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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(3)ひとつめの森に侵入

 浮遊島へと向かった考助は、早速エイルから話を聞いた。

 その話で、浮遊島が侵入できない森林地帯は、三か所あることがわかった。

 そして、考助から話を聞いたエイルは、とある提案を考助にしていた。

「本当に浮遊島ここを拠点にしてもいいの?」

「勿論です。最近になって我々も飛龍に騎乗出来る者が増えてきました。コウスケ様がお姿を隠すのであれば、目くらましにちょうどいいでしょう」

 エイルが提案した内容とは、浮遊島を拠点にして、飛龍を使って大陸内を移動するということだった。

 たとえ浮遊島から飛龍を使って飛び立ったとしても、天翼族の誰かではないかという言い訳ができるため、ちょうどいい目くらましにできるのだ。

 考助にとっては、これ以上のないあり難い申し出だった。

 

 ただ、そこまで天翼族にお世話になってもいいものかと悩んだ考助だったが、結局お願いすることにした。

 悩む考助を見て、エイルが余計なことを言ったかと、不安そうな顔になっていたのが決め手だった。

「あ~、そういう事なら、お世話になろうかな?」

 考助がそう答えると、エイルはホッと安心した顔になった。

「ありがとうございます」

 そう言って頭を下げて来たエイルを見て、考助は世話になる方が頭を下げられるのはおかしくないかと考えていた。

 その二人の様子を見て、一緒に着いて来ていたフローリア、シルヴィア、ミツキが笑っていたのだが、考助は見えなかったことにした。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 浮遊島という拠点を得た考助は、早速ひとつめの森の調査を始めた。

 といっても、コレットを除いて、考助たちは木々に詳しいわけではない。

 一応、コレットからは、もし本当に神樹があればすぐにわかると言われていたが、それでも不安はある。

 そもそも、広い森の中で、たった一本の木を探し出すのだから、森になれていないと見つけるのが難しいのはわかり切っていることである。

 それでもコレットを連れてきていないのは、やはり子供たちのことがあるからだ。

 

 まずは自分たちだけで調査をすることになった考助たちは、一応飛龍で森へ突入をしようとした。

 だが、やはりというべきか、そう甘くはなかったようで、

「う~ん。やっぱりだめか。近くの適当なところで降りて、歩いて入るしかないね」

「そうだな」

 考助とフローリアは、神力念話で会話をしながら、すぐにそう決断した。

 入れないとわかっていて、無駄に空を飛び続けていても仕方ない。

 

 幸いにして、さほど遠くまで飛ばなくても、飛龍たちが降りられそうな場所はすぐに見つかった。

 そこへ降りた考助は、コーを撫でながら言った。

「魔物とか出て来て鬱陶しいと思うから、空を飛んでいても良いからね」

「ギャオ!」

「呼んだら出来るだけ早く戻って来てね」

「ギャオ!」

 考助の言葉に、コーははっきりとそう返事をしてきた。

 言葉が通じているのかは分からないが、これまで一度も言った通りにならなかったことはないので、考助は安心して頷いていた。

 

 考助たちが下りると、飛龍たちは早速浮遊島がある方向へと飛んで行った。

 飛龍の速さであれば、今浮遊島がある場所へはそこまで時間がかからないので、戻ったのかと思われる。

 あるいは、食いでがある狩りにでも向かったのかもしれない。

 それは確かめようがないので、考助たちはあまり気にすることなく目的の森に向かって歩き始めた。

 

 

 目的地に向かって歩き始めて数十分、ようやくミツキが声を掛けた。

「そろそろこの辺りからのはずよ?」

 ミツキの言葉で、ようやく考助は侵入不可地域に近付けたことがわかった。

 いくら異世界生活が長いとはいえ、こうした生活していくうえで身に付けていく感覚的なものは、未だ以前と変わっていないのだ。

 それは、城の中で暮らしてきたフローリアも同じで、かろうじて冒険者生活をしていたシルヴィアが、ある程度身に付いている程度である。

 そうなると、やはりこういった感覚があるのは、ミツキなのだ。

 

 ミツキに声を掛けられた考助は、一度そこで立ち止まって周囲を見回した。

「・・・・・・うーん? 結界のようなものがあるとは思えないけれどなあ?」

 浮遊島や飛龍が入れないことを考えれば、侵入を阻害するための何かがあるのは間違いない。

 結界があれば、考助でもわかるのだが、少なくとも一目見た限りでは、そんなものがあるとは思えなかった。

「エルフの森のようになっているのでしょうか?」

 昔、考助がエルフの森を訪ねた時も、同じようなことを言っていたことを思い出したシルヴィアがそう聞いて来た。

 エルフの森は、世界樹が作った魔法的な結界にあわせて、木々の配置などを利用した自然の結界を作っていた。

 

 その問いに、考助は首を傾げながら答える。

「それだけだったら浮遊島や飛龍で入れないってことはないと思うんだよね」

 単純に自然の配置だけで惑わしているだけなら、浮遊島や飛龍が物理的に外(上空)から入れなくなるなんてことは起こらない。

 物理的な侵入が阻害されているとなると、やはり魔法的な結界があるのが普通だというのが考助の考えだった。

 

 考助はそんなことを言いながら、これ以上ここで考えていても仕方ないかといってから歩き始めた。

 慌ててそれにミツキが続いた。

 考助に何かあっては大変なので、すぐに対処できる距離にいるのがミツキの役目なのだ。

 それをシルヴィアやフローリアは当たり前のように見ながら、少しだけ離れて後からついていく。

 普通は、自ら先頭に立って歩かないのが正解なのだが、そんなことは考助には関係が無い。

 それもまたいつも通りのことなので、誰も突っ込まないのである。

 

 

 森の奥に向かって歩き始めた考助だったが、すぐに再び首を傾げることになった。

「もう結界の中に入っているはずだよね?」

「・・・・・・そのはずなんだけれど・・・・・・」

 考助の疑問に、ミツキも首を傾げながらそう答えた。

 二人が揃って首を傾げているのは、既に浮遊島や飛龍が空から侵入できない場所に入っているはずなのに、歩きだと何事もなく進むことが出来ているためだ。

 

 そこにあるはずだと予想していたものがないと、拍子抜けするよりも先に、何故という思いのほうが先に来るらしい。

「うーん・・・・・・。歩きでたどり着けってことかな?」

 腑に落ちない顔で首をひねる考助に、後ろから着いて来ていたフローリアが苦笑しながら言った。

「まあまあ。まずは何事もなく入れたのだからいいではないか」

「そうですよ。余計な手間が省けて良かったではないですか」

 フローリアに続いてシルヴィアもそんなことを言ってきた。

 

 考助は、その二人に苦笑をして見せてから、一度だけ首を左右に振った。

「いや、それはその通りなんだけれどね。実際に飛龍たちが入れていない以上、絶対に何かがあるはずなんだよね。それが見つからないとなると・・・・・・」

「あとでなにかが隠されている可能性があると?」

 後追いでそう聞いて来たフローリアに、考助は頷き返した。

「上空から探されるのを防ぎたいだけなのか、地上からの侵入にも対処しているのか。とにかく、まだまだ油断は禁物だってことだね」

 考助がそう言うと、フローリアとシルヴィアも頷いた。

 元より、ふたりともそのつもりではいたのだ。

 先ほどの台詞は、あくまでも今の状況を冷静に判断した結果の言葉だったのだ。

 考助もそのことは分かっているので、とにかく進もうかと、先を急ぐのであった。

タイトルは「ひとつめ」となっていますが、三つすべてに行くかは不明です。

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