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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(6)施設の場所と人材

 今回の建物は、場所はユリが選ぶことになっているので、まず考助が階層を選んだ。

 孤児の為の施設は、転移門の接続以外は完全に世界から孤立させることにしている。

 それは、子供たちを外から守るのと同時に、余計な情報などを入れさせないという目的もある。

 勿論、子供や施設で働く大人たちの移動は自由にさせるが、関係者以外は転移門を使えないようにするつもりだ。

 それは考助の要望というよりも、シルヴィアやフローリアの希望だった。


 孤児たちを育てる難しさを実感しているシルヴィアはともかく、フローリアまで同意したのには、考助にとっては少し意外だった。

「そうか? 私は直接の運営には携わったことはないが、様々な孤児院を見て来たつもりだぞ?」

 女王だった時代、フローリアは各町の孤児院を見て来た過去がある。

 そうした経験から、今回の提案を行ったのだ。

 子供たちが施設内に隔離をされるだけならフローリアも反対しただろうが、そうではないのでシルヴィアの意見に賛同したというわけである。

 考助としても、転移門が間にあるとはいえ、別に他の人々と触れ合えないというわけではないので、特に反対はしなかった。

 

 

 そういうわけで、初級モンスターが出る適当な階層を選んだ考助は、コウヒとミツキを連れてその階層へと飛んだ。

 そして、早速呼び出したユリに、建物を建てるのにふさわしい場所を選んでもらう。

 とはいっても、アマミヤの塔の階層は広いので、流石のユリも選ぶのには苦労をしていた。

 ユリは繋がりのある建物以外は、考助の傍から離れることが出来ない。

 そのため、ユリが場所を選んでいる間は、考助たちもその階層からは離れることが出来なかった。

 それでも、考助は時折襲ってきたモンスターを適当に相手しながら、のんびりとユリが選ぶのを待っていた。

 

 そんな状態で数時間待っていると、ようやくユリの顔に笑顔が浮かんだ。

「考助様、見つけました! ここが一番いい場所です!」

「うん? そうなんだ」

 考助の答えがそっけなかったのは、別に長い時間を待たされたからではない。

 ユリが一生懸命選んでくれたのはわかっているのだが、考助にはどう見ても他と代わり映えのしない風景だったからだ。

 勿論、人の手が入っていない自然そのままの風景は綺麗だったが、それ以外の特別な何かを感じることはなかった。

 

 それはともかく、ユリが満足して選んだのであれば、考助としては文句を言うつもりはまったくない。

 ユリにある程度の範囲を選んでもらって、その範囲に建物が入るように目印をつけておいた。

 その日は場所選びだけで、それ以上の作業をするつもりはなかったので、考助たちは始まりの家へと戻った。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 考助がユリと一緒に場所の選定をしていたその頃。

 シルヴィアとフローリアは、施設を運営するための人材を探していた。

 ふたりがまず向かったのは、当然というべきか、ココロの所だった。

「あれ? ふたり揃ってどうしたのですか?」

 最近は百合之神社に詰めていることが多いココロは、シルヴィアとフローリアが連れ立ってきたことに首を傾げていた。

 子育てが終わったふたりが揃って行動していることは珍しくはないが、ココロの所にわざわざ出向いてくることは稀なのだ。

 

 不思議そうな顔をしているココロに、シルヴィアが孤児施設についての話をした。

「はあ~。また新しいことを始めたのですか。そのうち把握しきれなくなって、忘れられることも出てくるのではありませんか?」

 話を聞いたココロが、呆れたように言うと、フローリアが頷きながら言った。

「私もそれは思っているのだがな。今回の件は大丈夫だろう」

「え? それはなぜですか?」

「一番やる気になっているのが、コウスケではなく、シルヴィアだからだよ」

 フローリアがそう言うと、ココロは少しだけシルヴィアに視線を向けて納得の顔になって頷いていた。

 

 シルヴィアは、ココロの様子に、少しだけ不満の顔を見せた。

「・・・・・・なんでしょうか?」

「いえ。お父様よりは、お母様なら納得できるかなと、思っただけです」

「一応言っておきますが、確かに私がやる気にはなっていますが、元の発案はコウスケ様ですからね?」

 シルヴィアが念を押すようにそう言うと、ココロはもう一度首を傾げた。

「お父様がですか・・・・・・何やら理由がありそうですが、聞かない方がよさそうですね」

 ニコリと笑ってそう言ったココロは、しっかりとシルヴィアの娘らしく育っているといえた。

 自分の身に及ばないような危険(?)を察知することに長けているのだ。

 とはいえ、こうしてシルヴィアとフローリアが来ている以上は、ある程度の話を聞かなくてはならないのだが。

 

 そんなココロの牽制を余所に、シルヴィアとフローリアが求める人材についての話をし始めた。

「――というわけで、孤児たちを育てるのにいい人材はいませんか? 私の知り合いは、そろそろ子どもを育てるにはつらい年齢になっていますから」

 別にシルヴィアの本来の年齢が高いというわけでは決して無いのだが、子供たちと施設の将来を考えれば、あまり高齢の人材を入れても意味がない。

 それに、施設には<月の祭壇>を任せていたジンも入れるつもりでいた。

 ただ、ジンは既に老齢と言っても良い年齢になっているので、あまり元気に動き回れるわけではないのだ。

「あら。ジンさんを入れるのでしたら、ちょうどいい方がいるではありませんか」

 ココロがジンの話を聞いてあっさりとそう答えると、シルヴィアとフローリアが顔を見合わせて首を傾げた。

 

 そのふたりの様子を見て、ココロはため息をついてから続けた。

「ジンさんは、リンさんを弟子にしていたのですよ? 他にちょうどいい方がいますか?」

 ココロがそう言うと、シルヴィアとフローリアは同時にアッという表情になっていた。

 確かに、リンはジンの弟子として長い間一緒に生活をしていた。

 彼であれば、ジンを任せたとして無下に扱わないということは分かっている。

 リンがジンの元を離れたのは、別に喧嘩別れをしたわけではなく、ジンがリンに外の世界も見てくるようにと言っていたからだと聞いていた。

 

「確かに、リンであれば適任でしょうね。彼に話を聞いた方がよさそうです。彼は、今どこにいますか?」

 リンが旅から帰ってきていることは知っているが、今どこで何をしているかまではシルヴィアは知らない。

 その問いに、ココロは少しだけ呆れたような顔になった。

「元は塔で面倒を見ていた子供でしょうに」

「それはそうですが、今は立派に成長して独り立ちしています。いつまでも追いかけるほうが、彼にとっては迷惑ですよ」

 ジンの弟子としてずっと<月の祭壇>で活動をしていたのであれば、シルヴィアもきちんと把握していただろう。

 あるいは、ジンの元に自ら戻ったのであっても同じことだ。

 だが、そうでない場合は、リンの自由意思に任せているので、シルヴィアが関知するところではないのだ。

 

 その放任主義なのか、無責任なのか、よくわからないシルヴィアの答えに、ココロはふとどちららなんだろうと考えて、途中でそれを放棄した。

 自分やルカのことを見れば、どちらであるかは明白だからだ。

 少なくともココロは、自分の母親が人に対して無責任だったことはないと思っている。

 そんなどうでもいいことを考えつつ、ココロはシルヴィアとフローリアに、リンの居場所を教えるのであった。

リンが舞い戻って来ることになりました。(今更)

リンがどこで何をしているかは、次話でw


ちなみに、ジンはかなりの高齢(九十以上)ですが、いまだ自分で歩けますし、きちんと作業などもしています。

元気元気なお爺さんですw

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