第28話 反連合組織/カズヒト
「アルス、大丈夫か!?」
俺達は急いでアルスのもとへ向かう。
「どうしたアルス、一体何があったんだ!? それにお前が泣いているなんて……もしかしてテロリストのやられたのか!? それでどこか怪我をしているのか!?」
しかし、この倒れている獣人族は何者なんだ?
それに倒れている獣人族の男性は見るからに息をしていない。
もしかして、アルスがこの獣人族を……?
「う、うう……」
アルスは下を向き泣きじゃくっている。
こんなアルスを見るのは初めてだった俺は少し戸惑っている。
でもこういう時に強いのは女性なのかもしれない。
「アルス、泣いてちゃわからないわ!! 一体何があったのよ!? アルス、あなたは男なんだからしっかりしなさい!!」
ヒメカがアルスを叱咤してくれた。本当は俺の役目なのに申し訳ない、ヒメカ……
そんなヒメカの叱咤を受けてアルスは
「は、はい……」
ようやく泣き止み話し始める。
「実は……目の前に倒れている男性は……僕が住んでいる家の近くで喫茶店を営んでいるマスターで……毎週僕はその喫茶店に足を運んでいてマスターとも親しくて……それなのに……いたるところで爆発を起こしているテロリストのメンバーの1人だったなんて……うっ、うう……」
「・・・・・・」
なるほどな。
アルスが親しくしていた喫茶店のマスターが突然テロリストとして目の前に現れたということか。そして本人達が望まない戦闘が始まって……最終的にアルスが勝ってしまったということだな。現に倒れている男には無数の短剣で切られたような傷がある。
しかし、何故この国に長年住んでいる獣人族がテロリストに加わるんだろうか?
「アルス、その男はアルスに何か言わなかったか?」
「言いました。僕に『反連合組織』に入れと。そして一緒に同胞達を悪政から解放させようと……それで僕がそれを拒否したので戦いになってしまい……」
「マズいわね……」
「え? ヒメカ、何がマズいんだ?」
「今、広範囲に『感知魔法』をはびこらせたのだけど、今回テロを起こしているのは全員、獣人族だわ。おそらく50人はいると思う……」
「50人? 多いとは思うがそれくらいなら俺達だけで簡単に倒せる人数だしマズくはないと思うけど……」
「いえ、そういうことではないの。マズいのはテロリストが全員、獣人族ってことなの。連合国の1つである『西獣人国』は連合国に加わってまだ20年程しか経っていなくてヤーマ国民や他の連合国からあまり信用されていないっていう実情があるのよ。まぁ、20年前に『西獣人国』で大きな事件が起こったことが余計に信用してもらいにくくなってしまったのだけど……だからこんな事が起きてしまえばアルスのような信頼できる獣人族でも今後、迫害を受けてしまうこともありえるから……」
迫害……それはマズいな。
これこそ『負の連鎖』だ。迫害が新たな恨みを作ってしまい、それが積もり積もって新たなテロリストを作ってしまう……それと
「20年前の大きな事件って何だい? 俺はその事件はヒメカから聞いていないと思うんだが……」
「うん、言ってないわね。というかあまり言いたくなかったというか……でもこんな事が起きてしまったし、カズヒトに伝える時期が来たのかもしれないわね。ただ、それはこのテロが終息してからになると思うけど……どうも私達、10数名のテロリスト達に囲まれているみたいだから……」
「な、何だって!?」
ヒメカがそう言ったので俺は辺りを見渡すと俺達3人を囲むように10数名のテロリストと思われる獣人族が様々な武器を片手に俺達を睨みつけている。
「アルス、一つ確認していいかい?」
「は、はい師匠……」
「俺はアルスと同じ獣人族だろうが、どんな人種であろうが、関係のない人達まで巻き込むテロリストは容赦しない。そこのマスターのようになってしまうが構わないかい?」
「はい、構いません! 僕も大好きなこの国を脅かす奴等は絶対に許せません!!」
「そっか。それを聞いて安心したよ。それじゃぁヒメカ……いやヒメカ王女、10秒で片付けようか?」
「フフフ、何を言ってるのカズヒト? 5秒で終わらせるわ」
「ハハハ……」
なんとも頼もしい俺の愛する王女様だ。




