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熟練度カンストの断言者

 攻撃はすぐにやって来た。

 いわゆる、レールガン的なものによる飽和射撃というやつだ。


 今まで戦ってきた移民船と比べれば大人しいもののように見えるが、よく考えてみるとこれはなかなか強力ではないか。

 一撃一撃が、恐らくは移民船の小型ロボットを破壊できるくらいの威力を持っている。


 つまり、移民船の通常戦力を常時無効化できるというわけだ。

 時間停止攻撃を仕掛けてくる連中だって同じだ。

 あいつらが時間を止める前に、レールガンが撃ち抜く。


 ははあ、こいつらは色々なやり方で他の船を牽制していたんだなあ。


「だが、俺に対してはアホな攻撃でしかないな」


 あらゆる遠距離攻撃は跳ね返したり無効化するのが俺である。

 レールガンを片っ端から反射し、逸して他の弾丸にぶち当て、道を切り開いていく。


「ごく当たり前の攻撃を強化することで、どんな相手にも通用するようにするアイディアはいい。だが相手があれだな。当たり前の攻撃が通じないと全部ダメになるアイディアだ」


 ジェットパックでガンガン近づいていく。

 抵抗である飽和射撃は俺が無効化できるので、バララが作り出した追い風しか無い。

 

「これで終わりだ」


 レールガンの弾丸を反射したところで、眼前にある砲塔の大部分が沈黙した。

 俺は既に、宇宙船と肉薄している。


 壁面を覆うガラスのような反射面。

 これはバリアだな。

 サクッと切断、破壊である。


「あっという間に片付いてしまった……。本当にユーマは強いな」


「うむ。色々経験して来たからな。大概のことには対応できるし、大概じゃないことにも対応してきた。ちなみに今回のは、ありふれたケースに入ると思う」


「そこまで……!!」


 装甲板を切断すると、そこには通路があった。


「内部構造はちょいちょい変えられてるんだな。だけどまあ共通だ。行くぞバララ」


 彼女を下ろし、先に進む。

 バララは宇宙船の中をキョロキョロ見回しているようだ。


「混沌の精霊がいない……。いや、見たことがない精霊がいる」


「見たことがない精霊?」


「うむ。精霊というものは、どこにでもいるものだ。きっとこの侵略者たちの船? も、精霊を中に詰め込んでやって来たはずだ。だけれど、あまりにも長い旅路だったのだろう。精霊たちが変質して全く違うものに変わっている」


「混沌の精霊とはまた違う?」


「違うな……。なんというか……何もやる気がない精霊になってる」


「ははあ。宇宙船の中の環境は、全て機械でコントロールされているからな。そういう状況だと精霊がやることも無かろうし、不貞腐れて何もしない精霊になってしまうのかも知れない」


「ああ。これは精霊が可哀想だ。混沌の精霊たちに頼んで刺激してもらおう」


 バララが外から手招きすると、ビューっと風が吹き込んできた。

 すると、明らかに空気が淀んでいたような船内が、爽やかな香りに包まれた気がする。


「精霊たちが戸惑っている。これはしばらく、リハビリが必要だな」


「精霊にもそんなものが」


「あるぞ。精霊だってまとまると己の意思があったりするんだ」


「バララはまた、リュカたちとは違った世界の見え方をしているな」


 こうして、宇宙船の中はバララのちからで、全く違った雰囲気に書き換えられていくのだ。

 船内の精霊たちが元気になっていくのを感じつつ、俺たちはのしのしと船内を闊歩した。


 なんと、この元気になった精霊に触れると、船内に存在していたガードロボットみたいなものが次々に行動を停止していくのだ。


「おや? なんか船内を流れてた風の感じが変わったな。換気口から風が流れてこなくなった。これは、精霊が船の機械を全部止めちまったのか」


 だとすると、移民船の中で寝ているであろう連中はどうなるのだ。

 死ぬんじゃない?


「それはちょっとな。俺は子どもができて優しくなったのだ。この厳しい大地で血反吐を吐いて生きてもらわねばならんからな」


「ユーマ、何を邪悪な笑みを浮かべているんだ……」


「えっ、俺としては慈愛に満ちた笑みのつもりだったのだが」


 船内の通路は、すぐに目的地へと繋がった。

 そこは移民船の中心部。

 移民しようとした遠い宇宙の人類たちがぎゅぎゅっと詰め込まれた部屋だ。


 今、生命維持装置が全部止まってるはずなので、片っ端から死んでいっているのではないか。


「なんということ……なんということだ!!」


 叫びながら走り回っている男たちがいる。

 移民のカプセルから、何人か引っ張り出されているな。

 半分くらいは死んでる。


「手伝ってやろう。俺の腕はいいからな。中の人間まで真っ二つにはしないさ」


 俺が進み出ると、男たちは瞠目した。


「イ……イレギュラー!!」


「我らの船すらも堕とすかイレギュラー!!」


 イレギュラー?

 ああ、きっとこいつらは、数年前の移民船団との戦いを通信で知っていたんだろう。

 で、俺はこいつらからイレギュラーと名付けられていたと。


 だが、そんなのは後だ。

 俺は納刀し、周囲を見回した。


 構造は、このコールドスリープカプセルらしきもが展開されているものを見て把握した。


「行くぞ。ディメンジョン・ビッグ・ソニック!」


 抜き放たれたテュポーンが、俺の操作に応じて高速で変形する。

 その形は大剣だ。


 大剣による、次元を越えた超高速の抜刀術。

 それがカプセルの先端をことごとく切断する。


 すると、ところてんみたいにカプセル内の人間たちがニュルリとこぼれ出てきた。

 おっと、いかんいかん。

 受け止める態勢が無いじゃないか。


「バララ、頼む」


「助けるのか? そんな必要はないと思うが」


「この戦いで混沌の大地の人間が減ったろ。労働力はは多いほうがいいぞ」


「それもそうか……。混沌の精霊よ! 未知の精霊たちよ!」


 バララの声に、船内全ての精霊が応えた。

 その途端、停止していた機械が再稼働する。


 船中の機械が集まってきて、人間を受け止め始めるではないか。

 なるほど、未知の精霊はいわば、機械の精霊とでも言うべきものに生まれ変わったというべきだろう。


 ……ということは、バララは混沌の精霊と機械の精霊をともに司る存在というわけか。

 凄いな!

 現代日本に行ったら無双できるぞ。


 現代日本かあ……。

 また遊びに行ってもいいかも知れないな。


「なぜだ……」


「おっ、なんだ」


 移民船の代表みたいなのが俺を見つめている。

 睨みつけているわけではないので、複雑な気持ちなのかも知れんな。


「なぜ我らを拒む……! 我らは故郷を失い、新たな世界を求めてたどり着いただけだ。我らの千年に及ぶ旅の終着点がここなのだ」


「普通に住み着くだけなら良かっただろ。例えば、ここからちょっと行ったところに蓬莱帝の船が焼き尽くした大地とかあるから、あそこをテラフォーミングして住むなら良かった。だが大気の組成とか変えたらこの星の生き物が困るだろうが。お前らが後から来たんだから慣れろ」


「うっ……! だ、だが我らには文化的な生活と生きる権利が……」


「お前らの権利と文化は他者を犠牲にし続けて維持していくほどのものなのかよ。そんな資格はないだろ。ってことで現地の人と合わせて一からやり直せ。俺は優しくなったので、ここでお前らを皆殺しにすることはない。だが現地人はどうかな……? 好き勝手やって来た報いを受けることにもなるだろうが、そこから先は知らないぞ」


「そんなあ」


 そんなあ、じゃねえ。


「よし、バララ。帰るぞ。というか多分バララ、お前、機械系の相手全般に対して絶対的に優位な能力を今身に付けたぞ。三大宗教もバララの前だと敵にならないだろこれ」


「そうなのか……? 私は何も変わっていない気がするんだが……」


 自覚なしである。

 機械の精霊ということは、動力を持ち、一定の動作を行う構造物全てを掌握できる存在だろうと俺は睨んでいる。


 バララはこれで、あらゆる現象を擬似的に再現でき、あらゆる機械のコントロールを乗っ取ることができる力を持っていることになる。

 本人の能力としてはそこまでではないのだろうが、やれることの利便性が世界最強クラスである。


 これ、俺のテュポーンもバララにコントロールされるということでもあるな。

 外に出た俺たちは、眼下に鷲の部族たちが歓声を上げている様子を見る。


 戦場までは機械の精霊たちの活動が及んでいないはずだが……。

 ああ、クラウドがハッスルしたんだな。


 見渡す限り、全ての機械製武器が破壊されている。


「これは……もしや、ユーマ」


「おう。戦いは終わった。全て終わらせた。元凶になった連中を叩き潰したからな」


「本当か! 本当に戦いは終わったのか!」


「終わらせたわけだ。ってことで、これで俺の仕事も終わりだな。暗黒大陸編、これにて完……!!」


 俺は達成感とともに呟いたのだった。

 さあ、家に帰ろう……。



2/28にカンストの6話目です!

電子オンリーなんですが、コミックにもなります。

こちらは近々お伝えしますね!

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