくれた。


 ネルデアはとても優しく朗らかな女性のようでミウ(ルミアーナ)は嬉しかった。

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