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熟練度カンストの出発者

「復讐は果たされた! 鹿の部族は宿願を果たしたのだ!」


 バララが宣言すると、レジスタンス改め、鹿の部族の一同がうおーっと沸き立った。

 巫女である彼女の前には、三戦士も誇らしげに立っている。


 うむうむ、良かった良かった。

 これにて暗黒大陸編は完結!!


 ……とはいかないのだ。

 もう一つ、豹の部族という連中が大陸でぶいぶい言わせており、俺たちを攻撃してきたのはその連中だと言うではないか。

 アウシュニヤにもつっかけたのだそうで、あそこの僧侶はどういう伝手を使ったのか、多分クラウドをこの大陸に派遣している。


 あいつが豹の部族を追いかけているのか。

 面倒なことになりそうだなあ。


 すぐにアリエルもやって来た。


「ユーマさん、パスが繋がりました。みなさん遊びに来ますよ」


「みんな!? 奥さんたちと子どもたちみんな来るの?」


「来ますよー。ほら、ユートもいます」


 アリエルの腕の中に、俺の唯一の息子が収まっている。

 まだおしめの取れていないユートが、俺を見上げてふにゃ、と泣きそうになった。


「うおー」


 ピュッと離れる。

 よーしよし、泣き止んだな。


「あばうばうばばばばー」


「あっはっは、まろんもご満悦っすなー。こーらー、土を食べたらだめっすよー」


「あぶぶぶばうばー」


 まろんちゃんは混沌の大地でもニッコニコだな。


「女たちと赤ちゃんがたくさんやって来たぞ……」


 バララが不思議そうな顔をしてこっちにやって来る。

 すると、双子を抱っこした竜胆と鉢合わせた。


「うわっ、新しい現地嫁なのじゃ! ユーマ! お前はまた節操もなく……」


「のじゃっ娘に戻っている……!!」


「あっ、つい……」


「現地嫁……!?」


 バララが目を剥いた。

 なんて人聞きの悪い。


「そんな意志はない。そもそも俺は極めて奥手な方なのだ……」


「奥手? ユーマ様が?」


「ユーマがねえ、ははーん」


「ユーマは真面目だよねえー」


 サマラ! アンブロシア! そしてリュカ!

 みんなでパスが繋がったから遊びに来ていたのか……。


「ヴァレーリアは仕事だから来れないって」


「あいつこそ真面目だもんな」


「アフリカじゃない」


 ガラガラとベビーカーを押す音が聞こえて、早苗がやって来た。


「こっちの世界、大まかに見ると地球と地形が一緒。灰王の森はやっぱりイタリアよね」


 元自衛官の彼女は、うちの奥さんたちの中で唯一のごく普通の人間だ。

 一応、訓練による自衛能力は持っている。

 しかし普通の人なんだよなあ。


 見識が一般的日本人で、俺とも話が合うのでホッとする。

 亜由美ちゃんはほら、オタク仲間みたいなもんだからな。


「やっぱりそう思う?」


「ええ。エルフェンバインは大きくて、フランスやドイツやスイスやオーストリアやオランダが一緒になっているでしょう?」


「そうそう。そうなー。竜胆は日本だし」


「お? (わらわ)か?」


 (わらわ)っ娘!!

 堪らんなあ。


「アンブロシアはギリシャで」


「あたしかい?」


「サマラはトルコから中央アジアだよな」


「アタシですか! ユーマ様の世界と色々繋がりがあると思うとなんだか楽しいですね!」


「アピャー!」


 サマラと俺の子のシェイラちゃんが、興奮して腕を振り回した。

 おー、よしよし。

 シェイラのほっぺをむにむにする。


 この子は人懐っこくて俺に触られても嫌がらないんだよな。


「多分ねえ、私とサマラとアンブロシアの子どもは巫女になってるでしょ? だから、最初からユーマのことが怖くないみたい。早苗の子の風花と、亜由美のまろんちゃんはユーマと同じ国の子だから違う感じかなあ」


 なるほどなるほど。

 最初の三巫女の子は、俺と親和性が高いわけだ。


「あぶぶあばば!」


「んだーう!」


 まろんちゃんがベビーカーにしがみついてきたので、そこでまったりしていた風花が覚醒した。

 ベビーカーの縁をバンバン叩き始める。


「あらあら、まろんちゃんと遊びたいの? 元気さんだねー」


 早苗がにっこり笑って、風花を地面に下ろした。

 風花とまろんちゃんが、二人で地面の草をぶちぶちむしり始める。

 食べないようにな……!


「なんて大家族だ……。そう言えば一部の部族には、族長が多くの妻を娶る風習がある。族長が女たちを守ることで、部族の子を増やし繁栄させるのだ。そう考えれば、ユーマはお前の部族の長なのだから妻が多いのも当然だったか」


 納得してしまったか……!

 でも、確かにそういうものだと思う。

 俺は色々あって、彼女たちを救ったりした。結果としてみんな俺のところにいるわけだ。


「それで、ユーマはどうするつもりなのだ? 豹の部族を追うのか」


「うむ。そうする」


「よし、私も行こう」


「えっ!?」


 バララの申し出が意外すぎて、思わず聞き返してしまった。

 すると彼女は、当たり前だろうという顔をする。


「鹿の部族は助けられた。次は私がお前を助ける番だ」


「えっ? だってほら、象の部族との戦いで俺を手助けしてくれただろ」


「それは本来私たちの戦いだったものだ。それにお前が加勢してくれたのだろうが。あれは数に数えない」


 ノーカンかー。

 こうして、豹の部族を追うこれからの仕事に、バララが手助けしてくれることになったのだった。


「それじゃあ、今度の仕事には誰が同行する?」


 俺の質問は、奥さんたちに向けられたものである。

 みんな、むむむむっと唸った。

 その中で、スッと手を挙げる人がいる。


 あっ、あなたは早苗さん!

 一番一般的な日本人の早苗が立候補するとは……。


「実は仕事でアフリカまで行ったことがあるの。こっちはちょっと気候が違うかもだけれど、手伝うことはできると思うわ」


「わ、妾も行きたい……」


「ぶーぶー」


「あうー」


「ううう、菖蒲と牡丹は置いていけない……」


 だよねー。

 竜胆はやはりお留守番。

 亜由美ちゃんは便利だから来てほしいのだが……。


「あっしは風花ちゃんとまろんちゃんを一緒に面倒見ないとですなあ」


 こいつ、絶対に来る気が無いな!

 デヴォラはしばらく村に残り、銃やバギーの使用方法を教えていくという。

 すると、今回はバララと早苗と三人で行動か。


「ユーマさん。早苗さんはわたくしに匹敵する銃の腕を持っていますわ。わたくしの得物をお貸ししていますから、存分に頼ってもらっていいですのよ」


「そうか……! 銃を持たせると早苗さん強いからな……」


「日本にいた頃は射撃訓練だけだったんだけどね……。こっちで実戦をやってみると、訓練と全然違っていて勉強になるわ」


 真面目だ!

 ということで。


 バギーに乗って出発する俺たちなのだった。

 アリエルはしばらく、象の部族の集落付近でパスを広げていくと言う話だった。


 どうやら混沌の大地にはエルフがいないらしい。

 許可をもらう必要がないから、パスを繋げ放題だな。


 バギーが疾走していく。

 サバンナっぽい大地である。

 地平線が見えるなあ……。壮観。


「地平線が見えるわね……。本当にアフリカみたいで壮観だわ」


「俺が考えている事と同じこと言った」


「あら、そうだった? やっぱり夫婦だから、私もユーマくんに似てきてるのかも」


 早苗は俺より二つくらい年上なので、唯一俺をくん付けで呼ぶ人なのだ……!

 これはこれで良いものである。


「バララさん、彼と一緒になるなら、色々覚悟しないとだめよ? それはつまり、悪い意味じゃないんだけど……変わり者の仲間入りをしてしまうっていうかね」


「私がお前たちのハーレム入りすると決めつけないでほしいものだが……!!」


「時間の問題ね」


 早苗が俺に囁いた。


「俺もなんかそんな気がした……」


 それと、早苗とこうして少人数で旅をするのは初めてなので、俺が意識してなかった彼女のキャラクターみたいなのがよく見えてくるな。

 こう……お姉さんぶってくる人だな!


 嫌いじゃない。

 嫌いじゃないぞ。


「この先、バララさんはあてがあるの? ひたすら真っすぐ行くといいのよね?」


 現在、バギーを運転しているのは早苗だ。

 俺は運転とかできないからね……。


「ああ。目印がすぐに出てくる。ほら、もう地平線に頭を出した」


「地平線に……? ああ、あれは岩山ね! だんだん近づいてくる……。そっか、暗黒大陸がアフリカみたいなところだったとしたら、平坦なわけがないんだ。あそこも何気にアップダウンがあったもの」


 俺にも分かるようになってきた。

 岩山は、まるで翼を広げた鳥のような形をしている。


「鷲の部族が住処にしている場所だ。我ら鹿の部族との交流もあるのだが、空から来訪者がやって来て以来、没交渉になっている。ここまで旅をするのは、今の時代では危険だったからな。しかし、このバギーという乗り物はすごいな。あっという間に到着してしまった!」


「ええ、これ、下手なオフロードカーよりも性能がいいでしょ? 凸凹道なのにショックがあまりないで、速度も殺されないまま進んでくることが出来たわ。見た目はバギーなのに……」


「何気にSFカーだからな」


「SFカー?」


 この辺のワードには詳しくないか早苗さん!

 そしてバギーは岩山へ。


 近づいてくる岩壁のような姿から、こちらに投げかけられてくる幾つもの視線を感じる。

 鷲の部族とやらが、俺たちを値踏みしているのだろう。


 平和な出会いになるといいな。

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