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目覚めれば異世界!ところ変われば~【Kindle本で1巻発売中】  作者: 秋吉 美寿(あきよし みこと)
ところ変われば、女子高生?
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126.その夜、閉ざされた記憶が開かれて-01

 その日の夜は美羽にとって長い長い夜となった。


 大悟の突然の告白に戸惑いながらも答えは即決だった。

 自分が好きなのは仁だけである。

 それ以外は要らない。


 仁も美羽も口数少なく夕食を終えるとそれぞれの部屋に戻っていった。

 何かあったのかと静は亮子に電話で事の次第を問いただす。

「えっ!そんな事が?」


 もともとは綺麗な顔立ちの美羽だったが、少々残念なことに性格は男勝りで逞しく中身のお陰であんまり美少女っぽくはなかった。


 今、思えば過保護な家族に心配をかけたくないあまり頑張りすぎた結果だったのではないだろうか。


 それが、あの事故の後の眠りから覚めてからと言うもの儚げで頼りなげなまるで深窓のお姫様のようになってしまった美羽である。


 しかし、武道一家の家族は美羽の持つオーラは()()()()清らかで凛として美しいと思っていた。

 記憶があろうとなかろうと美羽は美羽なのだ!


 何せ、ふとした時に感じるオーラはやはり美羽本人の者なのである。

 人が変わってしまったかのような変貌ぶりだが記憶がないのだから仕方がない。

 それほどに不安なのだろう。


 家族が、そんな美羽が心配で必要以上に過保護になってしまったのも仕方がなかっただろう。

(特に仁が!)


 そして、その心配は当然でもあった。

 現に早くも美羽を狙った男が現れだした!…と。


 家族もまた、進展しようのない2人の状態に焦れていた。


 仁を思いながらも兄妹なのにと思い悩む美羽と、美羽が大事だからこそ、実の兄妹ではないと告げる事も愛していると伝えることも出来ない仁に言い知れぬジレンマでもう爆発寸前だった。

(特に父が!)


 静も両親も思っていた。


「「「両思いなのに歯痒すぎるわ!」」」と!


 ***


 美羽は部屋に引きこもりベッドの上で膝を抱えて思い悩んでいた。

 仁の事を思いながら月の石にそっと触れた。


 すると、まるで待ってましたと言わんばかりの勢いで輝き、ルミアーナが話しかけてきた。


『美羽っ!私よっ!大事な話があるのっ!』


「っ!私はないわ!私の事、気持ち悪いとか思ってるくせにっ!」


『思ってないっつーの!貴女と私はおんなじ一つの魂が分かれた、言わば()()()()()()なのよ!』


「そんなの嘘よ!私は貴女みたいに強くないっ!」


『くっ!このっ馬鹿っ!聞きなさいっ!聞かないと後悔するわよっ!』


 ルミアーナの怒気を孕んだ様子に一瞬、美羽はびくっと体を強張らせた。


『ああ、ごめん!怖がらせたい訳じゃないんだってば!美羽!聞いてっっ!美羽とお兄ちゃんは恋することも結婚する事だってだってできるんだからねっ!』


「え!?」

 美羽は一瞬、固まった。


『ふぅっ、やっと話聞く気になったわね?』


「う…嘘、そんな筈…」

 美羽は、そんな都合のいい話がある訳がないと振り払うように首を左右にふった。


『本当だってば!ああ、もうっ”百聞は一見に如かず”よっ!今から美羽の中に映像(ビジョン)を送るから見なさいっ!』


 そしてルミアーナは自分が月の石の精霊から見せられた仁や、静のあれこれを思い浮かべ美羽に見せた。


 美羽が小さい頃、両親を亡くして引き取られた事、そして仁が美羽の事を本当に大切に想っている事。

 美羽を許嫁としてこの先ずっと守っていきたいと思っている事すべてを…。


「っっ!嘘っ」


『自分相手に脳内さらして、どうやったら嘘つけるのよっ!』とルミアーナが言う。


「ほ…本当に…本当なの?」


『美羽、美羽の記憶が曖昧すぎるのは、美羽が()()()()()()()()よ。受け入れた先にお兄ちゃんとの未来があるの!嫌でないのなら受け入れなさい!今の神崎美羽は貴女なんだから!さあ、心を開いて!私達はもともと一つの魂なんだから』


 そして美羽とルミアーナは意識の中でお互いの手の平を合わせ額を合わせ、互いの記憶を覗き込んだ。


 小さい頃から今までお互いが家族の愛情に恵まれていた事を深く感じる。


 ちなみにルミアーナは、きっかけを作り美羽の恐れを取り払っただけである。


 お互いの両親との思い出がゆっくりと溶け合いお互いの記憶にほっこりとなる。

 そして美羽は()()()()()

 自分(みう)の過去。


 与えられなくとも、二人の魂に刻まれていたが仕舞われていた記憶を。

 二人や、月の石の精霊は、二人が入れかわったと言う表現を今まで使ってきたが、正確にはもともと一つの魂が二つに分けられて互いの世界に放たれたと言うのが正しかったのだろう。


 記憶の偏りがあったのは異界を転移した副作用みたいなものなのだ。


 それと、美羽自身の抵抗。


 ルミアーナに、導かれ、美羽の中に無意識に見ようとしなかった記憶、思いださず融合せずにいた家族との記憶が溢れた。


 そして美羽の目には大粒の涙が溢れた。

「ルミアーナ!ありがとう。もう一人の私」


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