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終幕

 「くははは、コイツは勝てねぇや」


口から血をはいて、草原をベッドに倒れたジョーカーは、残った片腕で、自分の傷口を押さえて、苦しそうに咳をこぼした。


「まさか、俺が必死に鍛練した奥義を初見でコピーしてくるとは、卑怯くさいぜ」


(だから言っただろ、俺は最強なんだ)



「ああ、どうやら俺もちっぽけな器だったらしい。常識にとらわれてお前の実力を見誤ってしまった」


ジョーカーは酔っ払いのように、よろよろと、立ち上がる。流れる血の量から、もう息は長くないだろう。


「死ぬ前にいいもんが、見れたぜ」


(リリアをさらったことは許さんが、俺も色々教わった。お前と戦えてよかったよ)


「ふん、なら最後に俺の願いを二つ聞いてくれないか?」


(おおいな、せめて一つにしてくれ)


俺がそう言うと、ジョーカーは腰にさしていた鞘をとりだして、落ちいた自分の刀を納刀した。


「死にゆく人の願いはきくもんだぜ? ぐっ」


血が喉に詰まったようで、草むらに赤い唾を吐き出した。喋るのもつらそうだ。


「お前に、その脇差しと、この刀を受け継いで欲しい。これは俺が見つけた最高の刀だ」



なんだ、そんなことか。てっきり故郷の親御さんに遺言をとか想像してたから拍子抜けだ。くれると言うなら貰っておこう。そんなことでいいならお安いご用だ。


俺はふらつくジョーカーから刀をうけとる。刃を見ると、脇差しと同様の美しい波紋が波うっていた。



「その刀とともに、俺は自分の夢、伝説のsss級冒険者を目指していたが、それも終わった。なら、この先はお前に使ってもらいたい」


(いいだろう、ありがたく使わせてもらう)


流石に、どちらの剣も今の俺には長すぎるので、使うのはずっと先の未来になる。

それまで、家のどこかに保管しとくとしよう。とりあえずいまは、話を聞くのに邪魔だから、二本とも地面に突き刺しておく。


(それで最後の願いはなんだ?)




「ああ、最後はお前の本当の力で俺にトドメをさしてくれ。どうせ手を抜いていたんだろ? 他流派の技しか使ってなかったしな」


たしかにその通りだ。技をコピーしていたのは、あくまで修行をさせてこようとした、ジョーカーへの、俺からのアンサーだ。


俺に修行は必要ないってことを伝えたかっただけ。まだ自分の剣術は披露していない。



(お前の願い、聞き届けた。最後に俺の剣術を披露してやろう。死ぬ準備できているか?)


「ふん、あたりまえだ。いまこの瞬間にもくたばりそうだぜ」



(そうだったな)


俺は隣に刺している脇差しを手に取り、抜刀術の構えをとる。

しかし、ひとつ聞き忘れていたことを思い出して動きを止める。

ジョーカーの耳元に近づいて、あることを質問すると、ジョーカーは「はっはっは」と大笑いしながらも答えてくれた。


「お前も随分と人間らしいところがあるじゃねーか」


(これでも苦労してるほうでね。利用できるものはさせてもらうさ。さあ、本当に最後だ。誰かに言い残す言葉はあるか?)


「な゛い゛ッ、俺の人生は素晴らしかったッ!」



(その意気やよしッ、圧倒的力の前に消え去るがいいッ)



俺が魔力を解放すると、足元に巨大な魔法陣が展開される。


夜に輝く満月のように、闇を照らす美しい淡い光が俺を包み込む。

目を閉じて呪文の詠唱をはじめると、ドラゴンを倒したあの時のように、舌足らずの声は、青年の声へとかわっていく。


「天地創造の神は我が遥か下に生物を創造し、我が足元に天をおかれた。即ち、我、万物の覇者なり。我に消せぬものはなく、また我が前にたてるものなし。全てを薙ぎ払え、最終奥義、無限・一刀!!!!!!」


光の奔流がジョーカーを、草原を、夜空を、全てを飲み込んで消していく。


大気圏にまで到達する光の十字架が遥か上空ではぜた。


────生きとし生けるものを脅かす死の光。


────されど、その美しさに人は憧れ目を奪われる。


────月に代わって夜を照らせ。吹き荒れる風の音を鎮魂歌(レクイエム)として逝くがいい・・・・





サラバ! 

S級冒険者狩りのジョーカーよ!

次回エピローグ!

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