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目覚めれば異世界!ところ変われば~【Kindle本で1巻発売中】  作者: 秋吉 美寿(あきよし みこと)
ルミアーナの逆襲?
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185.ざけんなよ!ルミアーナの逆襲-8

「なっ!何なのよ!あんたはっっ!」

 ロレッタ・ルーティーは声を荒げてルミアーナに向かって叫んだ。


「あら?賊を追いかけて、随分とコースを外れた筈ですのに…ああ、道を間違えたのならコースは向こう側ですわよ?」とルミアーナがにぃ~っこりとほほ笑む。


「はぁ~?迷う訳ないでしょう?あたしはねぇ!ここの乗馬コースは知り尽くしてるんだから!」


「まぁ、それは知りませんでしたわ。でしたら、とうにゴールしていてもおかしくないのじゃありませんの?」ルミアーナは、わざと不思議そうな顔をして聞いてみた。


「あんた達を追ってきたに決まってるでしょうっ!」


「まぁ、私を?それとも賊を?あ、それともツェン様を?」とルミアーナが聞くとロレッタがいよいよ金切り声をあげた。


「うるっさいわね!どこへ行こうと、あたしの勝手でしょうが!」


「まぁ、そうですわね?それで…この三人に心当たりはございません事?」とルミアーナが縛り上げた三人の男達の覆面をはぎ取った。


「うっ!」とロレッタが唸る。


「こいつらはっ」とツェンが驚いて声をあげる。


「あら、ツェン様は、この者達をご存じですの?」


「ああ、確か、ロレッタ・ルーティーの部下だったと…」


「まぁ」


「ロレッタ!これは、どういう事だ!」

 厳しい口調でツェンがロレッタに尋ねる。


「ツ…ツェンこそ、どうしてこんなの所に」と聞き返す。


「俺はルミアーナ様を陰ながらお守りしようとついてきたんだ。俺の事はいい!それよりこれは、どういう事だ!」


「っ!わ!私もそうよ!深窓のご令嬢って聞いていたし心配でついてきたのよ!」


「見え透いた嘘を言うな!こいつらは、お前の部下なんだろう?」


「そっ!それは部下にも、お姫様を見守るように言ってたのよ!それを、こんなにボコボコにして!ひどい女ね!とんだお姫様よね!こんな乱暴な女が妻だなんてダルタスが可哀想だわ!」と毒づいた。


「何を言ってるんだ!この男達は明らかにルミアーナ様を狙って落馬させようとしたり剣で襲い掛かろうとしてきたんだぞ!」


「それこそ、誤解だわ!私は彼らにダルタスの大事な奥様に間違いがないようにと指示したのよ!」


「ねぇ、そうよね?お前たち!」とロレッタが三人の男達に向き直りきっと睨む。


 男達はこくこくこくと首を縦に振った。


「お…おぉ!そうですとも、俺達は姫様が迷ったり沼に嵌ったりしないようにと気遣って…それなのに、この男が切り付けてきたんですよ」


「なっ!嘘を言うな!」とツェンが言う。


「大体ねぇ?ツェン、怪しいのはあんたじゃないの?こんな、コースを外れた森の中…お姫様と二人きり!しかも一頭の馬に二人乗りで!上流階級にありがちな恋のアバンチュール…という奴かしら?不貞もいいところね!」といやらしい笑みを浮かべる。


 とっさに思い付きを口にするが、これはいい口実になるとばかりに意気揚々とするロレッタだった。


「なっ!無礼なっ!」とツェンが怒りに声を荒げる。


「はん!無礼なのはそっちでしょう?こんな森の中、男女が二人きり!しかも二人乗りで…ダルタスには一体なんていい訳するのかしらぁ?」


「そうだそうだ!この二人は、逢引してたんですぜ!俺達、こいつらがイチャイチャしてるところをみましたぜ!うっひっひっ」と、ロレッタの叔父である部下が絶妙なチームワーク?を見せて話にのっかる。


「ロレッタさま、俺達、証言しますぜ!うひひっ!こいつらダルタス将軍を裏切っている現場を俺達に見られたんで、焦って俺達に襲い掛かって来た違いありませんぜ!とんでもない奴らです!」

 と、ありもしないことを下品な笑いをもらしながら言う。


 ふぅ~ん、咄嗟の思い付きの割には上手い事、言うわね?と内心、ルミアーナが感心していると何を勘違いしたのかロレッタが勝ち誇ったように高らかな笑い声をあげる。


「お~っほっほっほ!ぐうの音もでないようね!どんなに言い繕ったところで、あんた達が二人きりでコースを外れていた事に違いはないのよ!しかも、ここには、あんた達の不貞を証言する者が私も含めて四人もいるのよ!観念する事ねっ!」と、勝ち誇ったように言いきった。


「くっ!ルミアーナ様、大丈夫です!ダルタス将軍はこんな奴らに騙されはしません!」とツェンがルミアーナを励まそうと声をかけた。


「あら?大丈夫よ。ダルタスさまも、観客席にいる他の皆さまも本当の事、分かって下さってると思うし」と呑気な口調で言う。


「ふ!これだから、お嬢様育ちはっ!」と、ロレッタがせせら笑った。


 真実がどうあれ、一頭の馬に相乗りしコースを外れたところに二人きり。

(正確には覆面男達も一緒だったけど)

 しかも証言する人間が四人も!

 みんな、私の部下だけどね。ロレッタは、ふふふ…とほくそ笑んだ。


 ツェンはその勝ち誇ったようなロレッタの顔をみて何を思っているのか悟り、眉間に皺をよせ呟く。

「くそっ、我らを陥れる気か…」


 ツェンは、思った。

 確かに状況だけ見れば不貞を疑われる状況にある。

 四人もの人間に口を揃えて証言されれば白を黒へと塗りこめることなど容易いだろうと、苦悩した。


「ふぅん、じゃあとにかく、この者達も連れて戻ってみるのは如何かしら?」とルミアーナがにっこりとほほ笑む。


 そして、やたら勝ち誇ったような笑顔のロレッタと下品な笑いを浮かべる三人のゴロツキのような部下たちは意気揚々としていた。


 ツェンは嵌められたと悔しそうに…でも覚悟を決めた様に顔をあげロレッタや男達を睨み付けた。


 いざとなったら泥は全部、自分が被る!

(最悪、無実の罪に問われたとしても自分が姫をかどわかしたのだという事にすれば姫だけでも救えるだろうか)と真剣に考える。


 なんとしてでもルミアーナ様の名誉は守らなくては…と考えながら…。


 しかし、反面ルミアーナは、呆れるほどに、あっけらかんとしている。


 ロレッタはこの女、馬鹿なの?と思った。

 この状況がいかに自分に不利なのか全くわかってないらしいと、あきれて鼻で笑った。


 ***


 まず、コースまで戻りリゼラの愛馬ブラッドの所へ行くとリュートが手綱をもって待っていた。


「あら、リュート!ありがとうブラッドを治してくれたのね?」と、明るく声をかける。


「主よ、お安い御用だ。この(ブラッド)には罪はない故…それに、このままほおっておけば(あるじ)が悲しむと思った故にな…」とリュートがルミアーナにひざまづく。


「ありがとう。さすがね」とルミアーナが満面の笑みをリュートに向ける。


「驚いた!ツェンだけでは飽き足らずそんな男まで!ずいぶん綺麗な男ね!なるほどね!夫と恋人は別って訳?呆れちゃうわね!本当にダルタスが可哀想!」と、ロレッタは、これでもかと悪態をついた。


 リュートから冷たい空気が流れる。


 あ…あらら~!

 たらりと冷や汗を流すルミアーナ…。


 誰を怒らせても月の石の精霊リュートだけは怒らせたらダメなのに…とちょっとだけ、馬鹿なロレッタに憐憫の眼差しを向けるルミアーナだった。

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