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「もぉう、ナナちゃんはすぐそういうこと言うー」
「ナナちゃんはホントにおもしろいなぁー。わたしナナちゃんダーイスキ!ナナちゃんもわたしのことスキ?」
「やぁだあ、もう!あははぁ、私たち最高の友達だよねぇ?」
………
「…あ、ごめん。つい………」
「変な事して、ごめんね。びっくりしたよね…」
「…ナナちゃん…。わたし、わたしね…。ナナちゃんの事、好き…なの」
「違うの、そうじゃなくて…。わたしナナちゃんと…」
「うん、そうだよね…。ごめんね…………もぉう、ごめぇん!冗談だよぉ。だぁーってわたしたち友達だもぉんねぇ!」
………
「ねえー、ナナちゃん聞いてよぉ。××ったらひどいんだよぉー。
わたし何もしてないのに、こんなひどいことするんだよぉー。もう最悪ぅ」
「もぉうナナちゃん、ちゃんと聞いてるぅ?」
………
「今日さ…××に言われたんだけど、…その、ナナちゃん、わたしの事……嫌い、なの…?」
「えっ………違うの!わたしあの時はどうかしてて!もうそんなつもり無いから!また前みたいに…」
「…もう、あんなことしないから…。おねがい…。また、友達になろう…?」
………
「…ナナちゃん…もうこんなことやめてよ…。わたしは何されてもいいけど……ナナちゃんに……こんな事してほしくないよ…。」
「ナナちゃん、こんな事する人じゃなかったよね?みんなに言われて、仕方なくやってるんだよね…?」
「ナナちゃん…?ねえ…」
………
ナナちゃん
急にこんな手紙を書いてしまってごめんなさい。わたし、やっとナナちゃんがどんな気持ちだったかわかりました。わたしのコトそんな風に思ってたの知らずに付きまとってしまってごめんなさい。気持ち悪かったよね。でも安心して下さい。わたしはナナちゃんの前から消えます。もう2度と会うことはないと思います。
でも、最後に1つだけ、ナナちゃんに知っておいてほしい欲しい事があります。
わたし、あんな変な事してナナちゃんを傷つけちゃったけど、あんな事する前までのわたしたちは、ううん、本当は今でも、わたしはナナちゃんのコトを友達だと思っています。わたしは、ナナちゃんと一緒にいてすごく楽しかったです。
ナナちゃんは、わたしと一緒にいて楽しくなかったですか?わたしがあんな事をしなければ、わたしたちは今でも友達でいられたのでしょうか?
また気持ち悪い事を言ってしまってごめんなさい。でも、良かったらメールでも、電話でもいいので、最後に返事を聞かせてくれたらうれしいです。
………
返事は来なかった。
沙夜は目覚めた。今の学園に転校する前までは、毎晩のように見ていた夢。転校してきてからは、やっと見なくなったその夢を、久しぶりに見てしまった。もう忘れられたと思っていたその夢は、当時と変わらない鮮明さと、残酷さで、沙夜の前に現れた。
沙夜は、きいなの台詞を思い出す。
女の子好き同士が出会えるなんて、めったにない。それこそ運命の出会いだって…
…わたしたちって、運命なのかな…?わたし、もう我慢しなくていいのかな…?また、あの時と同じ間違いしようとしてるんじゃないのかな…?また傷つけちゃうんじゃ、ないのかな…。
沙夜は1人の少女の事を思い浮かべた。優しく沙夜に笑いかける少女。だが、沙夜がその少女に手を伸ばすと少女はバラバラに千切れて、沙夜の前から消えてしまう。真っ暗な何も無い空間に、1人残される沙夜。
やっぱりだめだよ…。わたしなんかが、誰かを好きになるなんて…。
顔を枕に押し付け、沙夜は声も立てずに静かに泣いた。




