54話 村人
「おおい、そろそろ休憩にするぞお」
「はあい」
畑の向こうから夫の声が響き渡り、メリーサは畑から腰をあげ、手に付いた土を払って落とす。
籠に積まれたケンロの実を満足そうに頷いて眺め、その籠を持ち上げて夫の元へと歩いていく。
重さにして明らかにメリーサの体重を軽々と超えているであろう籠も、彼女は微塵も重さに表情を歪めることは無いし、そのことに夫のレイドリックも驚くことなどない。
何故なら、彼女達は人間であって、人間でない。そう、彼女達は一度死を迎えた後、勇者サトゥンに新たな生を与えてもらった隣村の者だったのだから。
その証に、メリーサもレイドリックも普通の人間とは異なる特徴が容貌に現れている。メリーサもレイドリックも、足の形状が人間とは異なり、先端が二つに割れた蹄のような形状となっている。そして犬歯がやや人より長く鋭い。これは彼らが『魔獣グランドブルズ』から生成されたことの証明である。
隣村の人々を殺し尽した魔獣であるグランドブルズ。それをサトゥンが殺し尽し、その死体と隣村の住人の魂から生み出した魔人、それがメリーサとレイドリックだった。
ある種、強制的に人外にされてしまった二人だが、彼らを含めてサトゥンに生き返らせてもらった者達はそのことに何の不満もない。
不満どころか、サトゥンを英雄扱いする村の中でも、再生させてもらった隣村の者達はサトゥンを神と敬う者が多い。当然だ、彼らは突然見舞われた理不尽な死から救ってもらったのだ。嘆き、恐怖、悲しみ、恨み、死にゆくだけの運命だった自分達に、サトゥンが再び生きるチャンスを与えてくれたのだ。死の恐怖を、死の味を理解しているからこそ、彼らは感謝を忘れない。
確かに身体は少々以前とは変わっているが、それ以上に彼らの心は喜びで溢れている。命を与えてもらったこともそうだが、何より彼らは再び身体を動かす喜びを感じることが出来ている。
以前、人間だった頃のメリーサとレイドリックは、齢六十を過ぎた老人で、一人で歩くことすら困難な程に弱り切っていた。
それが今では、自分の体重すらゆうに超える荷物すら軽々持ち上げられる程だ。再び大好きな畑仕事に従事できる、そのことが二人は何より嬉しかった。
よって、キロンの村で新生活を始めた今、彼らは自分達から率先して畑仕事に従事し、村の食糧庫に次々と食べ物を送りこんでいる。
何せ土地は幾らでもある。今日の彼らの仕事は、ケンロの実という握り拳サイズの野菜を収穫する事だ。煮ても焼いてもほくほくと美味しく、甘みのあるそれは子供にも大人にも大人気なのである。
収穫を終えたケンロの実を入れた籠を地面に置き、二人は草むらに腰を下ろして一息をつく。そして、軽く周囲を見渡し、楽しげに雑談に興じるのだ。
「いやあ、しかし村も大分様変わりしてきたもんだ。一年前からは考えられないくらい、家も建物も沢山建ってきたしなあ。人も増えて活気づいてきたし、いいことだ」
「それもこれもサトゥン様のおかげだねえ。私達が毎日ごはんを美味しく食べられるのも、あの人のおかげってことを忘れちゃいけないねえ」
「そうだ、後でケンロの実をサトゥン様のところに届けようか。エリアルのとこのレミーナに渡せば、おいしく料理してくれるだろうしなあ」
「サトゥン様、喜んでくれるといいねえ」
「そうだなあ」
のんびりと過ごす二人の老人。外見はどうみてもロベルトと同い年程度まで若返ってしまってる二人だが、中身は老人なのである。
そんな休憩中の二人だが、ふと視線の先に見慣れた少年の姿を見つける。少年と、彼と共に歩く二人の女性。
どうやら村の外へ向かっているらしいが、手に持つ武器などからして鍛錬かはたまた狩りか。その姿を眺めながら、ほっこりと二人は会話に花を咲かせる。
「噂をすれば、エリアルのとこのリアン坊じゃねえか。隣にいるのはマリーヴェルちゃんにメイアちゃんか。
村の外であいびきたあ、リアン坊もそんな年頃か。ガツガツしてて若いって奴はいいねえ」
「レイドリック、リアンちゃんがそういう男の子じゃないってことはよく知ってるでしょう」
「知ってるよ。願望を言っただけだよ。本当、あのくらいの年なら女に興味があって仕方ないくらいが普通なのに、リアン坊は全然そんな姿みせねえなあ。
こりゃエリアルやレミーナが孫を抱く日は遠そうだなあ」
「まわりが急かさずとも、いずれそういう日がやってきますよ。
マリーヴェルちゃんもメイアちゃんも本当に良い娘だし、私としては誰も泣くことなくみんなが幸せになってくれれば嬉しいですねえ」
「そういえば大工のバレスがどっちとリアン坊がくっつくか賭けの対象にしてたなあ」
「駄目ですよ、人の恋路をそうやって茶化すのは。ちなみにレイドリックはどちらに賭けたんです?」
「決着つかずにロココの実三十個。マリーヴェルちゃんもメイアちゃんも恐ろしいくらい別嬪なんだ、これを選べる男なんていやしねえよ」
「あらまあ」
かんらかんらと笑うレイドリックに、つられて笑うメリーサ。
やがて、休憩は終わりだと立ちあがり、再び畑仕事に戻ろうとした二人だが、彼らの元に近づいてくる孫娘の姿を見つけて、その足を止める。
そして、おーいと声をかけてその少女を呼んで、傍まで来た少女にケンロの実がたっぷり詰まった籠を渡してお願いをするのだった。
「悪いけれど、これをサトゥン様のところまで届けて貰えるかい、ラターニャ。きっとサトゥン様も喜んで下さると思うんだよ」
「はいっ!わかりました、おじいさま、おばあさま!」
突然の頼まれごとにも、孫娘であるラターニャは嫌な顔一つせず、籠を片手で受け取って鼻歌交じりで村の中へと戻っていく。
そんな彼女の後姿を眺めながら、レイドリックとメリーサは表情を緩めながら、ほうと呟く。
「リアンちゃんのこともですけれど、私達のひ孫の顔はいつ見られるか楽しみですねえ」
「だなあ。ラターニャにもリアン坊みたいに良い人が見つかるといいんだがなあ」
元気いっぱいに去っていく孫娘の将来を案じながら、二人は畑仕事へと再び戻っていくのだった。
畑仕事の手伝いにいったら、サトゥンへのお使いを頼まれた。
祖父母からの使命を身に受け、ラターニャは鼻歌を歌いながら、スキップ交じりで村の中央部にある教会へ向かって歩いていく。
サトゥンが今どこにいるかなど、当然思いつかないラターニャだが、軽く瞳を閉じて、なんとなく『大きなもの』を教会から感じた為、そちらに向かうことにする。
ラターニャ自身、よく分かっていないが、彼女の考えたサトゥンの見つけ方、これが実に当たる。今のところ百発百中だ。
彼女自身がやっていること、それは魔核に宿る魔力の大きさを探知するというライティが使いこなす高等魔法と同質のものなのだが、そんなこと戦いのたの字も知らないラターニャが知る筈もない。
彼女は隣村の者のなかでも、恐ろしきほどに強大な素体を元に生み出された少女なのだ。魔竜レーグレッド、それはすなわち、先日サトゥン達が苦戦に苦戦を重ねて撃破した邪竜王セイグラードと同等の竜の死体から生み出されているということ。
しかし、そんなことラターニャどころかサトゥンすら気付きもしないし知る由もない。ラターニャの中では『人よりちょこっと力持ちになった』『人よりちょこっと変わったことが出来るようになった』くらいの認識なのだから。
村の外れの畑から、とびはねながら村へ向かう元気いっぱいのラターニャだが、その道中で全然元気が感じられない生き物と出くわす。
その生き物は息も絶え絶えになりながら、まるでナメクジが這うようにゆっくりゆっくりと草原を進んでいる。
ただ、その生物が引き摺っているモノを見て、ラターニャはきょとんと瞳を瞬かせる。生物、もとい上半身裸のロベルトが身体に縄を巻きつけ、その縄の終点にあるもの、それは重さにして数十キロはあろう岩だった。そして、その上にちょこんと座るライティと、ドスンと座るグレンフォード。
二人が乗るその岩を、必死に引いて前に進もうとするロベルトの姿に、ぽむと納得したように両手を合わせ、そそくさとロベルトの前にやってきて、にこりと微笑んでラターニャは言葉を送る。
「ロベルトさんっ!おいしいおいしいケンロの実、如何ですかっ」
「吐くだろっ!今そんなもん胃袋に入れたら間違いなく吐くだろっ!」
「そうですか、残念です」
天然全開でぶつかってくる少女に、流石のロベルトも我慢出来なかったらしい。絶叫突っ込みで斬り伏せ、しょんぼりとするラターニャ。
その姿に罪悪感を感じてしまったロベルトは、少し迷ったのち、『悪い、ちょっと言葉が強かった。ありがとな』とケンロの実を受け取り、顔をひきつらせながらその実に齧りつく。もはや半分やけくそ気味である。
ケンロの実を食べながら石を引き続けるロベルトに、『頑張ってください!』と応援の言葉を投げたのち、次に岩の上の二人にケンロの実を差し出すのだった。
「ライティちゃん!グレンフォード様!おいしいおいしいケンロの実、どうぞ!」
「ありがと、ラターニャ」
「有難く頂こう。レイドリック老とメリーサ老にも感謝を伝えてもらえると嬉しい」
「はいっ!おじいちゃんたちも喜びます!」
ケンロの実を受け取った二人に笑顔を向け、それではと一礼をしてラターニャは教会目指して再び歩を進めていく。
そんな彼女の背後から、限界を迎えたロベルトの口から何かが逆戻る音が聞こえたような気がしたが、ラターニャは鼻歌を歌っていたので気付くことは無い。
元気いっぱいだが、変な方向に天然な少女ラターニャ。彼女の善意と言う名の見えない刃によって、英雄志望の青年は草原に倒れることになる。過激な運動中、胃に物を詰め込めるほど彼の身体はまだ出来ていないようである。
教会に辿り着いたラターニャだが、中を覗き込むとそこにサトゥンの姿が無いことに気付く。
中にいるのは、ミレイアと、何故か歳の近い村の若い娘が五人ほど。どれもラターニャやミレイアの友人たちだ。
通常、この時間は教会は子供達で溢れているか、怪我をした者がミレイアに治癒されている光景が日常なのだが、若い女の子達が集まっているというのは珍しい。
首を傾げるラターニャに、彼女の姿に気付いた友人達がこっちこっちと手を招いてラターニャを呼ぶ。
「サトゥン様や子供達は?」
「ちょうど今、外に遊びに出掛けましたわよ。何でもサトゥン城を使って、みんなで遊ぶとか。サトゥン様に用事?」
「うん、そうなんだけど、別に急ぐ用じゃないから。ここで待ってようかな」
「それがいいわよー。ラターニャも私達と一緒に盛り上がりましょうよ。今、すっごくいいところなんだから」
「何、何のお話?」
「ふふふ、それは勿論、私達の憧れ、グレンフォード様のお話よ!」
友人達が目を輝かせて語るは英雄グレンフォード。そのことによく分からないといった状態で首を傾げるラターニャに、溜息をはくミレイア。
どうやらこれまで散々友人達に旅中でのグレンフォードの雄姿を語り聞かせていた為、ミレイアは疲れ切っているらしい。
彼女達が何故、グレンフォードに関して盛り上がっているのか。その答えは一言で終わる。グレンフォードは、キロンの村の年頃の女の子達に大人気だからである。
何故、彼が人気なのか。その理由を訊けば、少女達の話は日が暮れるまで終わらなくなってしまうため、ミレイアが聞いた話を要約する。
まず第一に容姿が良い。第二に寡黙でいて、それでいて冷たい訳ではないところが良い。第三に自身を鍛え抜くストイックさ。第四に彼はローナン国の英雄、そしてそのエピソードがまるで御伽噺の英雄のような内容。そのどれもが、少女達の心を捉えて離さないらしいのだ。
一緒に幾度と冒険を乗り越えたミレイアからしてみれば、確かに大人な人物だが、時折サトゥン並みの常識はずれな天然ぶりを発揮し、自身の胃を痛ませる一因となる彼にそのような感情は微塵も抱けないのだが、そんなところもギャップで魅力的らしい。
大人の男性、それも人類史に残る程の英雄、若くして一国の騎士団長を務めた元貴族、現ローナン国王と親友。グレンフォードの素晴らしさを指折り語る少女達に、振り回されるミレイアは疲れ切っているという訳だ。
そんな話を聞きながら、ラターニャもまたグレンフォードの人物を振り返る。ラターニャの中のグレンフォード像、良い人、とても良い人。終わりである。
故に、率直な感想を友人達に告げるが、あまり面白みが無い内容の為、残念と肩を落とされる。いつの時代も色恋の話が好きなのだ、少女達は。
軽く息をつきながら、ミレイアは一応会話に参加するように口を開く。お姫様出身でありながら、身分を気にせず気さくに話せるミレイアだからこそ、友人が多いのだろう。もっとも、長い間、城ではなく神魔法の修行の為外に出ていたミレイアにとっては、何でも無い当たり前のことなのだが。
「皆さんがグレンフォードさんのことを大好きなのは分かりましたけれど、振り向いてもらうのはなかなかに難しいのではなくて?
あの方が色恋どうこうする姿なんて、本当に想像が出来ませんけれど……」
「あ、いいのいいの。私達、眺めてるだけで十分だから。ほら、実際に恋愛対象としては恐れ多いってうか」
「だよねー。高嶺の花どころか、断崖絶壁の花って感じで。遠くからきゃーきゃー言ってるだけで満足だよー。格好良いよね、グレンフォード様」
「外見ならサトゥン様も負けてないっていうか、何処の誰よりも格好良いんだけど……サトゥン様は、ねえ」
「うん、サトゥン様はなんていうか……異性対象じゃないよね」
どうやらグレンフォードとは異なり、同じ美系筋肉のサトゥンは少女達にとってそういう対象ではないらしい。
外見だけならば人間とは思えない、実際人間ではないのだが、人間離れする美しき容貌を持つサトゥンだが、それは黙っていればの話である。
口を開けば乙女の夢をぶち壊すほどに台無しな有様。この場にいる少女全員が、先日子供達に勇者ごっこで勇者役を奪われ号泣するサトゥンの姿を見ている。床を転げ回り勇者役じゃないとやだやだやだと子供相手に訴える勇者サトゥン。そんなものを見た後で異性だの憧れだの言える方がおかしい。
有る程度年齢の重ねた女性になると、そういう子供っぽいところが逆に良いと思うらしいのだが、彼女達は残念ながらその域には到達していない。
年頃の少女達にとって、サトゥンは非常に残念な美形、自分達の救世主だけど残念な人、なのだ。言ってしまえば異性というより、神様なのだから。
聞いてて少し可哀想になってきたのか、どうにかフォローしてあげられないかと考えていたミレイアだが、その必要はないことを知る。
口々にサトゥンのことを話している少女達の表情、それはとても楽しさに満ち溢れ、そして誇らしげで。
「二日前、メリンさんの家で赤ちゃんが生まれたでしょ?
それを聞いたらサトゥン様、村を飛び出したと思ったら巨大なレニードベールを狩って家に届けたんだって。
ほら、赤ちゃんが生まれたら蛇を食べると良いってあるでしょ?それを村長に聞いたらしくて、こーんなでっかいレニードベールを探してきたみたい」
「えええ、レニードベールって人間も丸飲みするような蛇なんでしょ?流石サトゥン様だね」
「メリンさんもアーニさんも感激しちゃって、子供の名前、サトゥン様から少し頂いてトゥーシェにしたって」
「サトゥン様といえば、四日前、狩り場で怪我人がでちゃったとき……」
少女達が楽しげに語りあうサトゥンの活躍。それが語られる度に、少女達は凄い凄いと笑いあい、サトゥンのことを誇らしく思っている。
その姿を眺めながら、ミレイアは軽く息をついて微笑む。心配する事など何一つない、サトゥンの行動は村の全ての人の心にしっかりと映し出されているのだから。
真に人に慕われるということ、それは感謝されるだけではない。真に人に想われるということは、その人に自身の存在を誇ってもらえることだ。
少女達が楽しそうに語り合う姿、サトゥンの活躍ぶりを嬉々として語り合う姿、それはまるで勇者の武勇に胸を躍らせる人々そのものではないか。
普段、子供っぽい姿やとぼけた姿を見せていても、大事な部分を村人達は決して間違えることは無い。
そのことをミレイアは嬉しく思う。彼が変に誤解されることなく、一番大切なことをみんなにしっかり理解してもらえたこと、そのことが嬉しかった。
そんなミレイアの表情を横から眺めていたラターニャは、ぽむと掌を叩き合わせて、ミレイアに言葉を紡ぐのだ。
「ミレイア、頑張って!」
「へ?な、何をですの?」
「私もよくわかんないけど、応援してる!親友だからね!」
にこにこと笑うラターニャに、ミレイアは首を傾げつつもありがとうとお礼を告げる。
そして、少女達の雑談はサトゥンと子供達が戻るまで続けられた。教会の扉が勢いよく開かれ、サトゥンと子供達が勢いよく入ってきたが、サトゥンはふと集まる少女達をみて楽しげに言葉を紡ぐ。
「うははははははは!うら若き小娘達が集まって何を話しておる!
ふんむ、読めたぞ!勇者サトゥンをもてなす為の祭りを企画しておるのだな!むはははははは!構わんぞ!私はいつでもお前達のもてなしを受けつけようぞ!」
「サトゥン様!おじいちゃんとおばあちゃんからケンロの実をおすそわけです!」
「おおおおおお!ふはははは、感謝である!ゆくぞお前達!今から外でケンロの実を我が魔炎にて、ホクホクに焼いてやろうではないか!
沢山食べて大きく立派に育つのだぞ!子供はすくすくと育つのが大事な仕事である!うはははははははははは!」
ラターニャに渡された籠を片手に、サトゥンは歓声をあげる子供達をひきつれ、サトゥンは再び教会の外へと飛び出していく。
子供達にこれ以上ない程に慕われ懐かれているサトゥンの姿を眺めながら、ミレイアは思うのだ。勇者として人々にちやほやされたいと言っていた彼の夢は、既にとうの昔に叶っているのかもしれないと。
この村の者にとって、誰もが笑って誇れる存在、唯一無二の勇者様――それがサトゥンなのだと、ミレイアもまた胸を張って言えるのだから。
「ぬうううううう!焚火をする為の薪がどこにもないではないか!
なんということだ!このままではケンロの実が焼けず、子供達が泣いてしまう!これはいかんぞ!子供を泣かせて何が勇者か!
待っておれ、子供達よ!安心しろ、私は勇者だ!この程度の障害、乗り越えてみせるわ!助けてくれミレイア、ミレイアアアアアアア!」
「……ただ、私を振り回すのは本当に勘弁してほしいのだけれど。すぐ参りますわ!」
教会の外から響いてくる自身を呼ぶ声に苦笑しながら、ミレイアは友人達に背を押されるように教会の外へと向かうのだった。
ミレイアが用意した薪に火をつけ、焼けたケンロの実を子供達に配り、共に頬張ってうまいうまいと叫びまわるサトゥン。
そんな彼を通りすがりの村人達が微笑ましく眺めてゆきながら、今日もキロンの村の平穏な一日は過ぎてゆくのだった。
おとなも こどもも おじーさんも。村中全土がサトゥマゲドン。次も頑張ります。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。次話から物語進むと思います、はい。




