102.神崎 仁の末妹への呆れた執着
一年以上もの間、植物状態になっていた俺の大事な下の妹、美羽が目覚めた。
医者も奇跡だと言っていた。
心配された機能障害などもなさそうだ。
ただ、目覚めてからしばらくは記憶が曖昧で喋ることも難しかったようだ。
しかしついこの間、上の妹の静から「美羽が喋った!」と連絡が入った。
俺は速攻で転勤先の北海道での商談をすませキャンセル待ちの便に飛び乗って美羽のいる実家に戻った!
まだ、本調子でなく、たどたどしいしゃべり方の妹の美羽。
記憶がまだ所々あやふやなせいか何故か敬語っぽいしゃべり方なのだが、またこれはこれで愛らしい。
美羽よ!
可愛すぎてお兄ちゃんは萌え死んでしまいそうだぞ!真に悶絶ものの可愛らしさだ!
事故の前の美羽は、やんちゃで無鉄砲な所があったが事故以来少し?いや、大分?性格もかわったように思う。
兄の自分が言うのも何だが、おしとやか?になった美羽は文句のつけどころのない美少女である。
悪い虫がつかないか兄としては非常に心配である。
早速、実家のある東京に異動願いを提出した!
美羽が事故で昏睡状態になった時、自分が側についていてやれなかった事がどれほど悔しかったか!
もう後悔などしたくはない。
若干、二十七歳にして部長までのし上がってはいたが、出世なんざ糞くらえだ!
異動が叶わないならとっとと辞めてやる!
いざとなったら、親父の思惑どおりになるのは歯がゆいが道場のあとでも何でも継いでやる!
そうすれば、せめて美羽が嫁に行くまでの間くらいは見守ってやれるだろう。
ふっ!でもまあ、この俺の眼鏡にかなわないような奴には美羽はやらないがな!
その辺は親父も同じ意見だろうから、さほど心配しちゃあいない…。
そして翌月、俺、神崎仁は強引に会社を自主退社し実家へと戻る事となったのだった。




