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熟練度カンストの集落者

 こうして鷲の部族の集落に招かれた俺たち。

 俺、バララ、早苗。

 クラウド、謎の幼女ジョカ。


 なんという凸凹なメンツだ。

 俺とクラウドなど、目を離していたらすぐにバトルを始めてしまうぞ。


「ユーマ君が今にも戦いそうな雰囲気になっているの珍しいわね。いつもならもっと余裕があるのに」


「何と言うか、一番ソリが合わないというか、俺の宿敵みたいなのがこいつなんでな」


「それはこちらの意見だ! こんな美学を解さない、剣が強ければそれでいいような無粋な男とは一秒でも一緒にはいられん」


 俺とクラウドの間で火花が散る。

 徹底的にこいつとは真逆なのだよな。


 早苗が楽しそうに、俺とクラウドのバチバチなやり取りを眺めている。

 くそー、大人の女性の余裕を見せつけてくる。


 鷲の部族の集落に話は戻るが、そこは岩山の中に作られていた。

 遠くから見ると円筒形っぽいこの岩山なのだが、近くならば、あちこちに大きな亀裂が走っているのが分かる。


 そして巨大な岩山の亀裂ともなれば、とんでもない規模になるわけだ。

 集落はこの亀裂に存在していた。


「ほう……凄く遠いが空が見える……。緑も多い」


 岩山の頂上から麓まで走る巨大な亀裂。

 だから陽光も差し込むし、それを浴びようと生える木々があちこちにある。


 頭上には横向きに生えている森まであるな。


「我々はあの森まで行って狩りをする」


「そっか。鷲の部族は飛べるもんな」


 案内をしてくれた部族の人に教えてもらって感心する。

 こりゃあ面白い。


 今まで見たことがないタイプの生活がここに存在している。

 ……というか、あの横向きの森にパスを通せるだろう。

 今度アリエルに教えてやろう。


「ここはな、蛇の焼いたのがうまいのじゃ。わらわは毎日たくさんたべておる」


「ジョカ様は食べざかりだからな。だがあまり大きくなりすぎずにいつまでも愛らしくいてほしい……」


 クラウドの欲望がダダ漏れである。

 現代社会では生きて行けないタイプの男め。


 クラウドは鷲の部族からは親しまれているようで、あちこちから女性たちがにこやかな声を掛けている。

 クラウドもまた、彼女たちに気さくに挨拶をしている。


 人気だ。

 男連中からは、ちょっと舌打ちされたりしてる。

 嫉妬されてるな。


 だが、安心して欲しい。

 クラウドは成人女性には興味がないからな……。


 一方で、ジョカは部族のみんなから好かれているようだった。


「ジョカちゃんこれお食べ!」


「ジョカちゃんあそぼ!」


「ジョカちゃん今日もかわいいね!」


 などなどあちこちから声がかかる。

 確かに、混沌の精霊女王らしき格を有するこの幼女、かなり可愛い。


「ユーマさん、まさか」


「ノーノー」


 早苗の察しが凄く良かったので怪しまれた。

 そんな趣味はない!

 俺は至ってノーマルである。


 そんな俺たちを置いて、バララがどんどん先に進んでいっている。

 勝手知ったる……というやつだろう。


 すぐに、鷲の部族の巫女が出てきた。

 そして族長も隣にいる。


「族長はお父さんで?」


 俺が聞くと、族長は違うよ、とジェスチャーした。


「わしの奥さん」


「えっ!! 既婚者の巫女!? 巫女さんはチョメチョメすると精霊とつながる力が弱くなるはずでは」


 俺の中に衝撃が走る。

 すると、族長の奥さんだという若い巫女さんが微笑んだ。


「混沌の精霊はそこまで強い力を持っていないので大丈夫なのよ」


「なるほどー」


 ちょっとバララがむっとしているが気にしない。

 強い力を持っていないから、深く繋がってても浅く繋がってても、そこまで差はないから結婚OKというわけか。

 しかし族長め、若い嫁さんもらいやがって。


 いや、俺も他人の事を言えた義理ではないな……十人くらい奥さんいるし……。


「そうじゃの。わらわも大した力はないからの」


 蛇肉を焼いたやつをもりもり食べながら、ジョカが言う。

 うそつけ。


 バララは族長とすぐに話し合いを終えた。

 豹の部族と侵略者との戦いに、鹿の部族も協力する。

 この申し出を受けない理由はない。


 鷲の部族はクラウドの助けがあったおかげで、なんとか持ち堪えていた。

 だが、他の部族はほぼ、豹の部族によって、壊滅させられたというのだ。


 生き残りは奴隷として連れ去られている。

 なるほど、豹の部族は象の部族よりも、混沌大陸を征服していくことに強いモチベーションを持っているわけだ。


 遅かれ早かれ、豹と象の部族はぶつかり合うことになり、順当に豹が勝っていただろうな。


 集落でしばらく、世話になることになった。

 俺の実力は、クラウドが不承不承ながら保証した。

 なので、集落を守った凄腕のクラウドが保証するなら間違いあるまい、と俺たちの扱いは良くなったのである。


 もちろん、もともと交流があった混沌の巫女バララは特別待遇。

 俺と早苗が夫婦ということで、仮の家を与えられた。


「なるほどー。アフリカでみたものよりも、もっと原始的な形ね」


 早苗がフーム、と唸った。

 目の前にあるのは、木の枝をより集めて壁らしきものを作り、隙間を土や家畜のフンを乾かしたもので埋めている。

 天井には木の枝と土の表面を、伸ばした木の皮で覆ったものが載せられていた。


 雨よけ、風よけ、どちらもできるのだな。

 そして中に入ってみると……。

 おお、割とひんやりしている。


「土が保温効果を持っているのね。なるほど……素朴だけどよくできているわ」


 早苗が感心した。


「さっき原始的とか言ってなかったっけ」


「いい意味でよ……!」


 さすが現代日本の大人、言葉の繕い方をよく知っている。

 二人で家の中を探検してみる。


「このツボがトイレみたい」


「出すもの出して外に捨てるのかもな」


「ツボの周りに砂が盛ってあるけど」


「おお、バララの村でもそうだったが、トイレットペーパーの代わりに砂で尻を綺麗にするんだ」


「入ってきそう……。せめて森みたいに葉っぱとか」


「森はウォシュレットみたいなのもあっただろ。あそこがおかしいんだ。ここが標準的な文化レベルな」


「うーん」


 唸る現代日本人。

 亜由美ちゃんだと一瞬で適応するだろうからな。

 早苗の反応が新鮮でとてもいい。

 安らぐ。


 いつもいつも変な人ばかりだと、俺も疲れてしまうからな……!


「壁は案外頑丈。扉は無くて、獣の皮を垂らしてあるだけなのね……。やっぱりこの世界にはプライバシーがない」


「まあいたしてるところとか把握されてたもんね」


「あれね……!」


 顔を見合わせた。

 俺と彼女の間にもお子さんがいるわけで、いたすことはいたしたわけだが、まあこの世界は本当にプライバシーというのがね……!

 俺はすっかり慣れてるし、もともとそこまで気にしてない人間だけども。


 家の中にいると、外で遊び回る子どもたちの声や、訓練をしているらしい男たちの声が聞こえてくる。

 筒抜けである。


「防音性能はほぼない感じね」


「そりゃあ、音が聞こえなければ死んじゃうからなあ……。外から襲撃されたりするだろ? 音に気づかなくて逃げ遅れたりするかも知れないし」


「集落は山の裂け目にあるでしょ? 逃げ場を自分から塞いでない?」


「鷲の部族は空を飛んでただろ。つまり、逃げ場所は上なんだ」


 早苗が完全に理解した顔になった。


「ごめんね。まだ日本の常識でものを考えてた……!」


「世界的に見ても上に向かって逃げる部族なんていないからなあ」


 寝藁も確認。

 藁は昼間は外に出し、天日干しして虫を殺しておくのだとか。

 夜になれば、藁が温かい敷布団になってくれる。


 リュカと一緒に、この世界最初の町であるヴァイスシュタットに行った時、寝床は藁だったなあ……。

 懐かしい。


 最後に、灯り。

 それに相当するのは、家の入口に掛かった籠だろう。

 中にはホタルのような虫がいて、餌の雑草をガツガツやっていた。


「光る虫を灯りにするのか。なんとも風流な」


「凄く異世界らしいところに来たって思うわ。考えてみたら今までいたところは、文明が進みすぎてたのね」


「ああ。それに精霊界から来た異種族たちもいて、精霊魔法の守りでめちゃくちゃに快適な環境になってたんだ。人間だけが自力で暮らす土地はこんなもんだ」


 鷲の部族の集落。

 そこは素朴で、何も物が無く、割と日々をカツカツで生きていっている環境だった。


 他の部族たちも同じような生活をしていたとしたら、宇宙からの移民の力に目がくらんでしまうのも仕方ないとは思う。

 混沌の精霊を使ってすら及ばないような、めちゃくちゃに便利な生活が可能になるわけだからな。


 生活が安定すれば、人間には欲ってものが出てくる。

 豹の部族は支配欲でも滾らせたか。


 それで混沌大陸以外にも侵略の手を伸ばし、結果として俺とクラウドを呼び寄せてしまったわけだ。

 過ぎたる欲は身を滅ぼす。

 そう遠くないうちに、それを彼らは味わうことになりそうだな。

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[良い点] 昔から楽しませてもらっています。 [一言] コミック出たら買います。
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