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熟練度カンストの荒地踏破者

 バリバリ走るバギー。

 岩山付近に差し掛かると、周囲の荒地具合も加速してくる。

 岩がゴロゴロ、低木があちこちに。


 これを真っ向から踏破していくバギーなのだ。

 こりゃあいい。

 流石に揺れるようになって来たが、これくらいの方がなんかオフロードを疾走してるって感じがする。


「鹿よりも揺れないな」


 バララは平然としたものだ。

 彼女の部族は、野生の鹿を飼いならして乗りこなすのだそうだ。


 鹿と言っても日本人がイメージする鹿と違って、もっとでかいやつ。

 ヘラジカに近いモンスター鹿なんだと。

 暑いところで体がでかいので、角から熱を体外に逃がすんだそうだ。


 そりゃあ、乗っていると揺れそうだ。


「ちょっと乗ってみたいかも。私、乗馬もやってたからさ」


「多趣味な……。早苗はリア充だったんだなあ」


「なあにそれ。でもそうかも。ユーマくんと出会わなければ、私はあのまま普通に生きてたと思うなあ」


 それが今では、異世界で子育てしてるんだもんな。

 人生はわからんもんだ。


「それはそうと、鷲の部族はずーっと見てるだけだな」


「私たちが敵なのか味方なのか、見極めようとしているのだろう。象の部族の乗り物に乗っているから、今のところは敵だと思われているだろうな」


「それはいかんな」


 俺はバギーの上で立ち上がった。


「おーい。俺たちは敵では無いぞ。象の部族はぶっ倒した。これは戦利品だ」


 周囲に届くように声をあげる。

 すると、俺たちを追いかけていた視線が揺れたような感覚があった。

 敵意が薄れたと言うかな。


 岩山の麓辺りまで来たところで、バギーは停止。

 大地に降り立つ俺たちである。


 すると、今まで姿を見せなかった鷲の部族が次々に現れた。

 空から。

 飛んでたかあ……。


 しかもどうやら、精霊の力を使ってステルスモードで飛んでいたようだ。

 光学迷彩みたいなのを解くと、そこには鷲の羽で作られた被り物とポンチョみたいなのを纏った男たちがいた。


「お前が口にした事は本当か。象の部族が滅んだのか」


「死んでないのもいるが、まあ全滅だな。奴らはイキリ過ぎたんだ」


「イキリ……? だが、お前の言葉が真実であるという証拠は……」


 先頭にいる男は、まさに猛禽類のような目をしていた。

 で、俺をじっと覗き込んでくるのだが……。

 すぐにショックを受けたようにのけぞり、へなへなと崩れ落ちた。


 こいつ、俺が抑えてた剣気まで覗き込んだな。

 命に関わるぞ。

 というか、そういうのを見抜く力がこの男にはあるのだろう。


「若長!」


「若長がやられた!」


「おのれ!」


 いきり立ってきたぞ!

 しょうがないなあ。


「ほいっ」


 俺はやる気になった。

 すると、俺の周辺一帯に剣気が広がる。

 いきり立っていた連中が次々、腰砕けになって動けなくなった。


 つまり、常識的なレベルの使い手ばかりということになる。

 だが鷲の部族は、このレベルの者でも飛行と光学迷彩ができるのだな。

 これは凄い。混沌の精霊の評価を改めておかなくては。


「はわわわわ」


 後ろで腰が抜けたらしいバララの声がした。

 早苗が慌てて、彼女を助け起こしている。


「ユーマくんの剣気っていうやつでしょう? 私はよく分からないんだけど」


 つまり、早苗はまだこれが分かるレベルの使い手ではない、ということだ。

 ちなみに亜由美ちゃんはここにいる人々を遥かに凌ぐ使い手というか、全盛期の巫女とも張り合える実力者なんだが基本がのほほんとしてるので、俺の剣気が全く通用しないぞ。


 案外俺の剣気では実力は測れんな!


「こういうことは象の部族はできないだろう。ということで、俺が全く違う法則の強さを持っていることが分かってもらえると思う。もちろん精霊でもない」


「わ、分かった。お前の目の奥にあったものは、象の部族など比べ物にならない、もっと恐ろしいものだった……」


 若長と呼ばれた男が、震える指先を俺に向ける。


「我らを滅ぼしに来たのか、魔なる王よ」


「違う違う! 変な方向に勘違いするな! ほら、こっちにバララがいるだろ。彼女に協力して象の部族を倒したんだ。で、俺の標的になってるのは豹の部族なんで、協力を仰ぎにだな……」


 ……というところでである。

 俺は何かヤバい気配を感じて、思い切りバックジャンプした。


 一瞬前まで俺がいた場所……岩山の麓が砕け散る。

 これは……銃撃!


 口笛が聞こえた。

 岩山の影から、白いテンガロンハットに白い鷲のポンチョを纏った男が出てくる。

 右手には、黒い装甲に覆われた黄金の銃。


「うわっ、クラウド!」


「うわっとは何だ、うわっとは!」


 男はいきり立った。

 そう、クラウドである。


 異世界に降り立った、MMORPGのギルド、デスブリンガーの元ギルドマスター。

 戦術的には俺の師匠に当たり、戦闘力ではこの世界で唯一、俺と互角にやりあえる男だと思っている。

 負けたことはないが、一度もこいつとの拮抗を崩せたことがないんだよな。


「なんで白いんだよ」


「黒いと日差しを吸収して暑いだろ……。だが、このポンチョの下は辛うじて黒い」


「暑さに負けて矜持を捨てた的な?」


「死んだら矜持も何もないからな」


「そうなのじゃー!」


 おや?

 クラウドの脇から、黒髪をツーテールにした幼女が飛び出してきた。


「前にクラウドがおんぶしてた幼女か」


「幼女とは失礼な! ジョカ様だぞ。マイスウィートハニーだ」


「そうじゃ! わらわはクラウドのつまなのじゃー!」


 ジョカがピョンコピョンコ跳ねて自己主張する。


「えっ、ロリコン……!?」


 早苗が引いた!

 だが、それは偏見ではないぞ。

 クラウドは正しくロリコンだ。


 見ろ、ジョカを見つめるあの男の安らぎに満ちた眼差し!

 あんな目をするクラウド見たこと無い。


「ふむ。混沌の精霊の力を感じる。もしやあなたは」


 調子が戻ったバララが、ジョカに問う。

 幼女はふむ?と首をかしげると、バララの言わんとしていることを理解したらしい。


「ああ、なんかそんな感じじゃ! わらわは、こんとんの山より産まれたもの! おまえたちの言葉じゃと、せいれいじょおうというのじゃろ!」


 驚いた。

 クラウドが連れている幼女は、混沌の精霊女王にあたるものだったのだ。

 でも、確か翡翠帝国辺りで出会ったんだろ?

 どうして混沌の精霊女王が翡翠帝国にいたんだ。


「ユーマ。混沌の精霊は、世界のあまねく場所にいるのだ。他の精霊の力が強いため、いつもはそれらを真似して同じ動きをしているに過ぎない」


「なるほど」


 ということはどこに混沌の精霊王とか精霊女王がいてもおかしくないわけだ。

 しかしまあ、クラウド。

 混沌の精霊女王と仲良くなっちゃうとはな。


「ユーマ。ここで貴様と決着をつけておこうと思ったが、ジョカ様があまりにもカワユイので許してやろう……」


「そういう方向なの」


「あのー。喋ってもいいか」


 鷲の部族の若長が挙手した。


「どうぞどうぞ」


「彼が我らを守ってくれた。豹の部族との戦いを何度も退けてくれた。お前が彼の友であるならば、我らの友でもある」


「こいつとは友ではない」


「そうだぞ。こいつとは友じゃないぞ」


 クラウドと俺でお互いを指差し合う。

 冗談じゃない!


 若長がとても困った顔になった。

 バララが笑う。


「はっはっは、仲が良いほど喧嘩するというからな! それよりも私は、混沌の精霊女王に興味がある。そのような人に似た姿をとっているのだな。もしやこちらの人物とともに旅を?」


「そうなのじゃ! ばつとかようもおったのじゃがのー。アウシュニヤが暑かったのでダウンしたのじゃ」


「ははあ、クラウドは暑くても根性で頑張れるからな。夏コミとか黒服で平気でコスプレしてたらしいじゃないか」


「コスプレではない! 正装だ!! こうして、俺とジョカ様のふたり旅となったわけだ。だがユーマよ。豹の部族は貴様が思っているほど容易い相手ではないぞ」


「そうなのか」


「そうなのだ。奴らに従う混沌の精霊は、ジョカ様の言うことを聞かない。そして手にしている未来兵器を使いこなしている。なかなかの難敵だぞ」


「クラウドがそんな事を言うとは珍しい」


「ちょっとくらい苦戦した方が後で逆転すると盛り上がるだろう」


「そっちかあ」


 俺とクラウドのやり取りを、ジョカがきょろきょろ見ている。

 そして早苗とバララが、


「やっぱり仲良しじゃない」


「仲がよく見えるな……」


 などと話し合っているのだった。

 仲良しではない!



ジョカについては、僕の書いた作品の一つ、暗躍者✛クラウド✛に詳しいです。

この時点では未完作品ですが、徐々に書いていって完結まで持っていく予定です。

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