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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(1)トワの確認

ここから第13部第3章の開始になります。

 考助たちは、名もなき店の出店が終わってからしばらくの間は、何事も起きない穏やかな生活を送っていた。

 時折、暇を持て余して他大陸の適当な町に遊びに行ったりはしていたが、これといって重要な事件が起きるなんてこともなかった。

 そうこうしているうちに、ミクたちの学年がひとつ上がり、考助にとっては初孫であるトビが学園に入学した。

 勿論考助は入学式に顔を出したが正体は完全に隠して、トビと会ったのも会場ではなく、管理層で親子ともどもと対面していた。

 そのときは、特にトワからも特別変わった話もなかったので、孫の入学を喜んだだけで終わったのだが、騒ぎは入学式から二カ月経った頃にやってきた。


 その騒ぎを持ってきたのは、ルカとトビを一緒に連れて来たトワだ。

「――で? 珍しく少し慌てているみたいだけれど、何があったの?」

 トワの顔を見るなりそう言った考助に、ばれていると思っていなかった当人は、少しだけ虚をつかれたような顔になって言った。

「まずはなにも聞かずに、これを見ていただけますか?」

 トワがそう言って差し出してきたのは、数枚の紙が重なっている書類だった。

「なんだ、これは? 何かの魔道具の設計図か?」

 考助の横から顔をのぞかせてそう言ったのは、考助が呼んでいたフローリアである。

 

 そのフローリアを余所に、トワが出した設計図を見ていた考助は、紙をめくるごとに真剣な表情になって行った。

 その顔をみて、フローリアも何かがあると気付いたのか、黙って様子を見ていた。

 そして、最後の紙に書かれていることを上から下まで確認した考助は、その紙だけをフローリアに差し出した。

「フローリアはこれだけ見れば概要が分かるようになっているよ」

 わざわざ設計図が上になっていたのは、トワが最初から考助に渡すつもりで持ってきたからだ。

 フローリアには、設計図を見せるよりも、概要を見せた方が早い。

 

 概要が書かれた紙を上から下まで見たフローリアが、真剣な顔になってトワを見た。

「・・・・・・本当なのか、これは?」

「いや、本当に実現可能かどうなのか、私には判断がつかなかったので、父上に確認しに来たのです」

 トワがそう言ってようやくそのことに思い至ったのか、フローリアが嗚呼と納得した顔をしていた。

 フローリアにしては珍しく察しが悪いやり取りだった。

 それほどまでに、トワが持ってきた案件が、フローリアに衝撃を与えたということになる。

 

 母子のやり取りを見ていた考助は、視線をルカに向けた。

「これは、ルカが考えたの?」

 考助がそう問いかけると、ルカは首を左右に振った。

「いいや。僕が考えたのは魔道具のことだけ。発想はほとんどトビがしていた」

「なるほどね」

 ルカの答えに、考助はトワがなぜこの場にトビを連れて来たのか理解して頷いた。

 考えたのがトビで、実現可能なようになるように技術で落とし込んだのがルカとなれば、両方が必要になるのは当然だった。

 

 頷いている考助の顔を見て、トワが確信したように聞いて来た。

「それで、本当に実現可能なのですか?」

「それは私も知りたいな」

 トワの問いに食いつくようにして、フローリアも考助を見て来た。

 見れば、ルカやトビも期待するように考助を見ている。

 自分たちが考えた魔道具が、本当に実現できるのか、気になっているのだ。

 

 気持ちとしてはよくわかる考助は、ルカとトビにニヤリとした笑みを浮かべた。

「まあ、よく考えたと褒めてあげたいね」

「と、いうことは?」

 期待するように自分を見て来たルカに、考助は頷いた。

「単に魔道具として見るだけなら、十分に実現可能だと思うよ?」

「魔道具として・・・・・・?」

 その返答に一瞬喜びかけたトワだったが、すぐに考助の微妙な言い回しに気付いて顔をしかめた。

 魔道具としてもなにも、魔法陣を多用して作られている道具なのだから、そんなことは言われなくてもわかっている。

 逆にいえば、そういう微妙な言い方をしなければならない理由があるということだ。

 

 トワが考助にその意味を聞こうとした瞬間、もう一度概要を見ていたフローリアが聞いた。

「トワ、このことを知っているのは誰だ?」

「え? それは、ここにいる者たちだけですが?」

 設計図はルカがトビから話を聞くたびに書いていた。

 没になっている設計図に関しては、他人に見せるようなことはルカは絶対にしない。

 それが考助の教えであるし、なによりも開発段階の設計図を盗まれれば、ライバルに出し抜かれる可能性もある。

 完成品で公表する意思がないものは、徹底的に隠すように教え込んでいるのだ。

 

 トビに関しては、あくまでも思いついたことを口頭でルカに説明するだけだったので、メモなどを見られるようなことはない。

 ひょっとしたら侍女がふたりの話を聞いたりしていたかもしれないが、王族付きの侍女がその辺のコンプライアンスを破るとは思えない。

 たとえ破ったとしても、ばれた場合には厳しい処罰が待っている。

 設計図以外の概要は急遽トワが思考を整理するためにまとめたものなので、誰かに知られているということはないはずだった。

 

 トワの答えを聞いたフローリアが、安心したような顔で頷いた。

「そうか。それはよかった。下手に希望を持たれると、とんでもないことになるからな」

「・・・・・・ということは、やはりなにか問題が?」

 トワがそう聞くと、考助とフローリアは一度顔を見合わせた後に、同時に苦笑した。

「こらこら。私でも気付けたのだから、トワにも気付けるはずだぞ? 夢が実現しそうになって、頭が回らなくなったか?」

 揶揄うようにして言ったフローリアに、トワが慌てて概要を見直し始めた。

 フローリアがわざわざそんなことを言うということは、なにかを見落としているということになる。

 

 これまでの会話から無理だということが分かったルカとトビも、不思議そうな顔をして考助とフローリアを見ていた。

 その顔には、なぜ駄目だと言われているのがわからないと書いてある。

 一通り書類を見直していたトワは、諦めたように首を振った。

「・・・・・・わかりません。何が問題なのでしょうか?」

 そう聞いて来たトワに、考助が苦笑しながら答えた。

「いや、落とし穴といえば落とし穴なんだろうけれどね。その魔道具、確かに実現しようと思えば出来るけれど、政治――領地経営的には不可能なんだよね」

 

 ルカがトビの発想をもとに作った魔道具というのは、簡単に言えばデフレイヤ一族が自分たちの里を守るために使っている秘宝と同じものだ。

 すなわち、魔道具を中心に結界を張って、モンスターの侵入を防ぐのだ。

 勿論、秘宝のように何もしなくても勝手に、しかもずっと効力を発揮するような物ではなく、魔力の補充を必要としている。

 考助が問題にして、フローリアがすぐに気付いたのは、その部分だった。

 要するに、魔道具としての効力を発揮するためには、それなりの魔力を補充する必要がある。

 

「――というわけで、この魔道具を作ったとして、どこにどうやって置いて使うつもりなのかな?」

「そ、それは勿論、大陸の内陸部に・・・・・・」

 そこまで答えたトワが、ハッとした表情になって、すぐにがっくりと肩を落とした。

「そういうことでしたか。・・・・・・こんなことに気付けなかったとは」

「まあまあ、そう落ち込むな。話を聞いているうちに、期待が大きくなって気付きにくくなっていたのだろうな」

 そう言ったトワの肩をフローリアがポンと叩くのであった。

前回から少し時間が進んで、トビの入学の年になりました。

ミクが二年生、セイヤ&シア組が三年生になります。


そしてなにやらルカとトビで魔道具の構想を練り上げていました。

二人の魔道具に関する能力は、ルカ:実現力(魔法陣を作る力)>道具としての発明(発想)力で、トビはこれの逆になります。(今のところは)


なぜ駄目なのかは、次話で詳しく書きます。

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