202.ダルタスの誤算
タスによって、あたりは照らされ、一緒に崩れ落ちた部下たちの姿も浮かび上がる。
ダルタスは皆に声をかけた。
「皆!無事かっっ!」
「「「将軍っ!」」」
なんとか無事な者たちはまばゆい光を放つ精霊タスとダルタス将軍に目をむけ、返事をする!
点呼をとると精鋭部隊のほとんどが、地下に落ち込んでしまっている。
地上に残っているだろう者が二名。
無事かどうかなどわかる筈もない。
瓦礫の下に挟まれた者四名。
落ちた時に負傷した者五名
多少の打ち身擦り傷はあるものの無事な者が九名
ほか、ダルタスと精霊のタスを含む総勢十九名が地下に閉じ込められていた。
瓦礫に挟まれた者達を手分けして救出し、怪我で動けないものを安全そうな場所へ移動させ、動ける者達が黒魔石を砕くために捜索を開始する。
幸い地下に落ちたことにより、魔物たちの襲撃は激減した。
ほとんどの魔物が地上に出た後だったからである。
タスは無言で、ダルタスと兵士の為に明かりを灯した。
「すまないな…ありがとう」とダルタスがタスにいうとタスは無表情でそっけなく答えた。
「主の願いだ。其方の為ではない」
「余計にすまぬな」
ダルタスがそう言うと、タスは高飛車にダルタスに指示する。
「そう思うなら、さっさと黒魔石を砕くがいい。ここより左手に二十歩ほど進んだところと、ほれ!そこの真下にも禍々しい気がある」
タスはリュートに負けず劣らず気位の高い精霊だった。
「場所がわかるのか!有り難い!」
ダルタスは、すぐさま言われた場所に行き最初の黒魔石を砕き、そこから更に部下と共に瓦礫をどかす作業に取り掛かる。
「ダルタスよ、其方、主を残してきたのは失敗だったぞ…」タスが、抑揚のない声で告げる。
「何?しかし、こんな危険なところに大切な妻を連れてくるなど…」
「いや、むしろ今は地上の方が危険だろう…あの黒い竜の黒い炎は精霊の結界など破ってしまうだろう…魔物のほとんどが地上に出てしまっている今はむしろ、この地下の方が百倍は安全と言えよう…」
「そ!そんな!」ダルタスが愕然とした。
「くそっ!ううっ」妻に少しでも安全なところにいてほしいと思っての判断が裏目にでてダルタスが唸る。
「ふんっ、さっさとしろ!主の願いでなくば、其方など放っておいて主を守りに戻れるものを」とタスが冷たく言い放つ。
「ぐぉぉぉぉぉぉう!」とダルタスが雄叫びをあげながら、黒魔石を砕き、瓦礫をもの凄い勢いで掘りかえす。
その気迫とスピードに部下たちは、「「「「お!おおぅ」」」」と、声をあげ、自分たちもと動きを早めた。
そして、部下達はダルタスが掘り返した瓦礫を、地中の空間がこれ以上崩れないように判断しながら支えに使ったり避けたりしていった。
特にダルタスに長く付き添うジョナは「あ、うん」の呼吸で誰よりも素早くこなしている。
その機敏な様子に「ほう…やるではないか」と、タスも思わず感心した。




