122.ルミアーナは異世界から美羽の幸せを祈る
ラフィリルの王都、ラフィールに帰ってきたルミアーナ、ダルタス、ティムンの三人はとりあえずルミアーナの実家、アークフィル家をめざしていた。
子連れだった事もあり、随分とゆっくり帰ってきたので午前中には着く予定だったのが、もうお昼である。
その移動中にもずっと日本にいる美羽の事を考えていたルミアーナに月の石の精霊が話しかけてきた。
『主よ…。何で言わなかったのかと、また怒られては叶わぬから言うが、あちらの主…神崎美羽は大分面白いことになっているぞ?』
『え?なに?面白いってどういう事なの?』と大分、精霊との会話に慣れてきたルミアーナが頭の中で答える。
『うむ。今、主の頭の中に神崎美羽とそれをとりまく家族や従姉の様子をそれぞれ送ろう。言葉で説明と言っても本人らも皆、何をどうしてよいのか解っていないようだ』と月の石の精霊はルミアーナの頭の中にそれぞれの想いや成り行きの映像を送った。
そして、ルミアーナは知った。
そう、兄の仁が同級生にした仕打ちも、妹をダシに使っていた事に怒っていたからで昔からずっとずっと美羽の事を変わらず大切に想っていた事や、今の美羽の気持ちに気づいた事。
美羽が仁を思っている事に気づいた家族や仁が好きだった亮子の気持ち。
皆が美羽の幸せを願っているのに美羽を傷つけてしまうかもしれないと、どうしてよいか分からなくなっている事。
(何てこと!頭が痛くなってくるわね。皆が美羽の事を思ってるのに美羽が傷つくことを恐れて美羽が養女でいる事を言えないで…)とルミアーナは困惑した。
そう、自分もそれは心配だが、彼女もまた自分の半身である。
いずれ記憶は戻るのだから、変にこじれる前に伝えた方がいいだろうと思う。
こうなったら、自分が受けたこのビジョン、まるごと美羽の頭の中に転送しちゃうかと考えた。
『できる?』とルミアーナが訪ねると精霊は鼻で笑うかのように答える。
『意外なことを聞くな、主よ。主に送れたものを主と同じ魂に何故送れないかもしれないと思うのか?』
ルミアーナはにっと笑った。
『さすがね!』
『御意』
自分だけが幸せになっているようで申し訳なく感じているルミアーナは、どうしてもあちらの美羽にも幸せになって頂きたいのである。
変な話だが自分を好きになった女性の事を嫌いになると思っていた事が誤解だったならば、かつての妹からみて神崎仁は、かなりのオススメ物件である。
『家族思い』で『優しい』し『賢いし』何より『強い』!
月の石の精霊からの情報によると美羽の事を受け止める気持ちも満々のようである。
自分より綺麗な男なんて自分は嫌だが、今の美羽は、自分が中身だった時と違って綺麗に見えるし、結構、お似合いだと思えるから不思議だ。
うん、反対する要素は何もないな!
『よしっ来たっ!』とルミアーナは決断した。
この事を美羽に伝えようと!




