176.いざ!会場へ
ダルタスとルミアーナはネルデア邸に週末の同窓会の前日の夜から泊まり込みで訪れた。
勿論フォーリーとリゼラも一緒である。
(ちなみに月の石は、いつでも持ち歩いているのでもれなくリュートも一緒である。)
ルミアーナの言っていた通り、母ネルデアはダルタスとルミアーナの来訪を心から喜び迎えてくれた。
そして母が自分の訪れを涙ながらに喜んでくれた事にダルタスもまた胸が熱くなり素直に喜びを感じた。
自分は、それほど親から興味を持たれていないと思いこんでいたが、どうも違ったようだと思い、これからはルミアーナと共に、もっと頻繁に訪れようとも思えた。
そして翌朝、ダルタスの同窓会当日は、朝からまるで合戦前のような騒ぎだった。
「ネルデア様!おかあさま!私、ぜっっったいにダルタス様の同期生の方々のどなたにも侮られたくありませんの!特に女性の方々には!」
ルミアーナの実に真剣なまなざしにネルデアも真っすぐに視線を返す。
「よくぞ!申しました!それでこそ私達のルミィですわ!おまかせなさい!貴女の為に街からスタイリストとヘアメイクのプロを呼んでいます!侍女に申し付けてバラのお風呂も用意しています!さぁ、早速、お風呂からよ!確か、同窓会はお昼前からよね?時間はギリギリだわね!さぁ、急いで!」とネルデアは召使たちをせかす。
「姫様、このドレスにはこの耳飾りとネックレスがベストですわ!」
「靴は、こちらで!」
「髪留めはこちらにいたしましょう!」
スタイリストやヘアメイクのプロはもちろん
お付きで来ていたフォーリーとリゼラも全力で手伝う!
ダルタスは女達のその真剣なやり取りにぽかんと口を開けて呆けていた。
まるで本当に戦いに行く前の武将のような勢いだ。
よくは、分からないが二人とも自分の体面の為?に張り切っているようだが、ルミアーナなら例え、ブラウスとズボンだけの姿ですら愛らしく美しいのにそこまで頑張らなくても…とは思うのだが、非常に息がぴったりで、チームワークよく作業が進むのを見て感心する。
それに何より、母と妻がもの凄く仲が良いのは悪い気はしない…。
…と、言うか、もの凄く嬉しい。
母と祖母の時のような確執は全くなさそうである。
そして腕によりをかけたルミアーナの仕上がりはそれはもう夢のように美しかったので、いつもは時間に厳格なダルタスだったが少しばかり時間に余裕がなくなっても全く気にならなかった。
急げば、遅刻にはならないだろう。
二人は急いで馬車に乗り込み会場へと向かった。
当然、護衛にリゼラも馬を駆け後を追う。
(絶対何か起こると…いやルミアーナが起こすと確信するリゼラは全力でルミアーナを手伝う気満々だった)




