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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(1)病床のアレク?

第5章開始。

 セイヤとシアの学園入学から半年ほどが経ったある日。

 考助は、フローリアとシルヴィアを連れて、別大陸へと移動していた。

 考助たちが向かったのは東大陸で、フローリアの故国であるフロレス王国だった。

 フロレス王国の王都には、フローリアの実父であるアレクが住んでいる。

 ほんの数年前までは、クラウンの支部長をしていたが、後任に立場を譲ったあとは、のんびりと老後の生活を送っていた。

 ところが、トワからの連絡で、優雅な引退生活を送っているはずのアレクが倒れたという連絡があり、急遽時間の作れる二人を連れてやってきたのだ。

 

 元王子であるアレクは、王都の貴族街に住んでいる。

 もっとも、既に王子であることを返上しているアレクは、フロレス王国からは資金を全くもらっていない。

 アレクがこの場所で生活できているのは、アレク自身が行政府時代やラゼクアマミヤの宰相として働いていた稼ぎがあったからだ。

 ちなみに、両者に比べれば、クラウンの支部長として働いていたときの稼ぎは、多くはない。

 勿論、一般の平均収入と比べれば、遥かに多いのだが。

 

 というわけで、アレクの住む屋敷に向かっていた考助たちだったが、途中でフローリアが懐かしそうに目を細めていた。

「やっぱり懐かしい?」

「それはな。幼少期は別の場所で過ごしていたが、社交デビューしてからはこっちに住んでいたからな」

 幼少期の王族は、基本的に王都から離れて過ごすことが多い。

 それは、暗殺や反乱が起こったときのために、王家の血を分散させておく意味もあるためだ。

 そのため、フローリアもその例にもれず、幼少期は王家の直轄地のひとつに住んでいた。

 だが、自分自身で身を守るという判断ができる年になると、王都に呼び寄せられて、社交などの王家の一員としての義務をこなしていたのである。

 

 生粋の王族であるフローリアは、隠れて王都に繰り出すということはしていなかったが、時折視察と称して王都の中を見学していた。

 だからこそ、今になって懐かしさが出てきているのだ。

 フローリアは、ほとんど昔と風貌が変わっていないが、さすがに直接見たことのある人は少ないせいか、元王族だと気付く者はここまで一人もいなかった。

 それは貴族街に入った今も同じなので、まずフローリアのことを知っている者と会うことはないはずだ。

 何故なら、貴族はどこにいくのも馬車で移動するのがほとんどなので、今の考助たちのように、自分たちの足で歩いて目的地に行く者など稀なのだ。

 たとえ馬車の中にいたとしても、フローリアがその辺を普通に歩いているなんてことは、考えもしないだろう。

 

 そんなわけで、のんびりとアレクたちの住む屋敷まで歩いていた考助たちは、ようやく屋敷の門の前に到着した。

 ・・・・・・したのだが、そこでひと悶着があった。

 というのも、ふらりとやってきた考助たちを怪しいと考えた門兵たちに、思いっきり止められたのだ。

 それもそのはずである。

 まさか、元王女であるフローリアが、馬車も使わず、事前の予約も取らずにフラフラとやって来ることなど考えるはずもない。

 警備のために立っていた兵は、職務を忠実にこなしただけだ。

 

 流石にそこで問答を繰り返しても意味がないと考えた考助は、アレクが持っているはずの通信具に連絡を入れた。

 当人は倒れているはずだが、誰かが出てくれると期待したのだ。

 ところが、その予想に反して、通信具にはアレク当人が出て来た。

「あ、あれ? 倒れていたのでは?」

「うん? それは誰の話だ?」

 微妙に話がかみ合っていないとわかった考助は、通信具で話を続けても意味がないと考えて、まずは屋敷の中に入れてもらうように話をすることにした。

「え? えーと。ま、まあ、とにかく今、屋敷の前に来ているので、入れてもらえないでしょうか?」

「なに? 屋敷って、うちのか!? ちょっと待て!」

 通信具の向こう側で、若干慌てた様子がうかがいしれたが、何やらアレクが慌てて指示を出す声が聞こえてきた。

 

 その予想は外れておらず、屋敷から慌てた様子でメイドのひとりが飛び出してきて、ようやく考助たちは、アレクの屋敷に入ることが出来たのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 考助たちを部屋の中に迎え入れたアレクは、少し呆れたような視線を向けて来た。

「突然来るのはまあいいとして、徒歩でくるというのは、どういうことだ?」

 早速一言目に常識はずれなことをしてきた考助たちに、苦言を呈してきた。

 ただし、この場で責められるべきは、フローリアひとりだろう。

 何しろ考助やシルヴィアは、貴族が馬車を使うのが常識だということは知らないのだから。

 

 アレクもそのことを理解しているので、視線を向けているのはフローリアだけだった。

 そのフローリアは、アレクの台詞にばつが悪そうな顔になった。

「いや、つい、いつもの癖でな。それに、クラウンの転移門からここまで来るのに、わざわざ馬車を借りるのもおかしいだろう?」

「そんなわけがあるか。 せめて、クラウンで借りるとかできるだろう」

 クラウンには、貴族からの依頼に応えるために、馬車を持っていない冒険者の為に貸し出しをするシステムがある。

 支部長だったアレクはそのことをよく知っているので、ごまかされるはずもない。

 

 ところが、そのアレクの台詞に、フローリアはキョトンとした表情を考助に向けた。

「・・・・・・そうなのか?」

「いや、それは僕も知らなかった」

 要するに、考助たちは最初から馬車を借りるという発想が無かったので、クラウンでそんな制度があるとは思ってもいなかったのだ。

 

 アレクは、考助とフローリアの会話にため息をついた。

「はあ~。まあ、それはいい。それよりも、突然どうしたんだ? なにかありそうだったが」

 アレクからそう言われて、考助はようやく当初の目的を思い出した。

 そして、元気そうなアレクを見て、首を傾げながら話をした。

「いえ。僕らは、アレクが倒れたと聞いたから来たのですが?」

「は? なんだそれは? 私も妻も元気にしているぞ? 一体、誰から聞いたんだ?」

 全く思い当たりのないことに、アレクは目を丸くして驚いた表情になった。

 

 声を聞いたときからアレクが元気だとわかっていた考助だったが、これには首を傾げた。

「そうですよね。僕がトワから直接話を聞いたのですが・・・・・・って、ああ。考えるまでもありませんでしたか」

 自分で話をしながら、考助は今回の件の犯人が分かった。

 というよりも、考助だけではなく、ほかの者たちも同じように思い当たりがある顔になっていた。

 

「・・・・・・トワめ。随分と紛らわしいことをするな」

 そう呟いたフローリアを、考助がまあまあと止めた。

「折角トワが気をきかせてくれたんだから、しばらくゆっくりして行こうよ」

 考助がそう提案すると、アレクが苦笑をしながら頷いた。

「まあ、そうしてくれると私も嬉しいな。ソニヤも喜ぶだろうし」

 転移門ですぐに来れるとはいえ、フローリアはそうそう頻繁にこの屋敷に来ているわけではない。

 何かきっかけがあれば来ることもあるのだが、のんびりするということは今までほとんどなかった。

 考助が一緒に来ている今であれば、余計なことを考えずにゆっくりできるのだ。

 

 どうやらトワの思惑に見事にはまったらしいとわかったフローリアだったが、父母とゆっくり一緒に過ごす時間も捨てがたいと思えたので、考助の提案にありがたく乗ることにした。

 病気やけがをしているわけではないが、両親が年を取ってきていることも事実なのだ。

 この際なので、考助の言葉に乗って、新しい実家でゆっくりして行こうと考えるフローリアなのであった。

アレクもこの世界では初老といっていい年代になってきています。

今回はトワのいたずらで済んでいますが、そのうち冗談ではなくなる日も近付いてきています。


折角アレクを登場させたので、今章はフロレス王国に焦点を当てようかなと思っています。


♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

活動報告のアンケート、まだまだ募集していますよ~。

ぜひ、ご参加ください。

(参加したからといって、何かがあるわけではないのですが><)

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