152.精霊リュート
翌朝、皆が起きてきた頃、ルミアーナはリュートをつれて食堂におりてきた。
皆が驚く。
「まぁ、ルミアーナ。そのお方はひょっとしてネルデア様のところでダルタス様やルーク王子の活躍を見せてくださった精霊様ではなくて?あの時はお姿が透けていらしたけれど」
「お母様、さすがですわ!そう、精霊のリュートと言いますの。皆よろしくね」
「なんと!精霊様だと?」アークフィル公爵があわてて畏まった。
「うわぁ、綺麗だなぁ」とティムンがため息をつく。
精霊はにっこりと微笑んだ。
実体のなかった時は表情も乏しいように感じていたが実体をもつと、かなり人間っぽい。
ぽい…というのは、そこは、やはり人間とは一線を画すほどの違いがあるという意味である。
さすがは精霊というか、何というか性別不詳の…あ、ほんとに性別ないんだった。
光沢のある銀の髪で瞳は薄い紫色で『明らかに人ではない程の美しさ』なのだ。
内から人ならざる神々しさを放ちまくりなのである。
***
「ようこそ我がアークフィル家へ、精霊リュート様。宜しければ気のすむまでこちらで、お過ごしください。お望みでしたら、ルミアーナの部屋の続きに部屋をしつらえましょう」父公爵がリュートに跪き頭を垂れ恭しく声をかける。
母も淑女の礼をとり、父の後ろに控えながらも腰を低くし頭を下げてリュートの言葉を待っている。
「それは、ありがたい。主にお名前を頂き、こちらでも実体を持つことが出来るようになったが、さすがに何日もはこの姿を保つのは無理のようだ。時折、こちらで人として暮らせるのは主の事をより知ることが出来るようで嬉しい」
ルミアーナはきょとんとした。
父も母もティムンも何故リュートに跪く?
口の利き方もどうみてもリュートの方が偉そうで父母らの方がへりくだっている。
「なんで皆、リュートにかしづくの?」
「まぁ、ルミアーナってば、そんな小さな子でも知っている大切な事まで抜け落ちてしまってるのね?だって月の石の精霊さまなのよ?主となったルミアーナはともかく、国王陛下ですら自らよりも上に置き、横にも下にも置かず崇め奉たてまつる存在ですよ」と母がいう。
う~ん、目覚める以前のルミアーナの記憶も大分混じってきているので、ちょっとは、わかる。
”精霊”や”祖始の魔法使い”とかはもはや”神”なのよね…。
なんか自分に『主主』ってかしずいてきちゃうもんだから、あんまり神格的イメージなくなってて自分の友達か下僕みたいな感覚になってたんだけど?
「姉さまは”主”なんだからしょうがないよ」とティムンがいう。
「さよう、”主”は”主”だからよいのですよ」とリュートもいった。




