149.ティムンの決心
僕の気持ちはもう決まっていた。
何が一番向いているかとかよく分からないし、自分が一番頑張れそうな所を選ぶことにした。
「僕、騎士学科に行きたいです」
「なにっ!それは、本心かっっ!」と父上様が、大声をあげて僕はびくっとなった。
「あなたったら、そんな大声を挙げて…ティムンがびっくりしているではありませんか」と母上様が父上様に言った。
うん、ほんとに驚いたよ。
「あ、いや、すまん。つい」
「な…何か…まずかったですか?」と僕がおそるおそる聞くと母上様とルミアーナ姉さまが目を見合わせて笑った。
「ばかね、逆よ!お父様は、自分と同じ騎士の道を選んでくれたのが、もんのすごぅっく嬉しいのよ!」
「これ、ルミアーナ!余計なことを言うんじゃない。しかし、ティムン、本当に?よもや私に気を使って言ってるんじゃないだろうな?」
「え?それはありません。僕、取りあえず、続けられそうかなって思うものにしようと思って…僕、将来、父上様や兄上様みたいな騎士になってお二人のお手伝いをしたりして一緒にいられたら嬉しいなって…同じところにいたいなって思って…そう思ったら、ちょっとくらい大変でもがんばれるかなって思ったんです。僕を魔物から救ってくれたダルタス兄上みたいに強くなって今度は僕が誰かを助けられたらなって!」
そう言うとなんと父上の両方の目から大量の涙が溢れた。
それはもう、ドバッと滝のようだった。
「ええええっ?父上様?どうしたんですか?」
「大丈夫大丈夫!お父様はただただ嬉しいのよ!」と姉さまは笑うけど、僕は強い筈の父上様が泣くなんて一大事だと狼狽えまくった。
「そうよ、ティムン!お父様はあなたが、自分自身で選んでくれた事が!そして誰かを助けたいという志が嬉しかったのよ」と母上様がおろおろする僕にそれは優しく教えてくれた。
そ…そうなのか?それだったらいいんだけど、本当に???
嬉しいのに泣くなんて変!とは、思ったけれど母上様…お母さまがおっしゃるのだから間違いないんだろうと思いなおす。
「ええと…僕、じゃあ、騎士を目指していいですか?」
念押しして聞く僕を父上様は抱きあげて頬ずりしながら号泣した。
父上様のほおずりは、チクチクとうっすら生えてた髭のせいか痛かった。
けど、こんなにも喜んでもらえたのが嬉しくて幸せな気持ちでいっぱいになった。
ああ、僕は今、本当に幸せだ。




