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目覚めれば異世界!ところ変われば~【Kindle本で1巻発売中】  作者: 秋吉 美寿(あきよし みこと)
ところ変われば、女子高生?
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115.ルミアーナ、ラフィリルから日本の美羽と交信する-05 美羽の生い立ち

 ルミアーナは困惑していた。


 何となく美羽の悩みの原因がかつての兄、仁であることは感じていたがまさか自分の分身ともいえる美羽が…。


 まさかまさかまさか、兄に恋するなんて?


 恋?恋よね?あれは?


 しかし、ものの見事に私の言う事に耳を傾けずに勝手に交信切ってくれちゃって…これじゃあ相談にも何にもならない。


『まったくもう美羽ってば…』


 ふと馬に水を飲ませているティムンとダルタスの方に目をやると二人もこちらを見ていたようで手を振ってくれた。


 ルミアーナも二人に手をふる。


 自分はダルタスさまと恋に落ちてしかも結婚までできて幸せになれた。


 美羽にも幸せになってほしい。


 しかし、よりによって()()兄と…うううう~ん。


 ルミアーナが、美羽だった時の記憶では兄は自分に恋した女の子たちに本当に冷たかったのだ。

(誤解だが!)


 兄弟云々以前にそこからアウトな気がする。

 本当の理由を知らないルミアーナには何か悲しい未来しか思い浮かばない。


 それでも

『兄妹って言ったって本当の兄妹じゃないから結婚だって出来るんだし…』と言おうともしたのに、何か勝手にパニックを起こして交信を閉じてしまった美羽にどうしてよいものやら…。


 そう、美羽は()()()()()()なのである。


 もともとは今、亮子が住んでいる月七宮(つきなのみや)神社を代々守り続けていた血筋なのだ。

 亮子の両親が今は神主をしているが、月七宮(つきなのみや)神社は、元々、亮子の父の兄、美羽の実父月七宮浩一が神主だった。

 

十三年前の震災で命を落としたため、弟である月七宮浩二があとをを継いだ。

 そして、そこに嫁いだのが仁や静の母の妹、つまり叔母であり、その夫である月七宮浩二は叔父になる。

 

叔父・叔母夫婦で跡を継ぎ、この神社を守っているという訳である。


 つまりもともと()()()()()()()()()()()()()訳であり、本来のこの月の石をご神体と崇める神社、月七宮(つきなのみや)の直系は美羽だったのである。


 私もルミアーナとしての記憶はまだまだ不完全なように美羽もまだ、美羽の記憶があいまいなのかしら?

 まぁ、そもそも、養女になったのもまだ三歳の頃だったから自分自身の記憶は曖昧だったのだが、神崎の美羽が中学に上がる頃には両親はきちんと本当の事を教えてくれていた。


 もともと、親戚だったので全くの他人と言う訳でもないが血がつながっている訳でもなく美羽と兄が両想いにでもなれば結婚だってできるのである。


 そして自分がいかに家族に愛されているか知っていた美羽は、その事実を嘆くこと無く穏やかに受け入れていた。

 引きとられたのがこの家で本当に良かったとさえ思っていたのである。


 しかし、今、現在の美羽としての記憶の浅い彼女は、その事(今の両親が義理の親であること)をどう、受け取るだろう?

 姉の静のことも…。

 そして何より兄の仁の事も…。


 あれは、実の兄弟だと思ってるって事よね?

 とっさに言い損ねた自分も、間が悪かったけど、全く人の話をきいてない美羽もどうかと思う。


 しかし、冷静に考えてどうなのか?言った方がいいのか悩むところである。

 今なら兄弟だから仕方ないと諦めることもできるかもしれない。


 恋しても良い相手だと思って兄に告白でもしようものなら美羽は兄にひどく傷つけられるのではないだろうか?


 そして今は美羽の事を可愛い妹だと思っていても、自分に恋していると気づいた途端、昔、手ひどく振られた友人のような目に美羽が合わされるのではないかと心配になる。


 ぶんぶんと顔を左右に振る。


『だめよ!だめだめ!美羽に本当の事なんて言えないわ!お兄ちゃんは見た目、あんなに優しそうでいて、本当に自分を好きな子には冷たいんだもん。かつてはお姫様だった今の美羽に耐えられる訳ない!』と頭を抱える。


 そう、思うと、美羽が勝手にパニックになって交信を切ってくれたのは幸いだったのかもしれない?


 何せ、もとは一つの魂である。

 考えるだけで伝わってしまう。

 さっきは美羽がパニックになってたから勝手に人の話も声も何にも聞こえてなかったみたいだが…


 兄や父に憧れる時期とか、純粋な女の子には成長期、世間ではしばしばある現象なのかもしれないし、一過性のものかもしれないし…と努めて冷静になろうと自分を落ち着かせた。

 とにかく、もう一度、向こうから交信してくるまでは保留だわね…。

 という、結論に達したのだった。

 あくまでも、ルミアーナの中では…であったのが…


(本当は優しいのに誤解されたままの仁は、けっこう可哀想だった)

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