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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第6章 塔の地脈の力を使ってみよう
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(3) フリエ草

新しい収入源の確保です。


本日2話投稿の2話目です。読み飛ばしにご注意を。

「・・・フリエ草?」

 その日、考助はシュミットからある提案を受けていた。

 フリエ草を塔の階層のどこか冒険者の行けるところで、群生させることが出来ないかと。

「はい」

「ああ、俺も聞いたことがあるな。なんでも高く取引されるとかで、群生地を見つけた場合には、かなりの懸賞金がかかってるとか」

 相席していたガゼランも話に加わってきた。

「ええ。ある薬の調合に使う草なんですが、生えてる場所が限られていて、通常は流通されていない草なんです」

「・・・ん? 流通していないのに、薬の素材だと分かっているんですか?」

「レシピ自体は、薬剤師の間では一般的に知られている物だそうです」

 一般に知られているのに、流通してこないということは、何かの事情があるということだ。

「・・・何か、胡散臭いんですが?」

「いや、大した話じゃなかったはずだぜ。確かその草が生えている場所が、限られた場所にしかないとかだったはずだ」

「ええ。そうです。元々は、南大陸に普通に生えていた草なのですが、冒険者たちの乱獲で激減してしまったとか」

 シュミットの話によると、冒険者が薬草の類を採取する際には、ある一定数以下は採らないということになった、原因の一つとのことだった。

 現在フリエ草が採れる地域では、自由な採取自体が禁じられていて、厳格な管理の元に採取が行われているそうである。

「・・・話を聞く限り、別の場所から採取できるようになったら、変な恨みを買いそうですが?」

 考助のその疑問には、シュミットが首を振った。

「いいえ。本当ならそういう事もあり得るのでしょうが、この草の場合はそう言うことはありません」

「・・・なぜ?」

「フリエ草を調合した薬を管理している国は、スミット国というのですが懸賞金をかけているのが、この国なのです」

「・・・どういうこと?」

 本来ならば、薬の利益を独占しようとするのではないのだろうか?

 ましてや、管理しているのが国家というのなら猶更である。

 考助のその疑問に答えたのは、当然ながらシュミットだった。

 

 なんでも、その薬で治せる病気というのは、南大陸特有の風土病のような物であるとのことだ。

 フリエ草が採れていた時は、普通に調合してその薬で症状を抑えていたそうだが、現在流通している薬の数では、一般人にまで回せるほどの数が作れない。

 その風土病は、死者が出るほどの病気ではないのだが、薬で抑えられるのと抑えられないのでは、体調的にはかなりの差があるとのことだった。

 唯一薬を作れるスミット国には、薬を回すように様々な所から声が届いているのだが、国内に回す分だけで手一杯な状況だそうだ。

 当然ながら国内だけで回していては、(自業自得とは言え)他の国からの批判にさらされるので、国内の分を犠牲にしてまである程度の量を国外分として確保しているそうだ。

 そうすると当然、国内からも批判がくるわけで、完全に板挟みの状態になっているのである。


「・・・はあ、なるほどねぇ」

 それらの説明を聞いた考助も、納得して頷いた。

「早い話が、その国一国だけでは、独占して利益を得るだけの数が作れないというわけだ」

「ええ、そうです。フリエ草の群生地が無くなった時には、他の国でも栽培等できないか試したんですが、ことごとく失敗だったそうです」

「・・・なるほどねぇ。・・・ガゼラン、そのフリエ草は今のところ見つかっていないの?」

 もちろんこの質問は、塔の中では見つかっていないのか、という問いである。

「ああ、聞いて無いな。ただ、そのフリエ草ってやつ自体、今の冒険者にとっては見たこともないようなシロモノだ。たとえあったとしても見逃してる可能性はあるぞ?」

「そうだよねぇ。・・・うーん。といっても塔の階層に何が分布してるかなんて細かくは分からないからなぁ・・・」

 その言葉に、シュミットとガゼランはがっかりしたような表情をした。

 もし見つけることが出来れば、クラウンの新たな収入源に出来た可能性があるのだから当然だ。

「ただ、ちょっと別の方法で確認してみるかな?」

 考助には、確認する心当たりが一つだけあった。

「本当ですか・・・!?」

「まあ、向こうには事情があるから、きちんと答えてくれるかは分からないけどね」

 考助は、エリスの顔を思い浮かべながら、そう答えておいたのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 というわけで、シルヴィアを通してエリスに聞いてみたところ、きちんと答えが返ってきた。

 それは、塔には生えていないが、塔の外の麓の所には生えているというものだった。

 そんなわけで、考助は転移門を使ってさくっと入口に移動して、麓に来ていた。

 今回連れてきたメンバーは、コウヒとミツキ、コレットとシルヴィアだ。

 塔の麓は、それなりに高LVのモンスターが出てくるので、コウヒとミツキは絶対に付いてくると言い張った。

 コレットに関しては、薬草に詳しいエルフであることを期待して連れて来た。

 シルヴィアは、エリスを期待したのである。

 ちなみに、最近のシルヴィアは、神具を持ち歩いていれば、特に集中する必要もなくエリスの言葉を受け取れるようになっている。

 エリス曰く、短い時間でも接続し続けてきたおかげだそうである。

 

 流石のコレットも、フリエ草自体は知らないとのことだったので、シュミットから受け取ったフリエ草の特徴が描かれた絵図を渡してある。

 時折襲ってくるモンスターを、(コウヒとミツキが)振り払いながら塔周辺の散策を行う。

 半日ほど散策を行いながら塔の周辺を回っていると、コレットがついに目的のフリエ草を見つけることが出来た。

 念の為、考助も左目で確認してみるが、間違いなくフリエ草と出ていた。

 見つけることができれば、あとはコレットの作業だ。

 塔の階層に根付くことが出来るように、フリエ草を採取する。

 あとは、塔に戻って階層に植えるだけである。

 ちなみに、植える予定になっている階層は、第二階層とエルフの里だ。

 第二層は、いずれ冒険者が採取しに来ることが出来るようになることを期待している。

 エルフの里は、コレットの希望だった。

 フリエ草を使って、エルフが使える薬を開発できないかと考えている。

 そういうわけで、フリエ草を群生するようにするために、ある程度の数のフリエ草を、枯れないように採取した。

 その後は塔に戻って、まずは第二層に植える。

 前もってモンスターに荒らされないように、結界を張ったので、その中に入るよう植えている。

 その後は、エルフの里に行って、フリエ草をエルフたちに渡した。

 場所やその他は、彼らにお任せである。

 これに関しては、コレットも口を出すことはしない。

 というよりも、わざわざ口を出すまでもなくちゃんとした場所に植えてくれると分かっている。

 

 それぞれの階層にフリエ草を植えたわけだが、予想外の嬉しいことが起こった。

 外部から持ち込んだフリエ草が、デフレイヤ一族のファミリアの秘宝と同様に、外部持ち込み品として登録されることは予想していた。

 ところがそれだけでなく、他の草花と同じように、群生地として設置することが可能になった。


 名称:フリエ草の群生地

 設置コスト:10万pt(神力)~

 説明:フリエ草の群生地。設置する広さによってコストが変わる。外から持ち込み根付いたことで、登録された。

 

 設置コストとしては、他の草花の群生地と同じコストだ。

 どれくらいの広さになるかは実行してみないと分からないため、すぐに設置してみた。

 場所は第二層の結界を張った場所だ。

 他の草花で必要な物もあるかも知れないので、とりあえず最低の設置コストで設置した。

 それでも結界より広い面積に設置されたようだった。

 これでフリエ草の群生地が出来たので、今後この辺は冒険者でにぎわうことになる。

 といってもフリエ草の分布が広がるかどうかは、分からないのでどう採取していくかは、任せてしまった方がいいだろう。

 今後この群生地をどう扱うかは、クラウンに一任する(丸投げともいう)ことにした考助であった。

第五層より下は冒険者たちにはほとんど攻略されていません。

下に行くほどモンスターが弱くなるので、さほど重要と思われていないためです。


2014/5/24 誤字修正

2014/6/14 誤字訂正

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