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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(5)里の立ち位置

 召喚されてきたクラーラを見て、考助はふと疑問に思ったことは聞いた。

「ところで、今夜はどうするの?」

 考助たちは、案内された屋敷に泊まることになっている。

 ただし、考助に召喚されたクラーラは、長い時間いれるかどうかは分からないのだ。

 だが、そんな考助に、クラーラが安心させるように微笑んだ。

「あら。心配しなくてもいいわよ。今回はしばらく一緒にいれるから」

「あ、そうなんだ」

「そうなのよ」

 考助の言葉に、クラーラはすぐにそう答えた。

 

 この時、考助とクラーラはごく普通に話をしていたが、それを聞いていたシュレインたちは内心で焦っていた。

 その心境は、神とずっと一緒に行動するのか、というものだった。

 考助も神の一柱なのだが、やはり受ける印象や力というのは、まったく性質が違っている。

 むしろ、考助が平然と女神と向かい合って話をしているところを見るたびに、やはり考助は神の一柱なんだと思えるほどだ。

 考助以外のメンバーが驚き、焦るのは当然のことといえる。

 

 そんな周囲の状況を余所に、考助とクラーラの話は続いていた。

「泊まるのはここだろうけれど、部屋の準備とかは大丈夫なの?」

 考助がそう問いかけると、クラーラは任せてと言わんばかりに頷いた。

「前もって知らせておいたからね。その辺はばっちりよ」

「ああ、裏で動いているってそういうことか」

 エリスとの会話を思い出した考助は、そう言いながら頷いた。

 

 考助は、イグリッドの故郷に呼ばれることに神々が動いているということは知っていたが、まさか直接神が降臨して一緒に行動するとは考えていなかった。

 逆にいえば、それだけ神々が今回の件を重要視しているということになる。

 さらに、神威召喚を行った考助は、別のことにも気づいていた。

「――やっぱりここって、アースガルドとは別の世界?」

「あら。どうしてそう思うのかしら?」

 考助の問いかけに、クラーラは面白そうな顔になってにこりと笑った。

 

 そのクラーラの顔を見てやっぱり合っていたと確認した考助は、小さく肩を竦めながら答えた。

「なんとなく?」

 こればかりは、実際に言葉にして説明することは難しい。

 神威召喚を行う際は、魔法陣と呪文を併用して行うのだが、今の考助は状況に合わせて無意識のうちにそれを変化させている。

 流石はその道の神様といったところなのだが、それを言葉で説明しろと言われてもなかなか難しい。

 そもそもの基礎となる神威召還を理解していないと、いくら説明をされても理解できないのだ。

 ちなみに、シルヴィア辺りは以前考助から神威召還について聞いていたこともあるが、ほとんど理解できずに終わっている。

 

 考助の返答にクスリと笑ったクラーラは、一度だけコクリと頷いた。

「まあ、そういうことね。といっても、塔の階層の違いみたいな感じかしら?」

「ああ、そういうことか」

 以前のことだが、アスラからアースガルドは塔での階層結合のようなことを行っている世界だということは聞いたことがある。

 そう考えれば、別の階層のような世界があってもなんの不思議もない。

 さらに、その階層とアースガルドが繋がっていることも、おかしなことではないはずだ。

 塔に転移門というものがある以上、それと似たようなものがあると考えればいいのだ。

 

 考助がそんなことを考えていると、クラーラがいることに慣れたのか、シルヴィアがふと思い出したように言った。

「そういえば、天翼族も同じような話をしていましたか・・・・・・?」

「そういうことね。まあ、あっちはイグリッドほど交流はないけれど」

 シルヴィアの疑問に、クラーラはそう答えた。

 それを聞いた考助は、塔にいるヴァンパイアとエルフのことを思い浮かべた。

 ヴァンパイアはある程度外部との交流もあるが、エルフはほとんど交流を行っていない。

 それをイグリッドと天翼族に当てはめると、前者が塔でいうヴァンパイアで、後者はエルフに当てはまる。

 

「わざわざ女神たちが動いているのは、そういう事情があったから?」

 考助がそう聞くと、クラーラは一度だけ頷いてさらに続けた。

「それも勿論あるけれど、本題は別ね。というか、それくらいだったらわざわざ私が出てくる必要もないと思わない?」

「まあ、確かに」

 クラーラからの突っ込みに、考助はそれもそうかと頷いた。

 天翼族の例もあるのだから、こうして現地に来る必要はなく、素直に言葉だけで説明をすればいいだけだ。

 逆にいえば、考助たちをこの場所まで呼んだということは、それをしなければならない理由があるということになる。

 

 考助には、それがなにかは今のところまったく思い当たることがない。

 勿論、クラーラもそれが分かっていて、敢えて隠しているのだ。

 この先、一体なにがある(起こる?)のかと、考助は楽しそうにしているクラーラを見ながらそんなことを考えるのであった。

イグリッドのあの謎の儀式は、転移門(のようなもの)を通るためのものだよー。

――という話でした。


今回は非常に短いですが、きりがいいのでこの辺で。


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