11.両親の祝福
その夜のアークフィル公爵家の晩餐は非常に明るかった。
公爵は、とにかく娘が見た目だけのチャラいアクルス王太子ではなく自分が尊敬してやまない質実剛健な男の中の男!男が惚れる男!のダルタス将軍を選んだ事が、嬉しくてしょうがなかったのである。
正直なところ、正式に王太子から結婚の申し入れがあればいくら公爵家といえどもおいそれと断る事はできない。
王太子の方からダルタス将軍に娶らせればどうか?と言われた時には天の救いかと思ったものである。
(王太子が、アホで良かった)と実に不敬なことも思った。
ダルタス将軍であれば同じ武人として尊敬(崇拝)もしているし、何より愛する娘を必ずや守りきって下さるだろうと、闇の中、一筋の光をみたような気すらした。
しかしながら王太子が、ルミアーナを目にして惜しくなったのは火を見るより明らかだったので、この婚約を国王公認のものにする為、直ぐ様早馬を走らせたのも大正解だったと自分の瞬時の名判断に、ご満悦である。
今さら王太子が、何て言ってこようが、覆すのは容易ではあるまい!(ふはははははは!)
国王夫妻は、いくら世継ぎの王太子であろうとも息子の我儘を許容するほど恥知らずではないはずである。
しかしルミネは、ルミアーナが父に言われて嫌々ダルタスを選んだのではあるまいかと、まだ心配なようで、やきもきしていた。
「ルミアーナ、本当にダルタス将軍でよいのですか?王太子ではなく?」
ルミアーナは、ぽっと赤くなり答えた。
「お母様、私はダルタス様がよいのです」
その愛らしくはにかんで答える娘の様子をみてルミネも思わず微笑んだ。
「まあ、ルミアーナってば」
世間の噂を信じていたルミネにとっては思いがけなかったが、ルミアーナの様子からダルタス将軍は、噂ほど恐ろしくはなかったらしいと思いなおす。
「お母様、ダルタス様は私を守って下さるとおっしゃって下さいましたわ。美辞麗句は苦手でらっしゃるかもしれませんが、とても誠実な方だと思います」と、つけ加えるとルミネは、娘が本当に、将軍を気に入ったらしいと理解した。
「そういう事なら私もダルタス将軍にお会いしたかったわ。ルミアーナがそんなに気に入った方ならばきっとルミアーナの事を大事にしてくださるでしょう」
そうしてルミネも娘の初恋を祝福したのだった。
2018.12.23 ちょびっっとだけ訂正いたしました。




