313.紅い髪の騎士は王太子を見張り続ける。
何がどうして、どうなったら、こんな事に???とリゼラは、思った。
自分の本来の目的はルミアーナ様の護衛!
それなのに、それなのにっっ!何で私はあの王太子を見張っているのだ…???
先日の王太子とのいきさつや会話を包み隠さず、ルミアーナ様に伝えたら何故かルミアーナ様は大爆笑されていた。
それはもう、窒息しそうな勢いでの大爆笑である。
そこには慎みという言葉は皆無だった。
「あっはっはっはっは!そ~ね~!リゼラったら頼もしいわぁ~!そうねっ!ぷふふっ!わ、私の事はいいから、しっかり王太子様の事、見張っちゃってちょうだいな!ぶほっ!」と涙まで浮かべながら笑っている。
ううぬ…解せぬ…。
しかし、主でもあるルミアーナ様からも見張るように言われたのである。
ルミアーナ様のお側を離れるのは不本意だが致し方ない!
まぁ、そもそもルミアーナ様が本気になれば、王太子どころかこの国一番の英雄と言われるダルタス将軍でさえ投げ飛ばすことのできる猛者なのだから、護衛なんて果たして必要なんだかどうだか…というところなのだが。
おまけに月の石の主であるルミアーナ様には精霊のリュート様が常に付き従い護っている訳だし…。
そう考えると途端に、自分の存在価値に凹むリゼラだった。
ルミアーナ様は言った。
「リゼラったら、伯爵位も賜わって、リゼラ・クーリアナ伯爵となったのだから、私の護衛なんてやめてもいいのよ?もともと私にとっては姉のような存在なのだから!実際、騎士修行の時はミウ・クーリアナ!貴女の弟として一緒に修行した仲ではないの!」
その言葉に、やはり、私の護衛など必要ないのだと悲しくなる。
くっ!こんな風に、自分を卑下していても、始まらないわ!
とりあえず、あの阿保王太子を見張る!そして不穏な動きがあれば、この命と引き換えてでも止めてみせるわっ!と、そう心に固く誓うリゼラだった。
そうして私は、王太子アクルスを見張り続けたのだった。
あの美しくも危険な生き物を!




