10話 別種?
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<火の妖精石>を設置した第四十六層の鸞和たちに、変化が起きていた。
固有名:ランカ
種族名:青和
固有スキル:体当たりLV5 飛行LV7 くちばし攻撃LV7 回避LV6 察知LV7 妖精言語 言語理解(眷属)LV4 火魔法LV5 神力操作LV2
天恵スキル:念話LV5 火属性LV2
称号:考助の眷属
ランカを例にとるとこんなスキル構成になっていた。
全体的なLVアップもそうだが、固有スキルの<火魔法>と天恵スキルの<火属性>が増えている。
ちなみに種族名は、ランカの場合は<青和>だが、他の個体には<青鸞>となっている個体もいた。
スキル構成的には違いがほとんどないので、何の違いかとしばらく考えたが、結局わからなかった。
「うーん・・・何の違いなんだろう?」
「何の事?」
首を傾げる考助に、一緒に来ていたコレットが聞いてきた。
コレットに個体によって<青鸞>と<青和>があることを説明する。
「もしかしたら・・・・・・」
「何か思い当たることあるの?」
「・・・性別の違いは?」
「いや、流石にそれは・・・僕じゃあ判断付かないな」
鳥類の性別の違いなど見分けがつくわけがない。
「というか、コレット聞いてみてよ」
<青鸞>と<青和>には、<妖精言語>がついているのだから、コレットだとある程度の話が出来るはずである。
「あ、そうね。聞いてみるわ」
考助に言われて、ようやく<妖精言語>のことを思い出したコレットであった。
鸞和達の中で、今回進化をしていたのは十羽ほどだったので、全ての個体を確認してみた。
結果、コレットの推測は当たっていた。
雄が<青鸞>で、雌が<青和>であるということが分かった。
十羽ほどしか確認できていないが、恐らく間違いないだろう。
まあ、違っていたとしても特に問題はないので、<青鸞>と<青和>に関しての調査は、今回進化した十羽でやめておくことにした。
それはともかくとして、それよりも重要なのが、追加されているスキルである。
進化をしていない個体で<神力操作>を持っている者達はいたが、固有スキルの<火魔法>と天恵スキルの<火属性>を持っている個体はいなかった。
間違いなく進化が出来たのは、この二つのスキルだと思われる。
どう考えても<火の妖精石>の恩恵を受けて、付いたとしか思えないスキルである。
<火魔法>の方は、明らかに効果が想像できるスキルだが、<火属性>の方は、どういう効果があるかいまいちわからない。
「・・・・・・うーん・・・」
考助は、しばらくの間ランカの前で唸っていた。
「・・・・・・ポ?」
その考助の様子に感化されたのか、なぜかランカが頭をコテンと傾けた。
それを見た考助は、我慢できずについつい首筋に手を伸ばしてしまう。
ランカもそれを嫌がるどころか、気持ちよさそうに目を細めて撫でられている。
その様子をコレットが呆れたように見ていた。
「・・・どうかした?」
「いえ、別に。いくら眷属だからって、そこまで懐くものなのね。相変わらず」
「え? 普通そうじゃないの?」
「さあ? そもそも人が召喚獣を眷属にするなんて話、聞いたことがないからよくわからないわ」
「うーん・・・。まあ、懐かれて困ることもないよね?」
「個人的にはそう思うけど、他から見たらどうなんでしょうね?」
コレットの言葉に、考助が首を傾げた。
「・・・どういう事?」
「あのね。狼達にしろ狐達にしろ、普通の感覚で言えば、モンスターだからね」
当然討伐の対象になるのである。
それらがここまで懐いているのを見た人が、どういう感想を持つか。
「・・・・・・まあ、良くて変人扱いってところかな?」
「コウスケの召喚した眷属の数を知られたら、コウスケ自身が討伐対象になってもおかしくないかもね」
「ハハハ・・・いや、そんな、まさか」
考助は、引き攣った笑いを浮かべてコレットを見たが、コレットは小さく首を振った。
この世界にも、テイマー的な者達は存在しているが、それでもほとんどの者達は数体、一流と呼ばれる者達で数十頭と契約しているだけだ。
それに比べれて、考助の各種族が百頭単位でいる眷属たちは、他から見れば脅威以外の何者でもないのである。
「・・・・・・知られないように、気をつけます・・・」
「そうしたほうがいいわ」
項垂れた考助に、コレットは大きく頷いた。
そもそも全ての眷属を、塔の外に連れて出ることなどまずないだろうが、用心するに越したことはない。
以前のナナとワンリの様に、数体単位ならさほど警戒されることもないだろう。
今後、眷属たちを連れて外に出ていく事があるかどうかは、不明なのだが。
そんなことを話しながらも、考助はランカの首筋を撫でるのは止めていなかった。
そして、ランカもまた気持ちよさそうに、撫でられるがままになっていたのである。
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折角ランカが懐いてくれたので、考助としては、もう一つの野望を達成することにした。
早速ランカを連れて、第八十層へと向かった。
何のためかと言うと、コー達と会わせるためである。
流石にコーの巨体に、最初ランカは怯えたように考助にくっついていた。
考助がしばらくの間、コーに騎乗していると慣れて来たのか、コーの背の上で寛ぎだした。
当然ながら、騎乗しているとはいっても、コーの背に乗っているだけで飛んだりはしていない。
コーは、ランカが自身の上で寛いでいるのを知っているのかいないのか、ほとんど動いていなかった。
「・・・ポポポ」
「キュオ?」
「ポポ」
「キュオ」
しばらくして、二羽が通じているのかいないのかよくわからないが、会話(?)をしだした。
その様子を見ながら、考助は和ませてもらっていたのだが、コーが突然考助を背に乗せたまま空に飛び上がった。
「・・・・・・おわっ!?」
突然のことにバランスを崩したが、流石に背から落ちることは無かった。
慌ててランカのいた方を見るが、既にランカは飛び立った後だった。
コーの少し前方を青い翼を広げて悠々と飛んでいる。
何となく観察した限りでは、コーの方が飛ぶ速度が遅いようである。
まあ考助を背に乗せているので、気を使って飛んでいるせいもあるのだろう。
実際は、どちらの方が飛ぶのが早いのか少し気になったが、比べてみても塔の中にいる限りは、ほとんど意味がないので気にしないことにした。
コーは考助を乗せたまましばらくの間、第八十層を飛び回る。
ランカは、その周りを円を描くようにして飛んでいた。
やがて二羽は満足したのか、先ほどいた地上へと戻ってきた。
特に考助が指示したわけではなく、完全にコーに任せていたのである。
空の旅で、二羽の間に何か絆のような物が生まれたのか、会ったばかりの時の様な硬さは、ランカからは取れていた。
今は完全に脱力しきって、コーの背中の上で寛いでいる。
相変わらず、ポポポ、キュオキュオと、当たり前だが考助には意味が分からない会話らしきものが、二羽の間で行われていた。
その会話が途切れたのを見計らって、考助はランカを連れて元の第四十六層へ戻ることにした。
思った以上に仲が良くなった二匹を見た考助は、野望の一つを達成したのであった。
ランカがデレました?
何となく書いてみなくなったので、二羽の交流(?)を書いてみましたが、いかがでしたでしょうか?
種族名は、青鸞と青和とお読みください。




