60話 再出発
幼い頃から何度も父母に繰り返し聞かされた物語。少年はその物語が大嫌いだった。
人間に憎悪を燃やし、この世界の全ての人間を根絶やしにしようとした魔の王。魔物に蹂躙され、滅びを待つ以外の道を閉ざされた人間達。
そんな中で生まれた僅かばかりの人間の希望、勇者リエンティ。彼は十一人の英雄と呼ばれる仲間と共に、神から与えられた武器を手に魔物達を退治していく。
どんな困難をも仲間と共に乗り越え、強さを磨き、やがて勇者リエンティは魔の王を倒し世界を救ってみせた。
その後、勇者リエンティは故郷へ戻り新たな国をつくり平和を守り続けた。英雄達も各々の生活に戻り、世界は平和を取り戻した。
勇者リエンティの物語、それはこの世界の誰もが知る古い古いおとぎ話。
どこにでもあるような、ありふれた英雄譚。そんな幻想話を少年は誰より嫌っていた。
何故なら彼は全てを知っていたから。勇者リエンティの物語に隠された真実を、意味を、結末を知ってしまったから。
重過ぎる真実を知ったとき、少年は苦悩し、やがて一つの決意をする。幼き頃に誓った夢は、今もなお諦めることなく手を伸ばし続けて。
時の流れが少年を青年へと成長させた今となっても彼は必死にあがき続けるのだ。あの日の誓いを胸に抱き続け、決して折れることなく。
――『勇者リエンティの悲劇』、その呪縛から世界を解放してみせる。そのためにも自分は必ず魔の王としてこの世界に君臨する、と。
ゆっくりと覚醒してく意識の中で、ノウァは瞼を開いていく。
目覚めた彼の視界に入ってくるのは、ベッドの上に横たわった己の身体。木造の家、その一室に彼はいた。
いったいどうして自分はこんな場所で眠っていたのか。その理由を導き出す前に彼の視界へ入ってくるは一人の少女の寝顔。
美しき蒼き髪と容貌をした人間の少女、ミレイアがベッドの隅に上半身を預けて眠っていた。そして何故か彼女の傍で、金色の毛並みを持つ猫リーヴェが香箱を組み、丸々とした瞳でノウァの方を見つめていた。
ベッドの上で眠っていた自分、現在進行形で居眠りをしているミレイア、そんなミレイアをまるで彼から守っているかのようにベッドの上で香箱座りをするリーヴェ。
状況に理解が追い付かず、ノウァは軽く息を吐き出し、冷静に自身の記憶を振り返る。彼の脳裏にある最後の記憶、それは高らかに笑い声をあげながら楽しそうにグレンシアを振り抜くサトゥンの姿。
彼に剣をへし折られたところでノウァの記憶は完全に途切れてしまっていたが、この状況から現状を把握できないほど馬鹿ではない。
軽く息を吐き、ノウァは現実を受け入れる。自分はあの魔人――サトゥンに負けてしまったのだ、と。それもただの惜敗などではなく、無様なまでの一方的な惨敗。
挑発され、激怒し、我を忘れ。本気で殺すつもりで振り上げた刃はいとも簡単に弾かれ。逆にサトゥンの攻撃をノウァは一度とて完全に受け切ることが出来なかった。
過去に味わったことの無い程に重く、速く、鋭いサトゥンの斬撃の前にノウァはなすすべなく敗れ去った。何より自信を持っていた最強の一撃も簡単に返されてしまった。
魔の王を目指し、研鑽を積み、外の世界に足を踏み出してからノウァは敗北というものを味わったことがなかった。
人に害を為す魔物を、魔族を容赦なく屠り去る作業を繰り返し、自分に敵う者など存在しないと錯覚さえ起こしていたかもしれない。そのなかでの初めての敗北。
軽く肩を竦め、ノウァはぽつりと言葉を紡ぐ。自分で吐いた言葉にも関わらず、この言葉を耳にして呆れるように笑ってしまいながら。
「プライドをズタズタにされ、笑うしかないほどに無様な完敗だというのに……この胸の清々しさはいったい何だというのだろうな」
ここまで自身をボロボロにし、虚仮にした存在を生かしてはおけぬとサトゥンを憎む気持ちが湧きあがればよかった。
だが、今のノウァの胸の中にある感情は彼自身理解出来ぬ不可解なもので。自分を一蹴にしたサトゥンを憎もうという気が微塵も存在しないのだ。
悔しさはある。あれだけの大口を叩いておきながら醜態を晒した自身への憤りはある。だが、それはあくまで自分への感情だ。サトゥンへ向けるものではない。
どうやらあの魔人に負けたことで、自分は壊れてしまったようだと苦笑し、ノウァはやがてミレイアの方へと視線を向ける。
理由は分からないが、彼女がいつまでもこうやって眠らせている訳にもいかないだろう。ここは何処か、何故ここにミレイアはいるのかを訊ねる為にも彼女を起こさなければならない。
そのため、ノウァは眠るミレイアを起こすため、その身体を揺すろうと手を伸ばそうとしたのだが。
「にゃっ」
「ぬ……」
彼のさし伸ばした手は、ミレイアの前に立ちはだかるリーヴェによって叩き落とされてしまう。
ノウァがミレイアに何かしようとしたのを察知したのか、リーヴェは香箱を崩して立ちあがり、彼の手へ自慢の柔らかな拳を放ったのだ。
行動を邪魔されたことに少しばかりムッとするノウァだが、猫相手に怒るのも馬鹿らしい。そう考え、再びミレイアへ手を伸ばそうとしたが、その手を再びリーヴェの猫パンチが襲う。
ぺちん、ぺちん、ぺちん、ぺちん、ぺちん。合計六度目となるリーヴェの妨害に、流石のノウァもリーヴェの意志を何となく感じ取る。どうやらこの猫は、俺様がミレイアに触れることを拒んでいるのだ、と。
猫ごときが魔の王を目指している俺様の邪魔をするなどと、と意志を込めて睨みつけてみたものの、猫のリーヴェはどこ吹く風。やがて根負けしたのか、猫相手に何をしているのかと我に返ったのかは分からない。諦めたノウァはリーヴェに口を開く。
「俺様はその小娘に起きてもらい、事情を説明して欲しいだけだ。俺様に触れられたくないのなら、貴様が小娘を起こせばいいだろうが」
「にゃ」
できるものならやってみろと子供のように言い放つノウァだが、キロンの村が誇る勇者教会のマスコットは通常の猫とは一味異なる。
まるで彼の言葉を理解しているかのように、リーヴェはミレイアの方へと向き直り、彼女の頬にてしてしと何度も優しく肉球パンチを繰り返してく。
やがて、薄らと瞳を開きながらミレイアは何もない宙に片手を彷徨わせながら寝ぼけたように言葉を紡ぐ。どうやら夢の中で彼女はリーヴェと自分が包まるための上掛けを探しているらしい。
「もう……寒いなら最初から一緒にベッドで寝なさいな、いつもリーヴェはこんな夜中に私を起こして……んう、夜中にしては明るいような……」
「太陽なら既に昇っている。起きろ、小娘」
「ほえ……わひゃあっ!」
寝ぼけ眼でばっちりとノウァと視線があい、ミレイアの意識は急速に覚醒される。あまりに速度が速過ぎて、とてもお姫様とは思えないような悲鳴を発してしまったが。
リーヴェを抱きしめてあわあわと慌ててノウァから距離を取るミレイアに、彼は疲れたような表情をしながら諭すように口を開く。
「先に言っておくが、俺様は別にお前を食ったりはせん。怯えるのは構わないが、まずは俺様と会話をしろ」
「すみません、つい……おはようございます、ノウァさん」
朝の挨拶を交わすミレイアに、ノウァは挨拶を返すでも頭を下げるでもなく『ああ』と短く言葉を紡いで答える。
そして二人の間に会話は途切れてしまい、静けさが室内を包んでしまう。どうしたものかと困惑するミレイアだが、やがて間を十分に空けた後でノウァがぽつりと訊ねかける。
「俺様は……あの魔人に敗れたのだな」
「あー、えっと……」
「隠す必要も誤魔化す必要もない。俺様の記憶が奴に剣を叩きつけられたところで途切れ、気付けばベッドの上。それ以外考えられんだろう。
心配せずとも敗北したからといってあの魔人に復讐どうこうなど微塵も考えていない。そんな無様な真似は俺様のプライドが許さん。
もっとも、あれだけの大口を叩いておきながらここまで一方的に敗北したのだ。十分過ぎるほどに無様な醜態を晒してはいるのだがな」
自嘲しながら告げるノウァにミレイアは何と言葉をかけてよいか更に頭を悩ませる。
彼女はマリーヴェルやメイアとは違い、戦士という生き物を理解している訳ではない。このようなとき、どんな言葉をかければよいのか分からないのだ。
困り果てるミレイアの空気を感じ取ったのか、ノウァは軽く息をついて彼女に謝罪する。
「悪い、変なことを言った」
「い、いえ……それは全然」
「訊きたいことがある。あの魔人に敗れて俺様は何日眠っていた。ここはキロンの村なのか。俺様の身体が無傷なのは何故だ」
矢継ぎ早に質問を次々と繰り出してくるノウァに対し、ミレイアはゆっくりと一つ一つの問いに答えていく。
「ノウァさんが気を失ったのは昨日のことです。ですので、ノウァさんが気を失ってからは一日も経っていませんわ。
ここはどこかという問いですが、キロンの村のグレンフォード様の家を貸してもらってます。グレンフォード様とロベルトさんは、あなたが身体を完全に完治させるまでは自由にここを使って構わないと仰ったので。あ、お二人はちゃんと昨日から別の場所に寝泊まりしていますわ」
「身体の怪我が消えているのはどうしてだ。あの魔人の一撃は無傷で済むようなものではなかった筈だが」
「本当です。いくら互いが了承し合った戦闘とはいえ、サトゥン様も容赦ないんですから。
身体中の骨は折れてましたし、いくつか臓器も痛めてましたし、身体中を強く打って……はっきり言って無事なところを探すほうが大変でした。
身体の傷が無い理由ですが……ノウァさんの身体の傷は私が治療させていただきました。身体を動かしてみて何処が痛いなどはありませんか?」
ミレイアに言われ、ノウァはベッドの上で身体を起こしたまま軽く体の各部を動かしてみせる。
拳を開閉したり腕を曲げてみたりするが、彼の身体に痛みなどどこにも存在しない。異常の無さそうな彼の様子を見て、ミレイアはほっと安堵の息をつく。
そんな彼女に、ノウァが少しばかり不可解そうに眉を顰め、真っ直ぐに彼女に対して問いかける。
「身体を治してくれたことは礼を言う。だが、理解は出来ない。なぜお前は俺様を治療した」
「なぜ、と申されましても……目の前に怪我人がいる以上、人としてもリリーシャ教徒としても放ってはおけませんわ」
「俺様はあの男を本気で殺そうとした。そんな男が相手でもか」
「そ、そうなのですか……サトゥン様を殺そうとした、サトゥン様を……
ノウァさん、非常に言い難いのですが、その……サトゥン様は多分ノウァさんと殺し合いをしたという認識は微塵も持っていないのではないかと」
「……何だと?」
「ひえ、お、怒らないで下さい! ここまであなたを背負って運んで治療を私に頼み込んだのは他の誰でもないサトゥン様で。
あなたが目を覚まして身体を万全に整えたら、また遊びたいと張り切ってましたし……」
「……笑いしか出てこないな。対等どころか、奴とは戦いにすらなっていなかったということか。
魔の王を目指し、研鑽を積み続けたところで俺様より強い奴がいた。俺様の積み上げた修練の時間は何の意味もなかったという訳か」
最強と思っていた自身の力。誰にも負ける筈が無いと自負していた力。この力があれば望みは、夢は、目的は必ず達成できると思っていた。
だがそれは思い違いで。自分の積み上げた全ては一人の魔人によって一蹴されてしまった。自身が最強というのは幻想であり、上には上がいることを思い知らされた。
勇者以外に敗北を喫するなど魔の王として認められない。もはや自分に魔の王は目指せない。その現実を受け入れようとしていたノウァに対し、ミレイアは首を傾げるように思ったままの言葉をぶつけてしまう。
「あの、もしサトゥン様に負けたことを気にされているのなら、それほど深く考える必要はないのでは?」
「……小娘、貴様」
「ひええ、だ、だから怒らないで下さいまし! だ、だってそうじゃありませんか!
あなたは確かにサトゥン様に負けたかもしれませんが、命を取られた訳でも何でもないでしょう? だったらまた自身を鍛えて再びサトゥン様に挑めばよいではありませんか。サトゥン様もそれを凄く期待されてるみたいでしたし……それではいけませんの?」
「簡単に言ってくれる……」
「ご、ごめんなさい……リアンさんもマリーヴェルもそうしていたから、戦士の方はみんなそうやって強くなるのだと思って」
ミレイアはリアンとマリーヴェルがメイアを目指して研鑽を積み続けた日々を知っている。彼女に負けて、それをバネにどこまでも貪欲に強くなろうとした二人の姿を誰より傍で見守り続けてきた。
だからこそ、ノウァが落ち込んでいる理由が理解出来なかった。彼女にとって戦士が壁を感じることは、強くなることへの何よりの近道だと思っていたから。
言葉にした通り、命があれば幾らでも機会はある。次に負けないように自分を鍛えて再び挑めばいい。そして駄目ならそれ以上に研鑽を積めばいい。
単純だが、当たり前のことだ。一度の敗北も喫したことが無く、常に命の遣り取りを行い、敗北が死を意味する殺し合いを繰り返し続けたノウァには考えられない発想。
受け入れ難いと思う自分がいる。ちっぽけな感情が意地を張って彼女の言葉から耳を塞ごうとする。
だが、ノウァはミレイアの言葉を迷いながらも受け入れた。もしミレイアの話に目を逸らし、逃げることをしてしまえば、己の全てが終わると理解していたから。
今はただ素直に敗北の現実を受け入れ、この悔しさを忘れることなく研鑽をつみ続け、いつの日か必ずサトゥンを超える。それはきっと、一人では出せなかった結論だ。
何の意識も意図もしてなかったミレイアの言葉だからこそ受け入れられた。これがサトゥンや他の戦士の言葉であったなら、ノウァは頷けなかったかもしれない。
戦士という生き物ではないミレイアだからよかった。初めての敗北、最強ではなかったという現実を受け入れることは大変なことだ。あのリアンでさえ、メイアに初めて敗北を喫した日は悔しさで眠れなかった程に、初めての負けというものは重く心にのしかかる。
だが、それでもノウァは己の余分な感情を殺して上を目指すことに決めた。そして背中を押してくれた少女に、ノウァはそっと言葉を紡ぐのだ。
「負けても鍛え直して次に勝てばいい……か。実に正論だな、その通りだ。
まだ俺様の身体は動き、命は残っている。ぐだぐだと悩むような無様な醜態を晒す時間があるのなら、少しでも己を鍛えた方が有意義というもの」
「あー、えっと、治療した身としましては、少なくとも三日ほど安静にして頂ければと思ったり……」
「そもそも敗北を喫したところで、なんだというのだ。奴に負けたところで、俺様は魔の王を目指すことを止められない、止めてはならんのだ。
思い違いをしていた。俺様にとって大切なことはどんな道を辿っても最後には魔の王となることだった。例え何度敗北しようとも、な」
「あの、ですから人の話をですね……」
「負けたなら鍛え直せばいい。奴を超えるほどに強くなればいい。実に単純明快、それだけだった。
――礼を言う、『ミレイア』。お前のおかげで俺様はまた一つ強くなれる。増長したままでは辿りつけなかった上の世界を目指すことができる」
「だからあの、私の話を……って、今、私の名前を――」
小娘ではなく名前で呼ばれたことに驚くミレイアだが、その驚きは止まらない。
ノウァはベッドから起き上がり、軽く体を動かした後に、外へ向かう扉の方へ向けて歩きだそうとする。
そのことに気付いたミレイアは、慌てて腕の中のリーヴェを床に置き、走ってノウァの前へと立ち塞がり制止する。
「どこに行こうとしてるんですか! 治療終えたとはいえ、ノウァさんは昨日まで大怪我をしていたんですのよ!」
「道をあけてくれミレイア。俺様は今すぐにでも己の身体を鍛え直さなければならん。
リアンに恥じぬ魔の王となるために、あの男を超えるために、俺様は一秒も無駄には出来んのだ」
「駄目です! 見た目の傷は治っていても、身体に溜まった疲労は抜き切っていないんですから! 絶対に許しません、少なくとも明日までは安静にしてください!」
「そんな悠長に待てるものか、我慢出来ん。この昂ぶりをどうして抑えられるというのか」
「我慢して下さい!」
「無理だ。耐えられん。ミレイア、諦めて受け入れろ。こんな想いが胸に宿ったのは生まれて初めてなのだ、俺様はもう自分を抑えられない」
「だから駄目だと……私が良いと言うまでは駄目ですって、そんな強引にっ」
無理矢理に外に出て自分を鍛え直そうとするノウァとそれを必死で止めようとするミレイア。
ノウァが本気で強引に事を為そうとすれば、ミレイアなど何の障害にもならず外へ飛び出していけるのだが、彼はそうは出来なかった。
身体を治癒し、自分に新たな道を与えてくれた少女に対し、そのような方法を取ることを無意識の内に避けようとしていたのだ。
ミレイアを説得し、それから外へ出ようという唯我独尊のノウァには考えられぬ思考と行動。ゆえにミレイアと埒の明かぬ話し合いが続けられていたのだが、それがいけなかった。
二人の声が響くグレンフォード宅、その外でワナワナと身体を震わせてそっと二本の剣を抜き放つ少女が一人。その目は完全に怒りに染まっていて、これほどまでに怒りに燃える姿は初めてかもしれない。
その証拠に、彼女と一緒に朝食ができたと報告に訪れた女性はそっと距離を取っている。止めないところをみるに、今回の場は完全に少女に任せることにしたらしい。
怒りに震える少女は、ゆっくりと扉まで近づき、そして全力で扉を蹴破って咆哮するのだった。
「私の姉に手を出すんじゃないわよボケ魔人があああああああああああああああ!」
蹴破った扉は勢いを付けたまま狙い済ましたようにノウァの顔面へとヒットして。
身体の疲労を必死に抑えたまま行動をしていたノウァの身体にこのダメージは堪らない。勢いよく床へ倒れ込むノウァと驚き悲鳴をあげるミレイア。
そんな二人の間に割り込み、星剣と月剣を抜き放ったままノウァへ向けて目を吊り上げて威嚇するマリーヴェル。その姿をまるで猫みたいだと驚きながらも思ってしまうミレイア。
吹き飛ばされたノウァは何事もなかったかのようにむくりと起き上がり、鼻血を軽く拭いながらマリーヴェルへ言葉を紡ぐのだ。
「いきなり何をする、小娘。俺とミレイアの会話を邪魔するな」
「邪魔だってするわよ! 朝食が出来たって伝えに来てみれば、とんでもない会話が聞こえてくるし……言っとくけどね、ミレイアの相手は私が認めた奴じゃないと許さないから! あんたなんかにミレイアは渡さない!」
「え、え、え?」
「突然現れたかと思えば意味の分からぬことを。ミレイアの相手はミレイア自身が決めることだ、貴様の出る幕はない」
ノウァの言う相手とは勿論話相手という意味だったのだが、マリーヴェルはそれを付き合う相手だと当然誤解する。
彼のその言葉が決定打となったらしく、怒りが頂点に達して今にもノウァに斬りかかろうとするマリーヴェル。何が起きているのか状況が全く理解出来ていないミレイア。ミレイアとの会話を邪魔され、不快そうに睨み返すノウァ。
そんな訳の分からぬ混沌とした状況に溜息を一つつきながら、メイアは全員に向けて言葉を紡ぐのだった。――とりあえず、先にみんなで朝食にしませんか、と。
あと二話程度で六章も終わりそうです。次も頑張ります。
ここまでお読み下さり、本当にありがとうございました。
そして遅くなりましたが、ポイント合計15000、そして200万PV達成いたしました。
心より皆様に感謝申し上げます。本当に、本当にありがとうございました。
これからも皆様と共におバカな勇者と仲間たちの物語を紡いでいけたらと思います。まだまだ未熟な作者ですが、これからも何卒よろしくお願い申し上げます。明るく楽しく優しく温かい、そんな物語を描けるように頑張ります。




