146.試験です!楽勝です!
とうとう試験当日!
公爵家嫡男、ティムン・アークフィルの学園への編入試験の日がやって来た。
二日にわたる試験ではまず一日目が学科や適性の試験で二日目が、試験の結果報告を兼ねた面談である。
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いよいよだ。
一体どれ程の事をさせられるのかと、僕はかなり緊張しながら試験場となる学校とやらに赴いた。
朝一番に受けるのは、まず学士学科の試験だった。
これは、この1週間。
ルミアーナ姉様にに鍛えられた僕にとっては、拍子抜けするほど簡単だった。
あの怒濤の勢いで無理矢理覚えさせられた"クク"とやらが発揮されることも全くなく…である。
つまり足し算と引き算くらいの問題しかでなかったのである。
五十問あるうちの四問だけ三桁と四桁の足し算と引き算があったが、これはルミアーナ姉さま直伝の"ヒッサン"なるものが活躍し難なく解けた。
正直、あっけなさすぎて何だか不完全燃焼な感じだった。
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次には魔法学科での資質のテストであるが、これはテストと言うより適正検査と言う感じである。
ルーク王子にしてもらったように試験監の先生?に手を握られ魔法力の素養を見られた。
あとは、水晶のようなものに手をかざし色をみて終わりである。
ルーク王子殿下に言われたように僕の内にある魔法力は暴走するようなものではなく、とても穏やかで安定感があると誉めてくれて、先生もだけど褒められた父公爵も何だかご機嫌だった。
『人畜無害』という事だろうか?
褒められた筈なのに褒められた気がしないんだけど…とティムンは思った。
最後に受けたのが騎士学校の試験である。
これは、もっぱら体力測定のようなものである。
何ということもなく終えられた。
もともとジャニカ皇国第三皇子の小間使いとして働いていた為、体力はそこら辺の貴族のお坊ちゃまには負けない自信があった。
何せ、アルフォンゾ様のお供は大概大変だったし国境越えも山越えも何のそのだったので、根性と体力はわりとある。
んん…まぁルミアーナ姉さまほどではないにしても…だけどね。
十歳の子供としては結構大したもののはずなのだ。
その上、ルミアーナ姉さまは僕を毎日のように鍛えたし…。
まぁ、女性である姉さまも一緒に鍛錬してくれているのに文句は言えなかったし…?
でも、あれは、スゴかった…と僕は遠い目になった。
(あんなに、華奢に見えるのに本当にルミアーナ姉様は、月の石の主だからだろうか?やはり特別な人種なのだろう…普通じゃないよ姉さまは…)
案の定、試験監の先生方には大絶賛されて、ぜひ騎士学校においでと声をかけて頂けた。
あの地獄のような1週間が報われた瞬間であった。
この時ばかりは僕もやりきった達成感をひしひしと感じたのだった。




