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第31話 男のプライド/カイシ

 俺は『ソーガ・カイシ』21歳、魔力値35、身体能力値95の貴族軍人だ。


 俺の父はヤーマ連合王国の英雄と呼ばれ、連合王国最大の身体能力値99の持ち主、軍務大臣ソーガ・エイシ……


 父は俺にとっての憧れであり目標だ。


 俺はそんな父に少しでも近づくために日夜修行に励んでいる。なので俺と同じように国王の側近として働いている父を持つ幼馴染のグリスやダルゴよりは俺の方がはるかに有能だと自分では思っていた。

 

 2人の魔力値は俺よりも高いが身体能力値はかなりの差がある。だからたまにゲーム感覚で2人と剣術で模擬戦をすることがあるが俺は一度も負けたことがない。


 そんな剣術に自信のある俺が父に認めてもらいたいという思いと自分の力を国中に知らしめたいという思いで参加した『剣術大会』……


 当然ながら俺は順当に勝ち上がりあっさり決勝戦まで進んだ。勿論、他の出場選手の試合など興味も無いし見る価値もないと思い自分の試合以外は控室で筋トレをしていた。


 そして決勝戦……会場にはタケル国王、軍務大臣の父、そそいて幼いころから俺達3人が片思いしているヒメカ王女の姿もあった。


「よし、俺はこの大会で優勝してヒメカ……ヒメカ王女にプロポーズをするぞ!」


 そう意気込んで俺は決勝戦を迎える。


 相手はこの数年の間に少しだけ有名になっている男、『オオガミ・カズヒト』年齢は俺より少し上だが身分は俺よりもはるかに下のクセに生意気な男だ。


 有名になっていると言ったのは奴が2000年ぶりに現れたこの大陸で唯一の『魔力値がゼロ』というところだからだ。


 奴は5年前に『異世界』から転移者して来た謎の多い奴らしいが、何故かそれからずっとヒメカ王女の傍にいるのだ。俺はそれが気に入らなかった。


 奴が来てからヒメカ王女と会う機会が激減したのが腹立たしい。ヒメカ王女も俺達に子供の頃のような接し方をしなくなった。全て奴のせいだ。


 そういった理由で俺は絶対に奴をヒメカ王女の前で叩きのめし、ヒメカ王女の目を覚まさせる必要があると思っていたのだ。


 剣術大会では魔法の使用は禁じられているから魔力値は関係ないが俺の身体能力値は95、この国で父に次いでの身体能力値の持ち主だし、剣術も同年代の奴等には負けたことがない。


 だから俺が剣の構えだけはいっちょ前のあんなザコに負けるはずがないと思っていたんだ。


 しかし試合結果は俺の完敗……だったらしい。


 らしいというのは開始の音が鳴った瞬間に俺は気を失い目を覚ました時には医務室のベッドの上にいたからだ。勿論、とっくに表彰式も終わっていた。 


「あ、やっと目が覚めたみたいだなカイシ!」


 1つ下の幼馴染で内務大臣モノーベ・ゴルドの息子、ダルゴが顔を覗き込みながら話しかけてきた。


「お、俺はどうしてベッドの上にいるんだ? 試合はどうなったんだ!?」


 俺がダルゴに質問したが何故か何も言わずに俺から顔を離し下手くそな口笛を吹きだした。するともう1人の幼馴染であり連合王国宰相オットモー・ゲイルの息子で俺より2つ上のグリスがダルゴの代わりに試合結果を教えてくれた。


「カイシ、君は対戦相手のカズヒトにあっさり負けてしまったんだよ。それも開始直後、彼が凄まじいスピードで君の目の前に行き、そして剣の柄部分で君のみぞうちに突きを入れ、そのまま君は気を失ったんだよ……」


「な、なんだとーっ!? グリス、冗談は止めてくれ!!」


「いや、冗談ではないよ、カイシ」


 お、俺はグリスの話が信じられなかったが、確かにみぞうち辺りに痛みがある。ということはグリスの言葉は冗談ではなう、本当に俺は奴と剣で交える前に負けたというのか!?


 こ、こんな屈辱は初めてだ……


 くっ、くそーっ!!


 俺は国王や父上、それに愛するヒメカ王女の前で赤っ恥をかいてしまったのか……な、なんということだ……


 この日依頼、俺はカズヒトのことを今まで以上にに憎むようになり奴に会うたびに理由もなく突っかかていたが、奴は毎回、涼しい顔をして無視を決め込んでくる。それが余計に腹立たしい。


 なので俺は常日頃から奴を貶める作戦ばかり考えていたのだった。

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