154.俺の嫁~ダルタスの回想~
俺、ダルタス・ラフィリアードの嫁は世界一ではないだろうか。
妻のルミアーナときたら、まず、可愛い。
しかも!美しい。
この美しいというのも、あり得ないくらいになのだ!
従弟である王太子の悪戯心から見合いをさせられ最初は心底嫌だった。
俺をみて怯える深窓の令嬢の姿などみたくはなかったからな…。
だが、ルミアーナは今まで会った事のあるどの女人とも違っていた。
俺の頬の傷すらカッコいいというのだ。
最初は父親に言い含められでもして、無理をしているのでは?…とも思ったが、言葉にも瞳にも怯えた様子もなければ、媚びるような様子もなかった。
ただ、この俺といる事を本当に嬉しそうにして…。
しかも、しかも、しかもだ!
あり得ないくらい強いのだ。
お転婆とかそういう域ではない。
鬼将軍と呼ばれる自分を、なんとあの華奢で可憐な嫁は訓練と言って投げ飛ばして見せたものだから俺はもうむちゃくちゃ驚いたとも!
俺の嫁は世界一可愛くて美しくて、情が厚くて、強くてしかも変わっている。
『歩くびっくり箱』のような令嬢だった。
結婚してからも、驚きの連続だ。
嫁は、朝起きたら、兵士顔負けの訓練をしている。
あの"らじおたいそう"とか、言うものも素晴らしい。
大した運動では、なさそうに見えて、じつは筋力作りにとても優れていると俺は、おもう。
嫁と一緒に、毎朝かかさず、やるようになってからというもの、以前より体の筋肉が均等に整ってきたように感じている。
そうそう、嫁は、公爵家の姫ぎみだというのに、料理までできる。
駆け落ち中に、作ってくれた料理はどれもこれも、城の料理人たちにすら、ひけをとらなかった。
先日など、なんと手作りの菓子まで、私や兵士たちに、差し入れてくれた。
ああ、俺は今まで生きてきて今が一番幸せである。
何が幸せって、嫁は、この俺以外の男には手も触れさせない。
ティムンや、ルークは、別みたいだけど、あくまでも身内枠みたいなもののようだ。
不思議とそれは、わかるので許せる。
あ、前科があるアクルスには近づくなと、言ってるがな…。
まあ、嫁も自分からは近づかないようだから、ひとまず安心だ。
嫁は、この俺が手をとると恥ずかしそうに頬を染めて、嬉しそうに寄り添ってくる。
ほかの誰にも見せないあの恥じらうような嫁の顔は…くっ!もうもう、この胸が爆発して大変なことになりそうなほどの可愛らしさなのである。
時々、不整脈で死にそうになるが愛しい嫁を未亡人にする訳にはいかないからな!
根性で生き抜くぞ!うむ!
そうそう!披露宴の時は昔の悪友が嫁にちょっかいをかけてきた。
見た目だけはいい悪友が、ひざまづき嫁の手に口付けようとした時、俺は悪友を”殺す!”とまで思ったが、嫁は”気持ち悪い!俺以外の奴には手も触れられたくない”と、言い切って申し訳なさそうに謝っていた。
謝ることなんか全然ないぞ!
実にあっぱれな嫁だ!最高だ!
そう言えば嫁は、結婚前にアクルスにせまられた時も触れたら死ぬといって陶器の欠片で自らを傷つけていた。
わが嫁ながら凄いとおもう。
なんで、そこまで俺の事だけが好きなのだろうか?
いや、家族や友達も大事にはしているようだが、嫁の態度や言葉からも自分が特別に大事にされていると感じる。
お陰で俺は、焼きもちすら焼かずに幸せに浸れている。
幸せ過ぎて怖いなどと、まるきり乙女のような台詞が頭に浮かぶのも仕方ないだろう?
俺の嫁は、それほどなんだから!
そんな嫁が、初めての夜会にうきうきとしている。
結婚前は命を狙われていたせいもあってか、社交界にまだデビューできていなかったのだ。
ただでさえ可愛く美しい嫁が本気で着飾ったらもはや女神ですらかすむのではなかろうか?
別の心配もなくはないが、嫁が楽しみなら付き合おうと思う。
披露宴の時のダンスは楽しかった。
きっと夜会も楽しかろう。
もう、嫁が喜ぶのなら何でもしてやりたいと思う。
だって、しょうがないだろう?
俺の嫁は、それほどの嫁なのだから!




