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目覚めれば異世界!ところ変われば~【Kindle本で1巻発売中】  作者: 秋吉 美寿(あきよし みこと)
ルミアーナの逆襲?
152/228

151.精霊に名前を…

 その日その夜のこと。


 夫であるダルタス様は今日は城に泊まり込みでお仕事である。


 どうにもこうにも駆け落ち中に溜まった仕事は中々、昼間のうちだけでは終わらないものもあるようである。


 今日は旦那(ダルタス)様もいないことだし実家でお泊りすることにしてティムンも一緒の家族団欒の楽しい時間を過ごして自室に戻った。


 お嫁に行っても自分の部屋はそのままに残しておいてくれているのは、ちょっと嬉しい。


 ティムンも、すっかり実家の両親になついていて、うまくいっているようだ。

 もう夜も遅いのでまだ十歳のティムンは夢の中だろう。


 進学についてはどうやら騎士学科に進むらしいので私も一緒に鍛錬に励もうと思う。

 明日からがまた楽しみだ。


 私は、まだ眠くなかったので自室のベッドでゴロゴロしながら自分の持つ月の石を眺めて色々と考えていた。


 う~ん、月の石に宿ってる精霊もいろいろよねぇ~?

 ルークにあげた月の石の精霊は可愛らしかったなーとぼんやり考えていた。


 あ、そうだ…と思い付き、月の石をとりだす。


  「ねぇねぇ、ちょっと姿を現してよ!」


 すると、月の石は柔らかい光と共に、以前ネルデア邸で自分達を助けてくれた時と同じとても綺麗な少年とも少女とも言い表せぬ精霊が姿を現わした。


 ゆらゆらとその姿はすけて揺らめいて見える。

 ほんとに立体映像のようである。


  「主よ、何か?」


  「こないだね、ルークの月の石の精霊がね…」


  「まて、(あるじ)!現在すべての月の石は、主ルミアーナのものである。"ルークの月の石"という呼び方はおかしい」と、月の石が、ルミアーナの言葉をさえぎった。


  「え?ああ、そうか。まあ、でも全部私のって言われても…そうだ!ねぇ精霊たちに名前はないの?」


  「精霊界での名前はあるが、主たち人間には発音出来ない」


  「そうか、ねぇ、じゃあ名前をつけても良いかしら?」


  「それは、もちろん。主が望むのであれば」


  「そうね~すごく、あなたは綺麗だし。うん、綺麗な名前がいいわよね?リュート…リュートってどうかな?」


 そうルミアーナが言うと精霊は嬉しそうに頷いた。


 するとリュートの体が輝きだしルミアーナの天蓋付きのベットの中は輝きで溢れた。


  「うわっ、眩しいっ!」とルミアーナは目を閉じた。


  再び目を開けた時には精霊は、これまでの透けた姿ではなく実体だった。


  「(あるじ)よ、リュートという名前有り難く受け賜わりました」と言った。


  「え?ええええええ?ど、どういう事???」


  「主がたった今、私に名前を下さったので私はこちらの世界でも実体を持つことができたのです」


  「何そのサプライズ!?すごぉい」とルミアーナはリュートの手に触れてみた。


  「すごいすごい!(さわ)れた!」


  「はい、これまではこの世界に我が姿を映していただけですが、こちらの世界に実体として存在することができるようになりました」となんだかリュートも少し嬉しそうである。


  「じゃあ、なに?他の精霊たちも名前を付ければ実体化するっていう事?」


  「そうですね、()()名を与えれば…ですが。」


  「他の人じゃ、だめなの?」


  「はい。ただ名前をつけるだけでは…主が名前を付けることに意味があるのです…主にその気はなくとも主の言葉や意志には”御力(みちから)”が宿りますから」


  「じゃあ、私が名前を与えれば、精霊は実体化するのね?」


  「御意!」


  「ところでリュート、実体化したら、もう石には戻らないの?」


  「主が石に戻れと言えば戻りますが、我々もこの世界で実体でいられるのは初めての経験、試しにしばらくこの姿でいたいと思うのですが」と、言った。


 なんとこれは、精霊リュートからの初めておねだりである。


  「いいに決まってるじゃない!」ルミアーナは何だか少し嬉しくなった。


  「ところでリュートは男の子?女の子?」


  「我ら精霊に性別はありません」


  「あら、そうなの?ふぅん、じゃあ、いいか。じゃあ、しばらくこのままいるといいわ。今日は、もう遅いから、このまま寝ちゃいましょう?」


  「ですが主、精霊は眠りません」


  「起きててもいいけど、この部屋からでちゃダメよ?皆、誰もあなたが精霊だとは思わないから、いきなり現れたあなたにびっくりしちゃうからね?明日の朝になったら皆に紹介してあげるわね」


 そういってルミアーナは眠った。


  精霊リュートはちょっと嬉しそうに頷いた。

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