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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(4)ユリとコレットの考察

 以前の話し合いを途中で止めたのは、別に施設を作ることを止めるためではない。

 単に、あまりに事を性急に進めてもいいことにはならないだろうと判断したからだ。

 それに、後から考えれば、穴があったなんてことはよくあることだ。

 後日、熱が冷めてから改めて計画を見直そうということになったのである。

 そして、その日は話し合った内容をいくつか紙に書いてまとめておいた。

 あとは、何か思いついたことがあれば、その紙に書いておいてまた何日か経った後で話をしようということで、お開きになっていた。

 

 最初の話し合いから五日ほど経ったある日。

 考助は、始まりの家で、ユリを呼んで話を聞いていた。

「お話とはなんでしょうか?」

「ああ、うん。少し聞きたいことがあるんだけれど、いいかな?」

「勿論です。最近では人が多く訪れるようになって、かなり余裕が出るようになってきましたから」

 初めて聞くその話に、考助は目をパチクリとさせた。

「あれ? 人が増えると運用が楽になるの?」

「言っていませんでしたか? 人が持つ『気』は良い面も悪い面もあるということは以前話したと思いますが、その『気』が増えると私にとっては力が増すのと同じことになります」

 勿論、悪い気の場合は、良い影響を与えるわけではないのだが、単純に力が増すという意味では同じことである。

 それが良いことなのか悪いことなのか、判断するのはあくまでも人の側によるものなので、ユリのような存在にとってはあまり意味がない。

 ユリにとって重要なのは、考助がそれをどう判断するのか、ということだけだ。

 

 とにかく、今のところは悪い気が増えているわけではないので、純粋にユリの力が増しているということになる。

「そうなんだ。まあ、それは良いとして、塔の階層に僕自身が作った建物があったとして、そこと『繋がる』ことは出来る?」

「考助様がですか? それは勿論可能ですが、そんなことが出来るのですか?」

「あれ? 言ってなかったっけ? 以前、作った建物があるんだけれど?」

 だいぶ前に、実験もかねて作った建物は、現在でも冒険者たちの間ではアマミヤの塔の不思議な場所のひとつとして認識されている。

 結構頻繁にいろいろな冒険者が出入りする場所になっているので、敢えてユリとの繋がりは作らないようにしていたのだ。

 

 考助から話を聞かない限りは、そんなことまでわからないユリは首を左右に振っていた。

「あら。どちらにせよ、あの建物にユリの力を使うつもりはないけれどね」

「そうでしたか」

「うん。まあ、それは横に置いておくとして、実際にはどうなのかな?」

「はい。特に問題ないと思います。いえ、失礼いたしました。この塔の力で用意した建物よりも、より早く繋がりを得ることが出来ると思います」

 実は、アマミヤの塔も考助が管理者として登録されているので、塔の機能で出した建物も考助の力で出来ているといっても間違いではない。

 ただ、やはり直接考助が作った物と比べれば明確な差があるので、ユリにとってもやり易さは段違いなのだ。

 

 ユリの答えを聞いた考助は、やっぱりという顔になって頷いた。

「まあ、どう考えてもそうなるよね」

 自分の神力を発する道具を作ったときから、何となくそういうことなんだろうとは理解していた。

 ただ、わざわざ第八十三層に新しい神社を作り直すのもどうかと考えて、そのままある建物を使っただけなのだ。

 それならば、最初から自分の力で作った建物で実験するのもいいだろう。


 これから新しい建物を必要とする事業(?)を始めるのだから、タイミング的にも丁度いい。

「折角だから、建てる場所もユリと一緒に選んだほうがいいのかな?」

「はい。そのほうがより良い助言ができると思います」

 ユリにとっては、今まで通り地脈の交点の上に作るのでも構わないのだが、やはり自分の力が及びやすい場所というのは、それ以外にも条件がある。

 それは、口で説明するのが難しいので、今のようにきちんと呼んでくれれば、ユリ自ら選ぶこともできるのだ。

 今までそうしていなかったのは、そもそもユリがこうして出てこれるようになってから、新しく建物を建てる機会が無かったからだ。

 

 ユリの返答に、考助は納得した表情で頷いた。

「そうか、わかったよ。ありがとう。とりあえず、今はまだどこの階層にするとかも決まっていないから、そのときになったらまた呼ぶね」

「わかりました。そのときには是非によろしくお願いします」

 そう答えて来たときのユリの言葉が、なぜか力が入っているように聞こえた考助だったが、その理由まではわからなかった。

 このときは、ただの気のせいかとあっさりと受け流してしまって、結局すぐに忘れてしまったのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 考助がユリから聞いた話を小さな紙にまとめて、ぺたりと壁に掛けてあるボード(ただの木の板)に張った。

 すると、それを見ていたコレットが不思議そうな表情を浮かべて聞いて来た。

「それって一体、何なの?」

 コレットは先日の話し合いには参加していなかったので、ボードの意味が分からないのだ。

「ああ、これはね――――」

 コレットに聞かれた考助は、孤児の為の施設の話を聞かせた。

 

 このボードは、盛り上がりすぎた話し合いに反省をして、思いついたことをメモとして残しておいて、あとからの話し合いで客観的に見て話をする、ということにしたのだ。

 どうにも勢いだけで決める傾向があることを、考助も含めて(?)、シルヴィアもフローリアも若干気にしていたようだ。

「ふーん。なるほどね。まあ、悪くはないと思うけれど・・・・・・」

「なに? 問題でもあった?」

「いや。問題というか・・・・・・時間を置いても置かなくても、結局同じことになるんじゃないかと思っただけよ」

「そ、そんなことはない! ・・・・・・はずだよ」

 直球すぎるコレットの意見に、考助は勢いよく否定・・・・・・しようとして、後半はしぼんでいた。

 今までの実例を考えると、完全に否定することは難しいという自覚は、多少はあるのだ。

 

 目をウロウロさせ始めた考助に、コレットは呆れたような顔になった。

「まあ、別にいいけれど。それに、私もあまり人のことは言えないからね。――それはともかく、コウスケは当然として、シルヴィアやフローリアも結構意見を出しているのね」

「ああ、うん。考えていた以上に、食いつきが良くて、びっくりしているよ」

 今回の件が話が進んでいるのは、考助のせいということもあるが、それと歩調を合わせるようにシルヴィアとフローリアがやる気になっているせいでもあるのだ。

 そのお陰で、ブレーキを掛けることになったのだが、考助にしてみれば違った角度からの意見を聞けるのはあり難い。

 何よりも、孤児を扱うので、孤児院のことに詳しいシルヴィアの意見はとても貴重なのだ。

 

 ボードに張られたメモを見ていたコレットは、なぜか目を輝かせて考助を見て来た。

「ねえ。これ、私も参加していいのかしら?」

「え? それは勿論いいけれど、何か足りないことでもあった?」

「ううん。そういうわけじゃないけれど、事が大きくなりそうだから、私も一枚かませてもらおうと思っただけ」

 なにやらそう不穏なことを言ってきたコレットに、考助が視線を逸らしながら答えた。

「そ、そんなことはない、よ?」

「ふーん? それならそれでいいけれど。まあ、とにかく、折角だから書いておくね」

 コレットはそう言いながら、紙を取り出してなにやら書き出し始めた。

 軽く流されてしまった考助は、コレットが何を書くのかと、ジッとその様子を見るのであった。

ユリ&コレット参戦!

これだけで終わるはずがないですね。

次は、どうしましょうか?w


※少しばかり作業が立て込んでいるので、今回は土日でお休みいたします。m(__)m

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