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お嬢様 must go on!  作者: 紙月三角
第5幕 ショー・マスト・ゴー・オン
31/37

01. まだあなたを許したわけではなくってよ

「こんなところを待ち合わせ場所に選んで、ご迷惑だったかしら?」

 荒波が打ち寄せる高い崖の上に、向かい合うように立つ2人の少女がいた。あたりは暗闇に包まれていて、お互いの姿もうっすらとしか見えない。吹きすさぶ風は、2人の長い髪を荒々しくなびかせている。

「構いませんわ。わたくしの方こそ、御忙しい所に御時間を取って頂いて、申し訳御座いません」

 1人がにっこりと笑顔を作る。演技のようなその表情には、気持ちが全くこもっていない。その笑顔を軽蔑するように睨み付ける、もう一方の少女。

「…ワタクシ、まだあなたを許したわけではなくってよ」


 強風に混じり始めた雨が、2人の服にいびつな水玉模様のしみをつくる。


「…其れも構いません。貴女様がわたくしの事をどの様に御思いであろうと、其れは貴女様の御勝手で御座います」

 作り物の笑顔のまま、崖を背にしているもう1人の少女に歩み寄る。

「ですから此れからわたくしが貴女様にさせて頂く事も、只のわたくしの自己満足。どうか此の御勝手を御許し下さい…」

 彼女は瞳を鋭く輝かせ、獲物を狙う肉食獣のように素早く動いた。


「や…やめて!一体何を…!こんな事……どうして…」

 稲光と共に雨が急に激しくなる。声は途切れる。


 やがて、崖の上に立っているのは1人の少女だけになった。

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