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第14話 予言書/ヒメカ

 私はお父様から鍵を借りて箱を開け、中にある『予言書』を取り出した。


「これも2000年も前のものなのですか?」


「そうだよ。私達の先祖である初代連合国国王オーガ・カズマの母、テーラスには予言……未来が見える能力があったんだ。そしてこの書物こそが、テーラスが生涯をかけて書いた予言書だ。彼女達が生きていた時代以降から約2000年の間で起こる大きな出来事が何千も書かれているんだ」


「に、2000年分の予言ですか!? それは凄い……でもそれって全て当たっているのですか?」


「年代ごとに書かれている文章の下にレ点があるだろう? これは歴代の国王が予言通りの出来事が起こった際にチェックしているんだ。見れば分かるがこれまでの予言には全てチェックがある」


「ほ、ほんとだ……ヤーマ歴2044年まで全てにチェックがありますね。あっ!! 2025年の魔族帝国の襲来の時、英雄現る……これって軍務大臣のソーガ・エイシのことですよね? それに……2026年……王族暗殺事件が起こる……この事件は……お、お母様……」


 私が1歳の時、母であり、この国の王妃オーガ・セリカはこの年に一番新しく連合国に加わった最南端の国『西獣人国にしじゅうじんこく』の視察の際、魔族帝国ではなくもう一つの大きな敵対国『魔法連邦国』と同盟国である『東獣人国』の刺客によって命を奪われたのだ。


「私はあの事件が起こることを予言書で知っていたんだ。私が襲われるのか、それともセリカが……だから本来、連合国に出向く際は夫婦で行くのが決まりだが今回だけはセリカにはヒメカとこの国で留守番をしてくれと頼んだのだ……でも彼女は私にこう言った……」


『陛下、私は思うのです。予言書の内容から逃げるべきではないと。逆にそれが起きるのが分かっているのですから、その事件を防ぐための対策をしっかりと打ち、それに立ち向かうべきかと……そして悪い予言を回避する……そういうことがこれからの連合国には大事なのではと私は思うのですが……』


「私は滅多に口ごたえをしないセリカの言葉だったので彼女の意見を受け入れてしまった。そして事前にあらゆる対策を講じた。本来なら連合国に加わったばかりの国には我々の兵器は直ぐには持ち込まないし、国全体に何重もの防御魔法も行わないのだが、この時は周りの反対を押し切り事前に全て行ったんだ。しかし……詰めが甘かった……」


 ここでお父様は口を閉ざしたけど私は宰相のオットモー・ゲイルから聞いて知っている。


 お母様達が襲われたのは正面からでも空中からでもなく、東獣人国の刺客が現れたのは西獣人国宮殿前広場の地中からだったのだ。


 そう、防御魔法は地下まではされていなかった。でも獣人族の中には地下での活動が得意な者もいるということで彼等はその得意体質を活かして地中から襲ってきたのだった。


 そして刺客達はヤーマ連合国兵や西獣人国の兵士達の隙をかいくぐり国王夫婦へ襲い掛かってきたけど、その時お母様がお父様に抱き付いてかばうような状態となり、刺客達の短剣は全てお母様の背中へと刺さり……


 その後、怒り狂ったお父様は火炎魔法を発令し刺客達を丸焦げにしたのだけど、お母様の傷は回復魔法ではどうにもならないほどに致命傷だった。強力な魔力がこもった短剣の先には毒も塗ってあったということだった。


「セリカ、すまない!! お前がこんなことになるなんて……私はなんて取り返しのつかないことを……ウウッ……」


「へ、陛下……悲しまないでください……私は愛する陛下をお守りできただけでも幸せなのですよ……ヒメカの成長する姿が見れないのは残念ですが、きっと陛下の様に立派な王族になることでしょう……本当に良かった……オーガ一族の血は絶やさずに済みました……これで今回の事件は無事に終わることでしょう……あとはこの国『最大の危機』のために……それだけを考えて……」


「せ、セリカーっ!!!! うぉぉおおおおお!!!!」


 お父様の泣き叫ぶ声が西獣人国宮殿前広場に響き渡っていた。


「セリカ、あと20年待っていてくれ……そうすれば私もお前の傍に……」


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