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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(4)ピーチの活躍

 玄関先でコレットと一緒に子供たちを見送ったピーチは、家に戻るなり言った。

「それじゃあ、行ってきますね~」

「ハイハイ。いってらっしゃい」

 コレットがそう言うと、ピーチはスッとその姿を消した。

 目の前で行われているはずなのに、コレットにはピーチが隠密魔法を使ったことがまったく分からなかった。

 今も、まだその場にいるのか、既に移動してしまったのか、さっぱり見分けがつかない。

「やれやれ。また磨きがかかっている気がするんだけれど?」


 コレットだって、精霊術師としてみれば、ほとんど他の追随を許さないほどに抜きんでた実力を持っている。

 それでも、コレットからピーチを捜すのは不可能だった。

 というのは、ピーチが姿を消した瞬間、コレットが見ることが出来ている精霊たちが慌て始めていたからだ。

 要するに、ピーチは精霊の目さえも欺いていると言っていい。

 もしこんな話を他ですれば、そんなことが出来るはずがないと鼻で笑われるレベルなのだが、実際に目の前で行われているのだから否定のしようがない。

 

 目の前で行われた非常識にコレットは、

「ピーチの目を逃れられる存在がいれば、それこそ驚きなんだけれど……まあ、いないでしょうねえ」

 そう呟いて家のリビングへと向かった。

 ――出来ることならピーチに目をつけられるような組織が出ないようにと祈りながら。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 コレットの目の前で姿を消したピーチは、サクッと短距離転移をしてから子供たちがいるはずの方向へと移動し始めた。

 魔法が不得手だったピーチだが、短距離転移くらいは姿を消しながら使うことができる。

 もっとも、こんなことができるようになったのは進化してからのことなので、これも考助の加護の恩恵だとピーチは考えている。

 実際には、進化をしていなくてもピーチが努力を続けていればいつかは出来ていたことだろうが、考助の加護のお陰で時間が早まったのは確かなので、完全な間違いでもない。

 

 それはともかく、姿を隠しながら子供たちに追いついたピーチは、同じように学園への道を歩きながら、周囲を見回した。

 ミクが違和感を感じたのが学園からの帰りだったので、行きの道にいるかどうかは分からない。

 それでも『いない』ということがわかれば、それはそれで一つの収穫なのだ。

 勿論、たった一度の見張りで結論付けるわけではないのだが。

 

 辺りを確認したピーチは、ざっと見た感じで数人の見張りが付いていることに気が付いた。

 ただし彼らは、ミクが言っていた「違和感」ではないことは明らかだ。

 そもそもピーチやコレットの子供たちは、考助の実子なのだ。

 その動向が注目されないはずがないので、こうした見張りが付いているのは当然なのだ。

 

 ミクもそのことは十分にわかっている。

 そのため、ミクが言った「違和感」というのは、今いる見張りたちとは別の存在だということだ。

 それだけでもピーチが警戒するには十分すぎるほどの情報だった。


 だからこそ、こうしてピーチ自ら表(?)に出てきているのだが、少なくとも今回はその意味がなかったようだった。

「……どうやらいないようですね」

 ミクたちが学園に向かう間、つかず離れずの位置でずっと見張っていたピーチだったが、特に変わったものは見つからなかった。

 ここで分かり易く、見張りについている者たちよりも、さらに上の実力者とかがいてくれれば良かったのだが、そう簡単にはいかないようだった。


 この時点でピーチは、今回の件が長期戦になるのではないかと予想していた。

 もし本当にミクの感じた違和感が、実力者の影とかであれば、こんなところで姿を見せるほど愚かではない。

 ピーチのことに気付いていなかったとしても、ほかの見張りたちの視線もあるのだから、容易に気取られるような真似はしないだろう。


 そもそもミクが「違和感」に気付けたのも、屋台という餌が用意できたからではないかとピーチは考えていた。

 敢えて自分の存在をミクに気付かせたのかは分からないが、屋台に意識を向くように仕向けた可能性はある。

 もしそうだとすれば、相当の実力者ということになり、たとえピーチであっても簡単には見つけることが出来ないだろう。

 そうした諸々のことを含めた意味での長期戦ということになる。

 とはいえ、ピーチも含めた闇の者たちは、仕事上、そうした状態になることはごく当たり前にある。

 ピーチもこの件では、じっくりと腰を据えて取り掛かるつもりだった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 朝の通学時には何の確認もできなかったピーチは、学園内には入らずに一旦屋敷へと戻った。

 相変わらず監視は学園内でも続いているようだが、それは大した問題ではない。

 彼らがどんなやり取りしているかは、一族でも把握しているので、ピーチが関わる必要はないのだ。

 屋敷に戻ったピーチは、昼食を取り終えてから再び外へと出た。

 今度は姿を消さずに、堂々と道を歩いている。

 目的地は、ミクたちが立ち寄ったという屋台である。

 

 どの日に屋台を出しているのかは、ミクたちがきちんと情報として仕入れていたので、今日も来ていることはきちんとわかっていた。

 その情報通りに屋台が出ていたので、ピーチはその屋台に近付いて行った。

 目的は、屋台の店主と子供たちが世話になったことを話しながら情報を仕入れるためだが、それ以外にもある。

 それは、この屋台を仕掛けた者がいるのであれば、ピーチのことに気付かないはずがないと考えたためだ。

 もし、ピーチのことに気付いて、何らかの動きを見せれば十分成果を得たことになる。

 

(――そのはずなんですが、そう上手くはいかない・・・・・・ええ~!?)

 ここでもじっくりと待つつもりで動いていたピーチだったが、周囲を探る感覚に妙な存在が引っかかった。

 流石にこれにはピーチも驚きを示した。

 それは、いくらなんでも簡単に見つかりすぎだろうという思いからだった。

 とはいえ、現実に自分の知覚に引っかかった以上、それが事実であることは間違いない。

 

(さて、どうしましょうか)

 あまりの予想外のことに取り乱してしまったが、ピーチはすぐに立ち直っていた。

 勿論、取り乱していたときもそれを表に出すようなミスはしていない。

 屋台の店主と話をしながら、数秒考えたピーチは、とりあえず何もなかったかのようにその場を離れることにした。

 店主から情報を仕入れることは、最初から予定通りの行動なので、この後相手がどう行動しようとピーチ自身がすることは変わらない。

 自分の後を着いてくるのかどうかを確認しながら、ピーチはそのまま屋敷へと戻った。

 

 

 屋敷に戻ったピーチは、少しだけ呆れた顔になってコレットがいるはずのリビングに入った。

 そんな顔をしているピーチを見るのは珍しいので、コレットもすぐに気が付いて声をかけて来た。

「そんな顔をしてどうしたの・・・・・・って、まさか!?」

 コレットもピーチから時間がかかるだろうと言われていたので、そんなことがあるのかという顔になっていた。

「はい。そのまさかですね~。わざとかもしれませんが、ちょっと予想外でした」

「まあ、相手もピーチの実力をわかっていなかったから、油断していたとかかも知れないからね」

「そうかもしれませんが~・・・・・・」

 コレットの答えに納得しつつ、ピーチは不満げな顔を隠そうともしなかった。

 

 こんなに簡単に見つかったのは、何か相手も思惑があってのことではないかと考えたのだ。

 とはいえ、今は情報が少なすぎるのでその答えを得ることは出来ない。

 とりあえず、悪いほうで予想が当たったので、ピーチはさらなる行動を起こすために、転移門で里へと向かうのであった。

困ったことが分かりました。

ピーチが大活躍するときは、台詞が出てきません!(今更)

地の文が続くので、読みにくいですよね><

隠密行動をしているので、どうしようもないのですがw

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