熟練度カンストの待望者
一旦アジトに戻り、バギーを置いてから一台だけを徴収。
これで向かおうかという話になった頃である。
「やーっと追いつきましたわ」
「おっ、デヴォラ! 戻ってきたのか」
「ええ。近くでアリエルさんがパスを繋いでいますわ。これでレジスタンス? 彼らも灰王の軍の庇護下に入りますわね。侵略開始ですわよユーマさん」
「おいやめろ人聞きの悪い事を言うな」
レジスタンスの三戦士が、ま、まさか!という目になって俺を見ているじゃないか。
「これは俺の嫁の一人のデヴォラだ。象の部族の連中が扱ってた銃があるだろ? あれのスペシャリストだ。最初は金勘定とか組織運営のスペシャリストだと思ってたんだが……」
「若い頃は前線で、狂戦士どもと戦っていましたもの」
「若い頃……? 今はお幾つで……?」
「レディに年を聞いてはいけませんわよ、ユーマさん」
くすくす笑いながら肩を小突かれた。
まあ、アンブロシアの幼馴染なんで、年齢的には俺と同い年くらいだというのは分かるが。
「ということでだ。デヴォラが来たのはとても都合がいい」
「都合がいいのか? ……何と言うか……派手な女だな」
バララが訝しげにデヴォラを上から下まで睨め回している。
「あら、あなただって暗黒大陸の装いなのでしょう? 戦装束にこだわりのお洒落が見えますわよ」
「分かるか? 分かってくれるか? そうかー」
バララが嬉しそうになった。
「あれ? そう言えばデヴォラ、こっちの言葉が分かるのか」
「ええ。南ネフリティスで主に使われている言語と、こちらの大陸の言葉はかなり近いみたいですわよ。イントネーションさえ気をつければ会話できますわ」
俺が蓬莱の地で出会った、南ネフリティス出身の異人たち。
彼らこそがまさに、混沌の大地に住む彼ら鹿の部族に似た容姿の人々だったのだ。
確かに、ネフリティスに同じような人々がいるならば言葉が通じるのも分かるな。
おっと、話が逸れた。
「つまりな、都合がいいというのは、俺がお前たちと一緒に戦うのはなかなか難しい。なぜかと言うと、強さが違いすぎるからだ。ぶっちゃけるとお前たちのペースで戦うと、俺はとてもストレスが溜まる。お前たちを守らねばならないし、力の半分も使えないだろう」
「ユーマさん、敵部族の裏にいる本体を相手取るつもりなのですわよね?」
「そういうことだ。さすがデヴォラは察しがいい……」
「裏にいる……? 空から降りてきた来訪者か」
バララも得心がいったようだ。
三戦士もこれには納得したようだ。
俺の力を間近で見せつけられたからな。
だが、デヴォラが俺にデコピンしてくるのだ。
「あいてっ」
「ですけど、物には言い方がありますわよ? 彼らは味方にするのでしょう? 上から目線で物を言ってどうするんですの。今回のユーマさんはお子様モードなんですの?」
「そう言われると反論の言葉もない」
反省する俺である。
しばらく灰王の森で持ち上げられていて、態度がでかくなり過ぎていたかも知れん。
俺は強いかも知れんが、料理や掃除や家事というものはほぼできないし、未だに水に落ちたら溺れて死にそうになる。
つまり、剣を使うのが宇宙一上手いだけで、他は大したことがないアラサー男性なのだ。
「あっ、俺もうアラサーじゃん」
ちょっとショックを受けたりする。
「ほらほらユーマさん、行きますわよ! 早くバギーに乗ってくださいまし! あ、運転の仕方を教えますわね。これはこうしてこうして」
デヴォラは、バギー二台を徴集して象の部族にカチコミを掛けるつもりのようだ。
運転の仕方を、なぜかバララに教えている。
どういうことだろう。
「わたくしは、こちらのお三方を連れて象の部族と戦いますわ。ユーマさんはバララさんと一緒に、侵略者を迎え撃って下さいませ」
「あ、そういう組み合わせ……」
「精霊の力の補助を得た戦いは、誰よりも得意でしょう?」
「その通りでござる」
俺とデヴォラのやり取りを、じーっと見ていたバララ。
「この男を手玉に取る様子を見て、お前がユーマの妻なのだとよく理解できた」
「お分かりになりまして? うふふ」
なんかデヴォラがちょっと嬉しそうなのだった。
走り出す二台のバギー。
一路、象の部族の集落へ。
途中、バギーが三台やって来たのだが。
「銃を持ちまして? これは狙いさえつければ誰でも相手を屠れる優れた武器ですわよ。狙いをつけるにはこうして……こう!」
運転席から立ち上がり、即座に照星で敵バギーの運転手を捕捉したデヴォラ。
有言実行、ぶっ放した。
バギーは上に幌がないタイプなんだが、前には防弾構造らしきガラスが付いている。
こいつを真っ向からぶち抜いて、運転手の頭をスイカ割りみたいに粉砕したわけだ。
エルド教の手持ちレールガン、半端じゃない火力だな!
移民船団との戦いの時は、ゲイルの上で俺の後ろに乗って、レールガンで宇宙船をガンガン撃ってたからな。
考えてみれば、デヴォラの得物はとんでもない火力の代物なのだ。
続く三戦士も、デヴォラから借りた銃を撃っているのだが……当たらない。
そういうもんだよな。
銃なんて、基本的にクソエイムなのだ。
バカスカぶち当てるデヴォラとか、どこかの二丁拳銃中二病とかがおかしいだけだ。
「とんでもないことになっているな……。一瞬で敵の象を一つ潰したぞ」
バララは驚きと興奮をあらわにしている。
「彼女の射撃は本物だからな。思えば、エルド教の連中は銃が上手いのが多かったな」
俺たちのバギーは後方で待機。
デヴォラが器用そうなナイフ使いのグレイズに運転を任せ、射撃に専念し始めた。
彼女の得物は、両手で支えるライフルタイプのレールガンである。
これの他に装弾数二発のデリンジャー型を二丁袖に入れており、太ももにはハンドガンタイプのレールガンを二丁装備しており、腰には二つ折りにされているショットガンタイプのレールガンを装備しているのを知っている。
ハリネズミじゃん。
ライフルタイプを撃ち尽くして、今度は別のバギーと並走しながら二丁拳銃でバンバン撃っている。
面白いように象の部族の連中が倒れるな。
これを撃ち尽くした頃には、二台目のバギーの上に生者はいなかった。
そして三台目のバギー。
袖口から出てきたデリンジャーで運転手を粉々にした後、腰の後ろから取り出したショットガンで残る象の部族をまとめて血煙に変えた。
「終わりですわ!」
「すげえええええ」
「すごい女だあああ」
「どうしてこんなに当たるんだ……!」
三戦士が戦慄している。
これは、暗黒大陸に技術革新が来るかもしれないな。
手持ち武器よりも銃のほうが強いからな!
そして大陸にはエルド教が広がることだろう……。
デヴォラ、そこまで考えて行動している可能性が高いな。
彼女、エルド教における上位者である導き手という役職である。
エルド教のボスであるマリアに、直接意見できるレベルの実力者なので、俺の妻であることと導き手としてエルド教の魅力をアピールすることを両立するくらいやってのける。
あー。
三戦士がデヴォラを憧れの目で見ている……。
男の子は強い者が大好きだからな。
ちなみにバララはちょっとむくれていた。
「わ、私だって精霊を使えばあれくらいのこと……はできないが、もっと違うことができる……」
「おう。その辺りは頼りにしてる。象の部族も、出ていったバギーが一台も帰ってこないんだ。そろそろ感づいているだろう。つまり、ここが勝負だぞ」
「ああ、分かってる!」
バララが強くアクセルを踏み込む。
バギーが加速した。
うひゃあ、はやあい!
ゲイルがどれだけ加速しても怖くはないが、それはゲイルの事を信用しているからだ。
バララはさっき運転を教わってハンドルを握ったばかりだぞ。
怖い怖い。
助手席で震え上がる俺をよそに、バララはガンガンに加速しながら象の部族の集落へと突っ込んでいくのである。
「あっ! 独断先行してーっ!! ちょっと、追いかけますわよー!!」
後ろからデヴォラの声も聞こえてきた。
仕方ない……。
「バララ! とにかくまっすぐ、ひたすらまっすぐ走れ! 敵は俺が仕留める! 精霊を使おうなんて思うなよ! 初心者がながら運転は危険だからな!」
「分かってるーっ!!」
バララの叫びが返ってきた。
俺はテュポーンを抜くと、赤のテュポーンへ変更……いや待て。
「せっかくだから、この状況に見合ったモードにしよう。大剣になるの? この重量だから大剣になるマテリアル絶対組み込んでるよな?」
恐らく、テュポーンの残る二つのモードは、大剣と双剣。
「テュポーン、大剣モードだ!」
俺は得物を振りかぶった。
すると、三色の装甲が高速で組み変わる。
今度の色は、青一色。
「青のテュポーン! 行くぞ!」
青い装甲に包まれ、そこから白銀の刃が吹き出してくる。
これ、3Dプリンター?
何もない状態から刃がもりもりもりっと作られて来たんだけど。
材料どこから持って来てるの。
「鉄の象の皮が無くなってる!」
バララの悲鳴が聞こえた。
あ、完全に理解した。
周辺の金属を分解して、刃に再構成するのな!
出現したのは、刃渡り2mはある片刃の大剣。
長さ、重さ、ともに申し分ない。
「ユーマ! 突っ込む! 突っ込むから!」
「おう!」
俺はボンネットの上に立つ。
大剣を突き立てるように構えて……。
「こいつが俺たちの角代わりだ! 鹿の部族のカチコミを見せてやろうぜ!」
象の部族戦、ここで決着をつけるぞ。




