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熟練度カンストの行軍者

 嫁会議が開かれている。

 これは、ローザが主催し、俺の今後について話し合う集まりである。


 テーマは、暗黒大陸とやらからやって来た連中と、それへの対策をどうするのか。

 つまり、俺が暗黒大陸に上陸して事態の調査と解決を行うことを、許すかどうかということだ。


「常識的に言えば、既に十一人も子どもがいるんだから、落ち着いて子育てに協力してほしくはあるんだけど」


 元深山二尉こと早苗が、風花を抱っこしながら発言する。

 彼女は常識的な日本人女性なので、あちらの価値観を強く持っているのである。


「ただ、現状だとユーマさんの収入で養われているわけではないし、安心して子育てできるシステムを彼が作ってくれたわけだから、私のこれは感情論なのかなって思う……」


 大人だ!


「大人っすなー。あっしはまあ全然気にしてないんで、あんたの好きにしたらいいと思うっすけどねー。あ、死んだらあっしも凹むので生きて帰ってくるよーに。ねーまろんちゃん」


「あぶぶうばー」


 亜由美に言われて、まろんちゃんが俺に手を伸ばしてわしゃわしゃ動かす。

 亜由美ちゃん似だよなあこの子は。

 リュカいわく、俺そっくりでもあるらしいが。


 もしかすると、俺の人格を色濃く受け継ぐのはこの娘かもしれん。


「あたしは賛成。ユーマが戦わなくなったら、そいつはユーマじゃないだろ。あたしらが惚れた男は、最近みたいに玉座でぐったりしてたり、赤ん坊をあしらえなくてオタオタする男だったかい? あ、前もだいたいそんな感じだったきがするけど」


「そうねー。ユーマ様はちょっと情けないところが素敵なんだよねー。アタシもアンブロシアに賛成するのは癪に障るけど賛成ー」


「サマラ、あんたいちいち絡んでくるね……! 今度こそ決着つけようじゃないか!」


「いいわよ! アタシのシェイラが一番かわいいってとこを見せてやるわ!」


「赤ん坊対決!? いいだろう、受けて立つさね! アンナがどれだけかわいいか分からせてやるよ!」


 元、火と水の巫女はいつもどおりの関係である。

 竜胆は赤ちゃん二人を抱っこしたまま、ニコニコと会議を眺めているばかり。

 子どもが生まれてから、ものすごく丸くなった。


 あ、性格がね。

 体型もちょっと丸くなったけど。


「あー、そっちに行くならパスを繋げたいですよね。一応、部隊を組んでいって、私が後発で動いてパスを作っていく感じで行きましょう」


 アリエルは前と大して変わらない。

 この会議の結論も見えているようで、既に動くプランを考えているようだ。


「じゃあそういうことだね! 私はユーマがしたいようにするといいと思うよ! でもあれでしょ? ユーマは、動く理由がなくて迷ってるでしょ」


 リュカがビシッと俺の内心を言い当てた。


「ご明察ですなあ……。なんでわかるの」


「付き合いが長いもん」


 えっへん、とリュカ。

 ちなみに、リュカとアリエルの子どもたる、ルナとユートは俺を見ると泣くので他の異種族たちに見てもらっている。


「なんだ貴様、未だにそんなことでぐだぐだ悩んでいたのか。貴様はどうでもいいことに首を突っ込み、戦いを始める性分だろう。今更大義名分などで悩むなどらしくもない」


「待てローザ。俺は守る相手を見つけた時だけ戦ってたんだぞ。別に戦闘狂ではない……。いや、この間はかなりスカッとしたけど。おかげでトレーニングを再開してお腹の肉が減ってきたけど」


 俺のお腹の肉減少宣言で、嫁たちがうんうんと頷いた。

 小太りが解消されることは、みんなの利益になるらしい。


「じゃあ、ダイエットのためでいいんじゃない?」


「そんな理由で暗黒大陸に渡ってドンパチするのか!!」


「最初はそんなもんでしょ。それにユーマが行くと、勝手に守る人を見つけちゃうでしょ」


「アタシとか!」


「あたしもだね!」


「ふむ、私もそうなるな。私のために世界を作り変えたのが貴様だ」


「みんなのろけてくる……! はい、私も!」


 竜胆は両手に赤ちゃんを抱っこしているので、挙手できないまま声だけで主張した。


「なるほど!!」


 俺は大変納得する。

 始まりであるリュカがそもそも、世界から迫害されていたわけだ。

 それを守るために俺の戦いが始まった。


「じゃあ、ゆるい感じで出発しようか。ついてくるの誰? ローザとアリエル?」


「あと、まだおっぱいあげなくちゃなんでユートを連れていきます」


「ユートかー。泣かないといいなあ」


「ユーマ! 赤ちゃんは泣くのがお仕事なんだから」


 リュカがもっともなことを言うのだった。

 そして翌日。

 俺が暗黒大陸へ行くための同行者は、もう一人増えることになったのだった。


「わたくしの帰還ですわよー!!」


 エルド教式ベビーカーにデルフィニアを載せて、デヴォラが帰ってきたのである。


「こちらでも話題になっていると思いますけれど、世界はとんでもないことになっていますわ」


「あむあむあむ」


 デルフィニアも赤ちゃん語でおしゃべりをしている。


「はいはい、デルはこっちいこうねー」


 リュカがやって来て、デルフィニアを抱っこした。


「あむー」


 デルフィニアはリュカが大好きらしく、むぎゅっとしがみつく。

 デヴォラは自由になった。


「ありがたいですわ……! さすが筆頭夫人……! それはそうとして」


「おう。世界がとんでもないことにってどういうことなの」


「端的に申し上げるならば、ユーマさんが遭遇した暗黒大陸勢が世界中に出現していますの」


「なんだって」


「もちろん、海が接している場所だけですけれども。我がネフリティスに、アルマース帝国、東方の小国群はかなりのダメージを受けた場所もありますわね。翡翠帝国までは流石に到達していないようですけれど」


「あちこちに勢力を伸ばしていたのか……。少数だったが、あいつらはまあまあやる感じだから、並みの兵士では相手にならんだろ」


「ええ。彼らはエルド教のそれに近い武器と、精霊の力を同時に行使しますの。あれは移民船の技術に間違いありませんわ。だって、暗黒大陸に船が降りた記録はないと、マリア様が仰っておられましたもの」


「移民船の生き残りが、あっちで精霊を奉じる連中と手を結んだわけだな。そして力を手にして侵略を開始したか」


 大体流れが読めてきた。


「大義名分ができたな。世界を救うためだ。これ以上の理由はあるまい」


 ローザが満足げだ。


「それでデヴォラ。貴様がこちらに来たということは、ユーマを連れて暗黒大陸へ向かうことを、エルド教側が考えているということではないのか?」


「ご明察ですわ。見たところ……ユーマさんにローザさんにアリエルさん。そしてわたくしが暗黒大陸へ向かうことになりますわね」


「三人同行かあ」


「あ、私は基本的に後発で、パス作りをメインにしますから」


 つまりアリエルは戦力に数えられないと。

 ローザとデヴォラを連れて行くことになるわけだ。


 二人とも頭脳派なので、頼りになるといえば頼りになる。


「じゃあこのメンツで行くとするか」


 そういうことになった。

 決まってしまえば動きは早い。


 その日のうちに、俺はネフリティス王国へ渡った。

 南国! って感じのところである。


「灰王様~! お久しぶりです~!」


「お、プリムじゃないか。……そのちっちゃいのは何?」


「わたしの子どもです~」


 マーメイドたちのリーダーであるプリムが、人間とマーメイドが混じった感じの赤ちゃんを抱っこしていた。

 人間とマーメイド……?


「フトシと?」


「はい」


 なんとーっ。

 もしかして、ハーフマーメイド第一号ではないのか。


 一歳くらいの年齢らしく、俺を大きな目でじーっと見つめてくる。


「タカプリ、灰王様だよ~」


「はーおうちゃま」


「喋った! タカプリってなに?」


「フトシは子どもの名前をタカシにしようとしたんですけど、私は一応マーメイドの女王ですし、名前の一部を子どもにつけなきゃなんですよね。なのでプリってつけました」


「男の子かあ。じゃあマーマンだな」


「ですね~」


 ネフリティスに来て早々、マーメイドとの再会を喜んでいたのだが、これは理由がある。

 ネフリティス王国とエルド教は、水の妖精族と同盟関係を結ぶことになったのである。


 水上での交易を主とするネフリティスは、海を支配する彼らと仲良くしておいた方が色々と得なのだ。

 そしてエルド教もまた、商売を旨とする教えである。

 同じ理由で水の妖精族は味方につけておきたかったのだろう。


「今度、マリアさんとリヴァイアサンがお茶会をするんですよ」


「凄いことになってる」


「おいユーマ! いつまで油を売っているのだ。船が用意されているのだぞ。こっちに来い!」


 ローザがやって来て、俺の腕を掴んで強引に引っ張っていく。


「じゃあな、プリムー。タカプリー」


 マーメイドの女王と息子に手を振りつつ、エルド教が俺のために準備したという船へ。

 それは一見して……。


「蒸気船だ」


 帆などどこにもない。

 白塗りの船体は何本もの煙突が生えており、後部には水を掻くための車輪がついていた。

 そしてでかい。


「すごい船だ……! なんだこれ」


「ジャイアント・ユーマ号ですわ」


「なにその名前」


「世界を救った英雄の名前ですわよ? あちこちで使われてますわ。あなたがこちらで食事をした店なんか、ユーマブイヤベースとか作って売り出してますわよ」


「俺がブイヤベースになってるみたいじゃん」


 でもユーマブイヤベースは食べに行った。

 店主、絶対俺の顔なんか忘れてるだろうに、長年の親友が帰ってきたみたいに涙を流して喜んで肩を組んできて、ブイヤベースの魚介を倍量にしてくれた。

 美味かったから許す。


 前は漁村にあったと思うけど、都会に進出したらしい。

 たくましい。


「暗黒大陸へ進軍するのはわたくしたちだけではありませんわ。アウシュニヤ王国も報復を行うと宣言しましたわね」


「アウシュニヤ……スラッジか! 懐かしいなあ」


「かの国では、双銃の戦士と正式に契約を結び、暗黒大陸へと派遣したそうですわね」


 この世界で双銃の戦士……!?

 一人しかいないじゃねえか。


 あいつも暗黒大陸に出るの?

 うわあ。


 そんな俺の思いをよそに、ジャイアント・ユーマ号は出港した。

 目指すは暗黒大陸なのである。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 双銃の戦士といえば厨二の✝️クラウド✝️かな!? ソイツだけはリュカ以外の他の嫁より覚えてる やはりキャラのインパクトは大事やな笑
[良い点] おお!デヴォラさん参戦! [一言] デヴォラさんの深掘り回になるんかな? 完全に身内として一緒に行動するのは初な記憶。 ユーマに惚れたきっかけとか馴れ初めとかも明かされると嬉しいです。 一…
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