153.ダルタスの旧友たち
王城からほどないところにある、宿屋にダルタスの旧友クンテとツェンがいた。
「なぁ、もう帰ろう!クンテがルミアーナ姫にちょっかいをだしてダルタスを怒らせたりするから何か、城内にも顔がだしづらいったりゃありゃしない」
三日三晩の祭りも終えて数日…。
路銀もつきてきたのにろくに旧友のダルタスに顔もあわせられなくなりツェンが不満げに文句を言う。
「ツェン!姫はダルタスにたぶらかされてるんだ!父親にまるめこまれているに違いない!だって、おかしいだろ?あんな姫が王太子を差し置いてダルタスを選ぶなんて!」
「はあ?何言って…って、まだ、そんな馬鹿なことを…」とツェンは心の底からクンテに呆れて溜め息をついた。
そしてクンテを正真正銘のまごうこと無き馬鹿だと思った。
あの姫様のダルタスを見る目は愛情にあふれまくっていたではないか!どうしてこの馬鹿にはそれがわからないのか?と。
こいつ、見た目だけはいいんだけど、こういうとこ本当に鬱陶しいというか、ちょっと面倒くさいんだよな…と心の中で思う。
ツェンは口には出さないまでも心の中で毒づいた。
(俺だってあの姫さんは素敵だと思うけど、もうなんか住む世界がちがいすぎるっていうか、女神さまみたいなものだろう?俺らごときは遠くから憧れるくらいがちょうどいいっんだっつうの)とツェンは身の程をわきまえないクンテに少しばかりイラついた。
「クンテ、とにかく姫様のことはいいからダルタスには顔合わせづらいけどアクルス王太子やルーク王子にくらいは挨拶してから帰ろう」
「ツェン…お前、俺の話、まったくきいてないだろ…」
「ああ?姫さんがたぶらかされてるって話?はいはい…」
…全く…人の話を聞かないのはお前だっつうの!とツェンはもう苛々がとまらない。
「まあ、まて、まだ帰らないぞ。実は伯父のロッドリア侯爵邸で夜会が開かれるらしい。それにダルタス夫妻も招待されているらしい。」
「えぇっー?何考えてるの?それにクンテも出席するっての?」
「俺達だ!」
「やだよ!クンテ、絶対また馬鹿な事する気だろ?やめろってば!大体クンテは、学生時代もそんなとこあったよね?ダルタスがちょっと気にかけた女子がいたらわざと声をかけて自分にふりむかせたり気のあるふりをしたりさ!あれはさ、正直、人としてどうかと思ってたよ」
「ふりなんかじゃない」
「へぇ?お前、じゃあ、あの時の女子の名前覚えているのかよ」
「昔の話じゃない!ルミアーナ姫の事だ」
「はぁぁっ?余計、悪いわっ!人妻だぞ」
何言ってんだこいつは!人妻に本気になってどうする!しかもあんな一瞬顔を会わせただけで、ろくに会話もしてないような相手に!
ばかか?こいつ!
いや、そうだった。
こいつは馬鹿だった!それも極めつけの大馬鹿者だ!
結婚式の披露宴にいったんだぞ?
集団見合いに行った訳じゃあるまいし…。
と、思うもののツェンは呆れすぎて二の句もつげない。
「お前が一緒に行かないのなら俺だけで行くぞ」と、ものすごく真剣に言うのでツェンは、こいつマジでやばい!と、思った。
「わ、わかったよ。俺もいくってば」
この馬鹿を一人で行かせたら本当に何をするか…あの姫さんなら大丈夫だとは思うけれど世間知らずなお姫さんをクンテが本気でおとしにかかったら…。
うっかり万が一姫さんがクンテに心を奪われるなんて事になったら…ダルタスが可哀想すぎる!
なんとか阻止しなければ!
っつ~か、こいつダルタスから足蹴り喰らったくせに、わかんないのか?
殺されるぞ?
ああ、もうほんと、こいつ…時々友達やめたくなるわ…。
くそーっ、家同士が仲良くなくて幼馴染みなんかじゃなかったらなあ…。
せめて、自分の方が身分が高ければ、張り倒してでも、言うこと聞かせて、とっとと領地に帰らせるのに!
そんな事を思いながらもクンテを見捨てられない際限なくお人好しなツェンだった。




