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熟練度カンストの迎撃者

コミカライズすることになりました!

記念として、第三部を始めます。

毎週更新予定です。

 うちの女性陣がみんな身重で動けなくなったり、育児がスタートしたりと大忙し。

 俺はと言うと、赤ちゃんに近づくと泣かれるのである。


「ユーマはまだ近くに来ちゃだめ!」


「はぁい」


 リュカに遠ざけられて、悲しい顔をする俺。

 ワイルドファイアとの世界頂上決戦みたいな戦いを終えて、一年。


 皆の頑張りもあり、世界は徐々に平穏を取り戻しつつあった。

 そんな中で俺は一人、手持ち無沙汰である。


 俺は戦うべき敵がいないと輝けないタイプの男なのだ。

 我ながら厄介だな。


 砕けたバルゴーンは額縁に入れて床に埋め込んである。

 毎朝これを見て、過去の戦いを思い出す日々だ。


 実務能力のあまりない俺に、ローザは仕事を振ってこない。


「お前はそのままでんと構えていればいいのだ。貫禄を出すために少し太るのもいい」


 などと言われて高カロリーなご飯を出させたりするので、最近ちょっとお腹が出てきた。

 いかんなあ……。

 代謝が落ちている。


 そう言えば俺も、三十が間近か……!


 お腹を擦りながら、家の周りを散歩することにする。


「ユーマ様、見て下さい! シェイラがアタシの手を握ってくるんです! ギャーカワイイー!!」


 サマラが賑やかだ!

 いつも賑やかだが。


 シェイラは俺とサマラの子で、次なる火の巫女。

 ぷにぷにした手で、サマラの指をにぎにぎしているところだ。


 俺が近づくと、目をまんまるにして見つめてきた。

 泣くなよ、泣くなよ……。

 よし、泣かない。


 リュカとの子どもであるルナと、ちょっと前に生まれたばかりのアリエルとの子どものユートが泣く。

 ユートなんか凄く泣く。


 今生まれてる中で唯一の男の子なのに、泣き虫である……!

 いや、赤ちゃんは泣くのが仕事だもんな、うん。


「どうしたんですかユーマ様? あ、ごめんなさい。おっぱい欲しがってるから」


 あっ、授乳が始まった。

 あのサマラが、立派にお母さんをやっている。


 感慨深いなあ。


 元巫女たちは、望めばこの灰王の森に住む連中が育児を手伝ってくれる。

 それでも、できる限り自分の手で育てたいらしい。


「う、うわー!! あっしに抱っこされながらうんこをー!! き、きちゃまー! いや、赤ちゃんだから仕方ないっすな……。おいお前ー! おむつを替えるから手伝ってえー!」


「へい!」


 おお、亜由美ちゃんが赤ん坊のおむつをほどいている。

 手伝いはゴブリンの女子だな。


 大量にうんちをしたらしく、おむつの中身を見た二人が「うーわー」とか言っている。

 平和だ。


 亜由美ちゃんは日本人なので、俺との子どももやっぱり血統的には日本人なのだ。

 うん、普通の日本人っぽい赤ちゃんだな……!


「お、おいユーマさん! ぼーっと突っ立ってないで手伝ってくれっすー!!」


「俺もうんこ付きのおむつを替えるのか! よしきた」


 助力を仰がれれば、お父さんたるもの手伝わねばならん。

 俺はうでまくりしておむつ交換に参戦した。


 赤ちゃんのうんこは不思議なにおいがするのう。


「灰王ともあろうものが何をやっているのだ」


 呆れ声がした。

 ローザである。


 振り返ると、腰に手を当てた彼女が、フンスと鼻息を荒くしている。


「世界を救い、ワイルドファイアを救った男が、赤ん坊のおむつと格闘している場合か」


「だが平和な世界では何もやることはないぞ」


「なかなか凄い事を言うな……。では、世界にとっては凶報、貴様にとっては朗報だ」


 ローザは書類を手にしている。

 木の板に貼り付けられたこれを、パンと叩いた。


「敵が現れた」


 嬉々として俺の部屋……執務室に向かうと、そこにはベビーベッドが何台も並べられており、うちの娘達がすやすや寝ているところだった。

 アンブロシアとデヴォラが、しーっとやってくる。


「今寝たところなんだよ」


「静粛に、ですわ」


 俺とローザで、忍び足で部屋の奥まで行き、テーブルで差し向かう。


「ローザはロリーのこといいの?」


「アルケニーに任せた。六本足が生み出すリズムは、赤子の就寝にちょうどいいようだな」


 割とそこのところはクールなローザなのだった。

 そんなことより、とローザは一枚の紙を取り出す。

 地図だ。


「ディアマンテの沿岸部で、戦闘が発生した。これは既に裏を取ってある。ユーマ、これはどうやら遥か南方の大陸からやって来た何者かが引き起こしたことらしい」


「南方と言うと……俺が行ってない地域だな。ワイルドファイアが、そこに降りた移民船を吸収したとか。もしかすると吸収されてない移民船があって、そいつが攻めてきたのかも知れないな」


「うむ。そして南方大陸には、我々が知るものとはまた違う精霊の力が働いている。シャドウジャックが調べたところでは、なにもないところから炎や水や嵐を呼び出したとある」


「リュカたちと同じじゃないか」


「ああ。精霊を用いた魔法のようなものだろう。だが、複数の精霊の力を、その地に現れた者の一人一人が行使したという。そこまで大きな威力ではなかったそうだが」


「ふむふむ。そいつと、南方大陸の精霊と何の関係があるんだ?」


「南方大陸にいるのは、混沌の精霊だ。混沌の精霊ケイオス。あらゆる現象を再現し、全ての精霊の真似をすると言われている」


「なーるほど。じゃあ混沌の精霊で間違い無さそうだな。それに俺が思うに、そいつらはSFっぽい武器を使ったりしてなかったか? つまり、エルド教の連中が使うようなものだ」


「その通りだ! 使っていたと報告にある。貴様の異世界で得た知識というやつだな」


「ああ。地球にはそういう本やアニメがたくさんあるからな……で、起こったのは侵略か? 南方大陸から攻めてきた?」


「そういうことになる。では現地へ行って確認してみようではないか」


「ローザがやる気だ。ロリーは?」


「娘は離乳食の段階に入っている。乳母もいる。私がおらねばならぬという道理はあるまい」


「そうかー。じゃあ、今回はローザと二人だな」


 ということで。

 俺たちはそそくさと準備をした。


 ずっと平和な日々だったので、久々の荒事の予感にワクワクしてくるな。

 俺もローザも遠足気分だ。


 そう、今の俺たちには義務も責任も無い。

 やるべきことは全て果たしてしまったし、なんなら世界を救いもした。


 人ならざる存在たちは徐々に世界に根付きつつあり、中には人間と交友関係まで築いている種族もいる。

 エルフェンバインでは、王家の親戚筋から、異種族たちに友好的な貴族が次の王になろうとしているという。


 ディアマンテもアルマースも大人しいし、ネフリティスはエルド教からデヴォラがうちに来たことで、縁戚関係にあるような状態だ。


 そう。

 何もすることがなくなったのである!


 嫁たちは育児に張り切っているが、ローザは赤ちゃんは可愛いものの、そこまで入れ込む感じではないとか。

 土の種族を乳母に使い、自分はいつも策謀を巡らせているようだ。

 それがついに結実したと!


「では行ってくる」


「いってらっしゃ~い」


 リュカがにこやかに見送ってくれた。

 腕の中には、かつてのリュカをちっちゃくしたようなルナ。

 指をくわえながら、俺を振り返っている。


 これ以上近づくと泣くので、ちょうどいい距離にいる俺だ。


「ユーマが行くと、絶対に色々起きると思うから、がんばって!」


「おう、頑張るぞ」


 ガッツポーズをして、ローザとともにパスをくぐる。


「そう言えばローザは、巫女としての力は落ちなかったのか?」


「私は特別な巫女ではないからな。実は出産しても力が全く変化しなかった」


「なんだって」


「私も驚いている。なので、貴様に同行するのは私なのだ。けっして、私が暇を持て余していたからではないぞ。それと私もこのパスを独自に研究してな。空からの侵略者との戦いが終わった後の四年間で、シャドウジャックを呼び出すように灰王の軍を何人か召喚できるようになった」


「凄い進化だ……! そんなに暇だったのか」


「貴様が有能な人材を次々に連れてくるから、私の仕事が無くなっていったのだぞ。お陰でこんな技術を編みだすに至った」


 パスを抜けた俺たちの目の前に広がっているのは、海岸である。

 ディアマンテの兵士たちがあちこちを歩き回っている。


 彼らは俺を視認すると、「何者だ!」と誰何した。


「末端までは、ユーマの顔は知られておらぬな」


「俺はモブ顔だからなあ。そこまで覇気がある顔じゃない」


「そうか、仕方あるまいな。おい、そこの。この男は灰王だ」


「は?」


 兵士が訝しげな顔をした。

 そして、俺とローザを見比べて、ニヤニヤしながら歩み寄ってくる。


「お前みたいな冴えない奴が灰王のはず……」


 俺はここで、ちょっとやる気を出してみる。


「ヒャァ」


 俺の剣気に当てられて、兵士がたちまち腰砕けになった。


「な、な、なんだ……」


「信じる信じないは勝手だが、俺とローザはこの地にやって来たという侵略者と戦いに来たんだ。本陣まで連れて行け」


「ユーマ、酷なことを言うな。この男は立ち上がれぬではないか。よし、見せてやろう。私の召喚術を」


 ローザはポケットから、石を取り出した。

 キラキラ光る緑色の石だ。


「風の妖精よ、ここへ。我らの手足となり、働け」


 緑色の石が一瞬強く煌めいた。

 次の瞬間、そこにいたのは小柄な二つの影だった。


「おいおいおい!! 最初の召喚が俺たちかよ!! やはりゴブリンキングたるゴメル様は違うな!」


「はははははは!! 最初の召喚はこの俺、ギヌルだったか! ゴブリンキングなのだから当然だな!」


「なにい!? お前ギヌル! 何言ってやがる!」


「どの口がほざくかゴメル!!」


「やるか!?」


「やるか!?」


「「もがーっ!!」」


 よりによってゴブリンキングのギヌルとゴメルを召喚したかあ。


「……あまり強いものは呼び出せなくてな」


 どうやらローザの召喚術は発展途上のようだ。

 とにかく、ゴブリンキング二人に兵士を担いでもらい、俺たちはディアマンテの戦陣へと参加するのだった。


 何が起ころうとしているのだろうなあ。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 第3部やったぜ!! コミカライズも楽しみにしています!!
[一言] 改めてサブタイみると混沌者編か 全く関係無いけど アナザーエデンの混沌みたいなヤバいクラスのラスボスが敵に出てきたら激アツ展開 うろ覚えだけど2部初めくらいで擬似時止め?みたいな敵も居た…
[良い点] 第三部?! すっごい嬉しいです… [一言] コミカライズおめでとうございます! ユーマの一人称のお話がどんな漫画になるか楽しみです。 あと、現在のユーマの嫁さん状況のまとめが欲しいです……
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