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魔人勇者(自称)サトゥン  作者: にゃお
七章 精弓
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64話 警告




 エセトレアを目指す道中は騒がし過ぎる程に賑やかで。

 出発日から十日後にローナンとエセトレアの関所へ辿り着き、エセトレアの使者と合流する予定を立てていたのだが、ポフィールの飛行速度があまりに速く、予定を大きく上回り二日で到着してしまう。馬を使って十日の距離をたったの二日で翔け抜ける巨大鳥の異常さにリュンヒルドはただただ呆れるばかりである。

 予定日でなければ関所に迎えは来ないため、どうしたものかと悩むリュンヒルドに、サトゥンが名案とばかりに関所付近でキャンプをして過ごそうと提案する。

 彼としては新しく訪れた土地で仲間達と遊ぼうという、それだけの意図で提案したのだが、他の誰よりも早くベルゼレッドが賛成の意を示す。彼もサトゥン同様遊びたいらしく、呆れるように溜息をつくグレンフォードの背中を笑って叩いていた。

 彼らは関所より離れた場所に簡素な宿泊設備を作り野営をすることに決める。布張りの野営テントを作ろうとしたベルゼレッドを制し、サトゥンが得意の非常識魔法を行使して土作りの家を創造する。相変わらずの滅茶苦茶ぶりに仲間達は最早驚きすらしなかったが、初めてみるベルゼレッドとリュンヒルドはあんぐりと口を開いて驚くばかり。その反応が嬉しかったらしく、サトゥンはいつも以上に胸を張って笑い飛ばしていた。

 それからの八日間は、仲間達と楽しく過ごした以外に表現のしようがない。日々の食料はミレイアを除く全員で狩りをしたり釣りをしたり、留守番のミレイアは仲間達全員分の家事を一手に請け負って。リーヴェはその横で惰眠を貪り、ポフィールは野生に飛び込み魔物を何匹も丸飲みしていた。

 八日間の中で起きた事件を述べていけばそれこそ切りがない。サトゥンとベルゼレッドが一体どちらが巨大な獲物を取ってくるか競争したり、ロベルトが間違って獣の巣に足を踏み入れ数十匹の大型獣に追われたり、その獣達をグレンフォードとライティが粛々と狩り尽くしていたり。

 明らかに食用とは思えない形状をした魔物を丸焼きにして食べるリアンとメイアを見てマリーヴェルが全力で引いたり、実は美味しいのではないかと挑戦したリュンヒルドが口元を抑えて水辺に走る光景を見て既知感を覚えたり。本当に様々な事件が毎日起こってはみんなで騒ぎ、そして笑いあう。それが彼らの八日間だった。

 そんな生活を続ければ、仲間達と王であるベルゼレッド、次期王であるリュンヒルドとの距離も自然と詰まる。

 ベルゼレッドやリュンヒルド相手に仰々しく接する者は誰もおらず、誰もが気さくに接するようになり、彼らもまた喜んでそれを受け入れている。

 仲間達との距離も縮まり、絆も深まったという点でこの八日間は非常に良い意味を持ったと誰もが感じていた。







 約束の期日を迎え、エセトレアの関所までサトゥン等は歩いて向かう。

 ポフィールでそのまま向かっては相手側に不要な不安を抱かせることになりかねないとのことから、一時ポフィールとはお別れして向かうこととなったのだ。

 なお、ポフィールは一足早く空を飛んでエセトレア内にて野生に帰っている。サトゥンが呼べばいつでも来てくれるそうだが、マリーヴェルやミレイア辺りは彼の話を疑わしい目で見ていたりした。普段の行動のせいでこういう点でなかなか信頼を得られない勇者様である。

 また、獣耳が生えているライティはそれを隠す為にフードを被っている。流石に他国で兎耳を晒す訳にはいかないという措置だ。

 関所に辿り着くと、エセトレア国の使者が現れる。やせ細った身体と厭らしい笑みを湛えながら使者はベルゼレッドとリュンヒルドに仰々しく挨拶する。


「ベルゼレッド王にリュンヒルド王子、お初にお目にかかります。

私は皆様をエセトレア城までご案内する役目を仰せつけられております、アンビエトと申します。まずはお二方と今日の良き日に拝謁できましたことを心より……」


 長々と始まった使者の挨拶をリュンヒルドは形だけは真面目に、ベルゼレッドは面倒そうにしながらも聞き届ける。

 王に対する使者ということもあり、それなりの地位を持つ貴族が当てられているため、適当に流すのも失礼に当たる。故に、例え相手が見え透いた媚を売ろうとしていると分かっていても二人は挨拶を最後まで聞き届けなければならない。

 だが、そんな使者の長話を空気など微塵も読めずに打ち切る男がここにいた。大きな欠伸を一つして、その男は使者の長話を遮るように口を開く。


「挨拶はそのくらいにして早くエセトレアへ向かおうではないか。話なら道中でいくらでも出来るだろう、うはは!」

「ぬぐ、あの方は?」

「ああ、失礼したアンビエト殿。彼は我がメーグアクラス国最強の担い手であるサトゥンという。

不躾な物言いだが、彼の言うことも一理ある。ここから王都までは更なる道のりがある。話の続きは道中でも構わないのではないか?」

「そうだな。俺も賛成だ」


 他国の王族二人の言葉に、アンビエトは渋々会話を打ち切って馬車の準備を行う。

 王達をおべっかで褒め称えポイントを稼ぎたかったようだが、王宮にて鍛えられている二人には見え透いた媚など心が動く訳が無い。

 慌しく馬車の用意を進めていくアンビエトと兵士達だが、ふと視線を他の仲間達に向けて訝しげな表情を作る。


「担い手は各国一人の筈ですが、数が多いですな。兵士を連れてくるのはご遠慮願いたいのですが……」

「ああ、彼らは兵士ではなく私達の家族だよ。折角エセトレアという歴史ある大国に向かえるのだ。羽を伸ばして楽しみたいだろう?

武器を持っているのは当然だ。我が国は武国メーグアクラス、己が身を守れずして一人前とは言えぬ。そのことはエセトレア王も納得してもらえると思っているが」

「そうですな……いや、失礼しました。それでは他のご家族様の分の馬車もご用意しましょう。お二人と担い手の方はこちらになります」


 そう言ってアンビエトは一番大きな馬車へと案内し、二人と共にサトゥン、グレンフォードとアンビエトは馬車へと乗り込んでいく。

 淡々と嘘と真実を入り混じる会話をする兄に感心しているマリーヴェルだが、他のエセトレアの兵士が彼女を含めた仲間達を別の馬車へ案内する。

 リアン、マリーヴェル、ミレイア、メイア、ロベルト、ライティの六名は別馬車に乗せられて関所を出発する。

 トコトコと馬が歩きだし、流れる景色を眺めて子供のように外の景色に張り付くリアン。そんな彼を茶化すようにロベルトが笑って話しかける。


「何だ何だ、馬車に乗るのが初めての田舎者みたいじゃねえかリアン」

「初めての国だからわくわくして……緑豊かで凄いですね」

「古国エセトレアの歴史はメーグアクラスやローナンよりも長く深い。

豊かな自然が生み出した天然の要塞がいくつも存在し、かつて幾度と豊かな大地を狙った侵略者達を跳ねのけた実績を持っているのですよ」

「新王に代替わりしてからの数十年、貿易交流に関して国を閉ざしちゃってるけど、まあ大国よね」

「そういえば鎖国をしてるんだっけ……どうして?」

「さあ? 私達の生まれる前の話だもの、王様が一方的に宣言して交流を断ったくらいしか私は知らないわ。グレンフォードやベルゼレッドなら何か知ってるかもしれないけどね。外の兵士にでも訊いてみる?」

「お願いですから他国で無茶苦茶なことをしようとするのは止めて下さいまし……」


 けらけらと笑って提案する妹を窘めるミレイア。彼女やサトゥンの場合、冗談が冗談とならないから恐ろしい。

 それから六人は雑談に興じながら馬車の旅を楽しむ。ここから半日程度で目的の城までつくということだが、彼らは馬車に揺られながら雑談に興じたりして時間を潰すしかない。

 暇潰しとしてサトゥンから借りてきたカードゲームで遊んだり、退屈凌ぎとして持ってきた手芸で編み物をしたり、リーヴェのブラッシングをしたり、昼寝としゃれこんだり。

 自由気ままに各々がゆるりとした時間を過ごしていた馬車の旅。何事もなく王城まで辿り着くだろうと気を抜いていたそんな瞬間だった。


「――ッ」


 それは誰が最初に反応したのだろうか。それは最早特定する事は叶わない。

 だが、場所の中にいた誰もが不思議な感覚に襲われた。言葉にすることは叶わない、心に何かがそっと触れたような感覚。

 リアンが、マリーヴェルが、ミレイアが、メイアが、ロベルトが、ライティが。その場の誰もが窓の外、ある方向を眺めていた。

 馬車の外、彼らが見つめる方向に存在するは大きな森。何の変哲もない森林だが、仲間の誰もがそこから瞳を逸らせずにいる。

 胸の奥に疼く何かが彼らの意識を捉えて離さない。理由は分からない。言葉にして説明する事も出来ない。だが、それでも目を離せない。

 静寂が支配する中、馬車の動きが停止する。慌しく前方の馬車から兵士が現れ、馬を操る兵士に何かを報告している。そして報告が終わると、その兵士はリアン達が乗る馬車の扉をノックして、簡潔に報告を述べる。


「おくつろぎの中、失礼します。前方の馬車より指示があり、王城に向かう前に一度あの森林内部へと寄り道を行うとのことです」

「森林に向かうの? どうして?」

「担い手様、メーグアクラス王国の担い手であるサトゥン様の強いご意向とのことです。サトゥン様のご提案にローナン王とメーグアクラス王代理が同意し、使者であるアンビエトも快諾しております」

「……ねえ、あの森林の先には何があるか知ってる?」

「いえ、そこまでは……あちらは一般人は立ち入り禁止区域となっておりますので」


 それではと敬礼をし、兵士は去っていく。再び動き出した馬車の中で、マリーヴェルは仲間達の顔を見つめながら口を開く。


「サトゥンが向かうように指示したみたいだけど……みんな、あの方向に何か感じない?」

「感じると表現していいのか分からないけど……何だろう、これ。強制的に意識をそちらに向けられたというか」

「お、俺だけじゃなかったのか。なんか変なんだよ、初めて見るただの森林なのに、急に意識がそっちに」

「皆さんもそう感じましたの? 何なんでしょう、暗示の魔法か何かでしょうか」

「魔法じゃない。私にも分からない……でも、不思議な感じ」

「……あちらに向かうようにサトゥン様が指示を出したと言ってましたね。恐らく私達同様、サトゥン様もグレンフォードさんも同じような錯覚に襲われているのではないでしょうか」


 全員が同じ不思議な感覚を共有していることを話し合い、首を傾げる一同。

 だが、この正体がいったい何なのか話し合ったところで答えはでない。胸内に発芽する不確かな感覚の正体を知るには、その場所に向かうしかないのだから。

 森林の近くまで馬車を進め、その場に馬車は停止する。森の中には道は無く、巨大な馬車で中を進むことは出来ない。

 馬車から降りた仲間達は森林を見つめる。胸の中の不思議な感覚は依然消えることなく燻っている。

 サトゥン達も馬車から降りたらしく、森林を見上げている彼らにアンビエトが言葉を紡いでいく。


「本来ならば一般人や部外者は立ち入れぬ森ですが……皆様がどうしてもとお望みになられたので『私の力』によってこの場所までお連れしました。如何でしょう」

「ああ、使者殿には心から感謝している。どうだサトゥン、グレンフォード。これで満足したか?

俺にはお前達のいう胸の昂ぶりとやらが全く感じられないが、お前達が感じる違和感の正体は掴めたか?」

「……奥だ。更に奥に行かなければ、分からぬ。何だ、この感覚は……懐かしい、否、拒絶……?」

「お、おい……さっきから大丈夫かサトゥン。この森を見つけてからというもの、おかしな状態になっているが……」


 心配するベルゼレッドに大丈夫だと空返事を返すが、サトゥンの目は森に完全に釘付けとなっている。

 どうやら彼の症状は仲間達の誰よりも重いらしく、普段のサトゥンからは考えらないほどに口を閉ざし、意識を完全に奪われて。

 グレンフォードも彼ほどではないが視線を森の方へ向けている。どうやら違和感を感じているのはサトゥンと共に英雄を目指している仲間達だけらしい。ベルゼレッドやリュンヒルド、使者のアンビエトは彼らの異常に首を傾げることしかできない。

 一体この森の中に何があるのか。頭を悩ませる一同だが、やがてアンビエトが彼らに一つの提案を行う。


「そこまで気になるのならば、この先に向かってみますか?」

「構わないのか? 先ほどアンビエト殿はこの先が一般人は立ち入り禁止区域だと言っていたが」

「ええ、ええ。その決まりは魔法院の者共が勝手に決定した下らぬ決まりです。私の権力があれば、何の問題もありませぬ。

ただ、いくら下らぬ決まりとはいえ、それを破るのはエセトレアの臣下として心苦しい物があります。ですが私の役目はメーグアクラス王子とローナン王をエセトレアにて何一つ不自由を感じさせず持て成すのが仕事。ですので、私の働きを恐縮ですが……」

「使者として素晴らしき在り方、このリュンヒルドしかと感じ入った。エセトレア王には素晴らしき使者であったと話させてもらおう」

「右に同じだ。これでもかってくらいエセトレア王に良い報告をさせてもらおう」


 引きだした二人の言葉に、アンビエトは待っていたとばかりに顔を破顔させて礼を告げる。

 どうやら彼はこの件を出世の為の大きな道具としたいようだ。他国の王に貸しを作ることは大きな意味を持つ。

 そんなアンビエトの狙いを分かっているからこそ、二人は躊躇せず乗っかることにする。使者がこの国で出世するかどうかなど興味は無い、あちらが利用しようとしているならこちらも利用する、ギブアンドテイクとして割り切っているのだ。

 使者の許しが出た為、サトゥン達は森の奥へと進んでいく。巨大な大木が生え連なる森を彼らは一歩一歩進んでいく。

 先頭を歩く兵士達、そしてサトゥン達が固まり、背後を守るように兵士達という形である。

 この先にいったい何があるのか。そのことは未だ強く気になるが、仲間達の意識はそちらよりもサトゥンの方へ向けられている。

 彼の状態がおかしい。口数少なく、まるで呆けているように前だけを見つめたままフラフラと足を進めて。あまりの異常っぷりに仲間達の誰もが心配をせずにはいられない。特にリアンはサトゥンに言葉をかけ続けずにはいられないほどだ。


「大丈夫ですか、サトゥン様、お気分が優れませんか」

「……大丈夫だ、案ずるなリアン。私は何の問題もない」

「いや、案ずるなって……心配したくもなるでしょ、いつものあんたは何処行ったのよ。

本当に大丈夫? 気分悪いなら薬もあるし、ミレイアも治療の準備してくれているけれど」


 騒がしい人間が静かになったときほど人は不安になるもの。

 仲間達に囲まれ笑って大丈夫だと返し続けるサトゥンだが、彼の意識は明らかに前方の何かに捕われて離れない。

 この先に一体何があるのか。止まらない胸の疼きを感じながら足を進めるサトゥン達だが、彼らの足の進みは止まることとなる。

 最初に気付いたのはロベルトだった。彼の目が捉えた異物、遠くの大樹の上から放たれた牙に気付き、彼は大声をあげて前方の兵士達の方へと駆ける。


「馬鹿野郎っ! ボサっと突っ立ってんじゃねえ!」


 驚き身を竦ませる兵士を背後から蹴り飛ばし、ロベルトは腰に下げていた冥牙グリウェッジを引き抜いて飛翔する刃を叩き斬る。

 彼が一閃した牙は中央から真っ二つに立ち切られ、地面へと落下する。その正体は先端に鋭い刃が取り付けられた矢。

 ロベルトが駆けださなければ、間違いなく兵士の頭蓋を打ち抜いていただろう。恐ろしく離れた距離から寸分違わず敵兵を捉えた弓兵の腕は見事。観察していたベルゼレッドは敵ながら賞賛に値すると感じているが、それ以上に褒めるべきはロベルトの動きに他ならない。

 仲間の誰もが意識を他のことに奪われている中で、彼は見事に敵の気配を感じ取り、放った刃に対応してみせた。そして、駆け抜ける矢を短剣で斬り落とす技術も見事だ。目も身体も非常に秀でている、もし彼が部下ならば間違いなくベルゼレッドは取り立ててやるだろう。

 二十歳そこそこでありながらあれだけの動きは中々できない。よほど鍛錬を積み才に溢れているのだろう。ベルゼレッドは口元を緩める親友に気付き、軽口を叩く。


「良い腕だな、ロベルトは。あれはお前が育てたのか?」

「俺が育てた訳ではない。あいつが自発的に強くなりたいと望み、研鑽を積み重ねた結果だ。俺は手を貸しただけに過ぎん。

元より才はリアンやマリーヴェルにも劣らなかった。ロベルトは自分を過小評価する癖があるが、あいつの才に努力を重ねればあの程度の芸当は出来て貰わねば困る」

「成程、お前の秘蔵ッ子って訳かい。まあロベルトのことは後で話すとして、だ……あの弓兵、相当な腕前だ。矢の軌道に迷いが無い」

「弓にうるさいお前がそれほど褒める実力か。さて、どうしたものかな……仮にも異国だ、勝手な戦闘は行えまい」

「そこは使者様に判断を任せるしかねえだろ。どうしたもんかね」


 剣を抜いて戦闘態勢を取る兵士達と突然の攻撃に怯え慌てふためくしか出来ないアンビエト。

 どうやら使者は判断を下すことが出来ないらしく、兵士も指示を待って困惑するしかない。このままでは第二射が襲ってくるのも時間の問題だろう。

 襲ってきた弓兵に対して戦闘行為をこちらから行えば、エセトレアの兵士達の面目が丸つぶれになってしまう。ましてや相手は一人なのだ。

 どうしたものかと迷うグレンフォード達だが、戦闘は呆気なく終結を迎えることになる。遠くの大樹の上からこちらを狙ってきた弓兵が、大樹から飛び降り、こちらへ向かって悠然と歩いて近づいて来たのだ。

 剣を構える兵士達を気にする様子もなく、その弓兵は一歩ずつ足を静かに進め、やがてその容貌が確認出来る距離まで足を進めた。

 その弓兵は透き通るような白き肌を持ち、淡い金の髪を背中まで伸ばしている。綺麗に整った容貌とミスマッチな程の無表情を貫いた女性、齢はミレイアやメイアと同じくらいだろうか。

 黄土色の大きな弓を手に持つ女性は、剣を構える兵士達を見ても顔色を一つ変えることなく透き通るような声で淡々と警告を放つのだ。


「これより先はエセトレア魔法院関係者以外の立ち入りを許されていない。立ち去るがいい」

「ほお……どんな熟練の弓兵が出てくると思えば、こんな若い小娘か。荒々しい警告だが、お前は誰だ?」

「エセトレア王国魔法院兵団長リレーヌ・シルベーラ。

もう一度警告する、これより先は魔法院関係者以外の立ち入りを禁じている。立ち去らなければ魔法院特殊権を行使し、お前達を排除する」


 圧倒的多数を前にしてもリレーヌと名乗った女性は何ら感情の変化を見せることもなく警告を並べる。

 威圧する訳でもない。武器を突き付けている訳でもない。それでもリアン達は肌で感じることができていた――リレーヌと名乗る女性の持つその強さを。








(゜∀゜)←キャンプ中のサトゥン (゜∀三゜三∀゜) ←関所でのサトゥン ('A`)

←森でのサトゥン  次も頑張ります。

ここまでお読み下さり、本当にありがとうございました。

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