111.ルミアーナ、ラフィリルから日本の美羽と交信する-01
※声にださす頭の中での行進は『』で表現しております。
『光がつながったぞ!』
突然、月の石の精霊は(ラフィリルにいる)ルミアーナの頭の中に語り掛けてきた!
「えっ!?本当に?」ルミアーナは意識を一心に月の石に向けた。
石をそっと掌でつつみ祈る。
『美羽?美羽?私よ?私は貴女よ?』と心の中であっちの世界…日本でいる美羽に話しかける。
『え?だれ?私?私って?』と頭の中に声がした時、向こうの美羽が神社にある月の石のご神体に触れた。
すると二人の意識は溶けあい、互いの姿すら見る事が出来るようになった。
頭の中ではあるが互いの姿すら確認できたのだ。
『え?私?どうして?私は死んだのではなかったの?』と今現在の美羽が言う。
『私…私達は生きてるわ!私と貴女は互いに一つの魂が分かれて二つの世界で生を受けた者同士なのよ?私達は入れ替わったの!』
『えええ?まさかそんな事が!』
『ああ、そうよね?いきなりそんな事言われたって驚くだけよね?でもね、今から説明することをよく聞いてほしいの!貴方も私も死にかけていた…でも死んだわけではないの…月の石の精霊に私達の魂が入れ替えられることによって生きながらえたのよ…』
『っ!月の石!?』と美羽は驚いた。
そう、それは病院と言う白い部屋で目覚める前にいた世界の記憶…精霊が宿ると言われし『伝説の聖なる石』である。
そしてこれは、月の石の精霊の力による出来事だと素直に信じることができた。
そしてルミアーナは美羽にこれまでの経緯を話して聞かせた。
美羽は、月元宮神社(亮子の家の神社)の本堂にある大きな月の石の御神体に体を寄りかからせて座り込みその事実に驚いた。
『では、もう邪気は取り払われたのですね?ルミアーナになった貴女がまた狙われる事は無いのですね?よかった』
『私の心配なんていいのよ?私は強いんだから…それより、貴女は大丈夫?…あの…正直、こんなに綺麗なお姫様のルミアーナからお転婆な美羽に無理やり入れ替わらされて…辛い思いをしているのではと…私…申し訳ないやら気の毒やらで…ほ、本当にごめんなさいっっ』とルミアーナは美羽に(頭の中でだが)土下座して謝った。
『まぁ!何を言っているのです?それを言うなら私の方こそ、あんな虚弱で亡霊のようだった前の私に入れ替わらされた貴女の方に申し訳なかったですわ!命まで狙われて!この世界は優しくて平和で家族にも愛されてこんなにも幸せだったのに…申し訳ありませんでした』と美羽も頭を深く深く下げた。
『ええ?でも、せっかく綺麗なお姫様だったのに…』
とルミアーナが不安そうに呟くと美羽は頭を大きく左右に振った。
『いいえ!私は正直、目覚めて初めて鏡を見た時、本当に嬉しかったのです。亡霊のように青白く生気のなかった自分がこんなに健康そうな少女に生まれ変わったのだと…記憶はあいまいだけれど家族の事は何となく理解できたしきっと事故のせいで今の自分の記憶がどこかへ行ってしまって前世の記憶が何故だかよみがえっていたんだと思っていました』
『あ!私もっ!私もよ!そうなの!月の石と出会って色々と話を聞くまで、私もそんな感じに思っていたもの!前の私は死んでしまって、こっちの世界に生まれかわったのかなと!』
『先ほど聞いたお話…入れ替わった故に得た御力とはいえ凄いですね?こうやって違う世界に行きながら、おしゃべりできるなんて…』
『本当ね…でも、いちいちその御神体まで美羽が来ないといけないのは不便よね?』
『そうですね…でも、このご神体が”月の石”だったことがまず奇跡的なことですし…』
『いやいや、それを言うなら私達自体がもう奇跡だよ…』
『まぁ!そうですね…確かに』うふふと微笑む美羽にルミアーナもまた笑顔で答えた。
(うわぁ…中身が、変わるだけでこんなに違うの?なんか、美羽の頃、自分は普通だと思っていたのになんだか上品なお嬢様に見えるよ…はっ!どうしよう!私!私がルミアーナに入ったことでルミアーナが不細工に!)と心の中でついつい思ったら、美羽がくすくすと上品に笑った。
心の中の声はバレバレで聞こえているようだ。
そら、そうである。
そもそも頭の中での会話なのだから…。
『それを言うのは私ですわ。中身が貴女になっただけで、亡霊のようだった私の顔は生き生きとバラ色の頬に生気のない瞳には輝きが!私、前の自分がこんなに綺麗だったなんて信じられませんもの…って…あ』と美羽は頬を赤らめた。
『うん…わかるよ。わかる。私達お互いを褒め合うと非常に恥ずかしい状態だよね?だって私もあなたも私なんだもの!どんなナルシストだっつぅの?あははは』とルミアーナもパタパタと顔を手で仰ぎながら目線を泳がせ真っ赤になった。
『…お互いを褒めるのはやめにしておきましょうか?とにかくお互いが不幸でなくて良かった良かった!』とルミアーナは今後の話に切り替えた。




