145.ティムンのそれから-4
…という、訳で、何だか大変なことに、なってしまった。
ティムンはなんと、周りの「ティムンの行きたいところへ!」という大変ありがた~い考えのせいで、なんと三つも編入試験を受けなければならなくなったのだ。
「う…うそぉ~」
そう、ティムンは後悔していた。
どれでもいいから直ぐにどれにするか決めればよかった。
魔法学科でも学士学科でも騎士学校でも…。
まさか全部を受験せねばならぬとか、まさにお受験地獄である。
「そうと決まれば、まずは騎士見学ねっ!さあっ、騎士団のウルバ隊にいくわよっ!」とルミアーナがティムンをひっぱっていく。
あわててアークフィル公もついて行く。
まるでお受験ママならぬお受験姉さまである。
「あらあらまぁあまぁ」と母のルミネは口元を片手で押さえながらも愉快そうにもう片方の手をひらひらさせながら見送るだけだった。
アークフィル公爵とルミアーナとティムンの三人は騎士団を見学したあと、大神殿にも行って魔法使いについて神殿長から説明を受けた。
そして屋敷に帰ってからは、読み書き計算の確認である。
「いいこと?足し算引き算は当たり前!今から私が紙に書くので”九九”と言うものを覚えてもらうわよ!これを覚えればおのずと割り算もできるんだから!」と、お受験モードに突入したルミアーナは、教育ママならぬ教育姉さまと化したのだった。
「ひぇぇぇぇ~」と思わず軽い悲鳴をあげた。
そして、剣と弓と乗馬である。
これもルミアーナは率先してティムンに指導した。
そして、わずか一週間後の編入試験となった。
「まぁまぁ、ルミアーナ!読み書き計算は足し算引き算位で大丈夫だし魔法学科も騎士学校も資質をみるだけだから…」と、父がいうが心配でたまらないルミアーナは口も手も足も出しまくりである。
これには、ダルタスもアークフィル公爵もティムンが可哀想になってしまったが、当のティムンは、ひぃひぃ言いながらも自分の事でこんなにも必死になるルミアーナに、ちょっと感動もしているようだった。
歯を食いしばって成されるがままに、この一週間を乗り越えたティムンだった。
もう矢でも鉄砲でももってこーいの勢いである。
ルミアーナが…では、あるが…。(哀れなりティムン)
さて、そして試験当日。
いよいよ父兄との三者面談と試験なのである。




