幕間7話 恋心
ポフィールの背に乗り、彼らが目指したのはキロンの村ではなく、メーグアラクス城だ。
村に戻るより先に城へ向かった理由、それは今回のトントの街を襲撃した魔物達の正体、そして元凶である邪竜王のこと、メイア救出のこと等を報告する為である。
サトゥンは先程手に入れた竜の首を持ち帰り、トントの街で喧伝すればいいと提案していたが、それをマリーヴェルが一蹴した。
今回の一件には王国からも兵士が動いているので、トントの街でそれを話したところで、城に情報が伝わるまで待たされることになることは確実。ならば自分達から城に出向いて直接報告した方が速いとの判断した。
彼女の言葉にグレンフォードやメイアも同意した為、メーグアラクスへと進路を変更したという訳だ。
メーグアラクス城、その中庭に突如舞い降りた黄色い巨大な肥満鳥。
何事かと城中が混乱に陥りそうになったが、その背中からマリーヴェルやミレイア、メイアが降りてきたため、騒ぎは収縮していく。
そして、サトゥン達の来訪を知り、駆けつけた王達に、マリーヴェルは今回のトントの街の一件のことを全て報告した。
全ての話を聞き終え、王はサトゥンをはじめとする一同に深く礼を告げる。トントの街を襲った災厄、その脅威を消し去ってくれたことに。
まだ言葉で説明しただけだが、サトゥン達にはかつて王国に巣食う暗部、魔人レグエスクの退治をやってのけた過去がある。
加えて、隣国の英雄グレンフォードや自国の英雄メイアもいるのだ。彼らの証言が嘘ではないかなどと微塵も疑う筈が無かった。
ただ、サトゥンが胸躍らせて期待した最強最悪の竜退治の英雄として扱われること、これが非常に難しい。
何故なら、邪竜王セイグラードは魔竜レーグレッドとは異なり、人々には全くと言って知られていない過去の化物だ。事実、王達ですらその名前を知らなかった。
その理由は、以前フェアルリが話してくれたように、口伝でしか語り継がれていない存在であるが為。故に、サトゥン達が行ったことを大々的に王国から広めても、『伝説の邪竜を退治した英雄』ではなく『トントの街を襲った化物を退治した英雄』となる。
どちらにせよ名前が広がることに変わりは無いとサトゥンは高笑いして気にする様子は全くなかったのだが。今回の功績に報いる為に何か欲しい報酬はないかと訊ねてきた王に『勇者サトゥンの名を広めてくれ』と胸を張って欲望丸出しに答えるサトゥン。どこまでも自分に正直な勇者である。
そんなサトゥンをどつきながら、マリーヴェルはメイアを王の前に出し、『報酬代わりじゃないけれど、前にお願いしてた通り、メイアを連れていくから』と言い放つ。
以前より、マリーヴェルとミレイアはメイアの領主としての役職が終えたら、自分達の護衛役という名目でメイアを村につれていくことを王達に告げていた。
マリーヴェルの発言に、王は然りと頷く。メイアの領主としての任期は既に終えている為、何の障害もない。この場で王はメイアに対し、サトゥン達と共にいくように命を下した。
頭を垂れ、跪いて任を受けるメイアだが、彼女の心にある最後の迷い、それはトントの街の復興。そのことを見抜いていたのか、王の隣にいた長兄リュンヒルドが今後のトントの街のことを語ってくれた。
これから三年の間、トントの街においてリュンヒルドが復興の指揮を執ること。それが次王となる彼に課せられた役割であること。
次期後継者である彼が街のトップに立ち、街の行政を学ぶ意味もある為、メイアが領主の仕事を気にする事はないのだと話してくれた。
自身より遥かにそちらに精通しているリュンヒルドならば、街も以前より大きく発展するだろう。そのことにメイアは納得し、改めて膝を折って王の命を受け入れる。
そのことに王は顔には出さないが、胸に喜びを溢れさせていた。国一番の強者であるメイアが娘達の傍にいてくれること。何だかんだ言って、彼とて一人の父。可愛い娘達には甘い父親なのである。
なお、サトゥンが王達の前で意気揚々と取りだした邪竜王と勝手に命名した竜の首だが、リュンヒルドより必要ないと一蹴されてしまった。不要となったその竜の首は、ポフィールがおやつがわりに一気呑みして満足そうに鳴いていた。美味しかったらしい。
王城よりキロンの村へ帰りつく頃には、既に日が落ちかかっていた。
背から飛び降りた面々を確認し、自分の仕事は終えたとばかりにポフィールはコロコロと転がりながら自宅であるリアンの家の隣、レミーの元へと戻って行った。
戻ってきたポフィールが巨大化していたことに、レミーは目を輝かせて『ぽふぃーが大きくなった!』と大歓喜。その両親も笑いながら『大きな卵がとれそうだねえ』などと言ってポフィールを迎え入れていた。キロンの村人達、サトゥンのせいで大抵のことには動じなくなってしまった不思議な村である。
我先に戻ったポフィールに倣うように、面々はこの場で解散となる。
「それでは皆の者、今日は解散としようではないか!そろそろレミーナの夕食が待っているのでな!ミーナの子守りもせねばなるまい!」
「村に帰って第一声が子守りって……いや、アンタがそれでいいならいいんだけど。
まあ、とにかく今日は疲れたわ。今日は早く寝ることにする。メイア、貴女今日からウチに泊りなさい。まだ滞在する場所決めてないでしょ?」
「ええ、いいのですか?」
「いいのよ、メイアは姉みたいなもんだし、慣れない他の村人の家に世話になるより、気分も楽でしょ。それじゃ、またね」
「それでは皆様、また明日」
メイアの手を引いて去るマリーヴェルと、それを追いかけるミレイア。
マリーヴェルの言葉通り、全員の身体の疲労はピークに達しているだろう。今日は騒いだりせず、早急に休養を取りたいというのが全員の一致する意見なのかもしれない。
マリーヴェル達が去った後、続いてライティも兎耳をピコピコとさせて全員に別れを告げる。
「それじゃ、私もお母さんのテントに戻るね。ばいばい、みんな」
「おう、夜更かしするじゃねえぞ。俺も今日は早く寝ることにするよ。
という訳でグレンフォードの旦那、今日も宿をお借りしたいんですけど……」
「構わん。自分の家と思って好きに使うと良い」
流浪の民のテントに戻るライティ。そして、グレンフォード宅に厄介になるロベルト。
ライティ達、流浪の民の家はまだ完成しておらず、テント暮らしを続けているが、あと数週間もすれば全ての民の家が完成するだろう。
また、ロベルトは先日お世話になったグレンフォードの家へ転がり込む。メイア同様、彼の家も当然ないので、必然的に既に完成しているグレンフォードの家へお世話になっているのだった。
それぞれの帰宅を見届け、リアンもまたサトゥンと共に家へと戻るのだ。再びみんなと共に家に戻れる喜び、それを強く噛み締めながら。
「サトゥン様、今日は本当にありがとうございました」
「ふんむ?礼を言われることなど心当たりはないが、ふはは!貰える物はもらっておくぞ!さあリアン、家へ帰ろうではないか!」
「はいっ!」
夕暮れが差し込む村の中を、二人は笑いあって進んでいく。
激戦を闘い抜いた勇者と英雄達にしばしの休息を。戦うことを忘れ、いまはただ、穏やかな日常を享受して。
「あああああ疲れたああああああ」
身体を清め終え、テーブルの上に身体を突っ伏して溶けている妹に、ミレイアははしたないと注意すべきか迷ったが、結局何も口にしないことにする。
妹がメイアを救う為にどれほど頑張ったのかは、姉であるミレイア自身が誰より理解している。故に、今日くらいはそれくらいのことは見逃してあげようと思ったのである。口にしたら反論で打ち負かされるのが分かっているから逃げた訳では決してない。
身体の痛みは神魔法で和らぐことは出来ただろうが、疲労が抜け切る訳ではない。故に、ミレイアは早く休むことをマリーヴェルに提案する。
「身体も疲れているのだから、早く寝てしまいなさいな。貴女もさっき、自分でそう言ってたじゃない」
「んー、そう思ってたんだけど……気が変わった。もうちょっと」
「また、そんな猫みたいに気まぐれな……」
マリーヴェルに溜息をつきながら、ミレイアは彼女の為に果実水を用意してあげる。
用意したのは三つ分。マリーヴェルの分と、自分の分と、今身体を清めにいったメイアの分だ。
三人分の杯を用意したミレイアだが、自身の足元にてしてしと小さな妹がパンチを繰り出しているのに気付き、再び溜息をついて四人目の分を用意する。
果実水を注いだ杯を屈んで小さな妹、リーヴェに渡すと、リーヴェは器用に二本脚で立ちながらそれを受け取り、部屋の奥へと去って行った。
最早、ミレイアの前では動物の振りをすることすら放棄し始めたらしい。誰にも信じて貰えないこの目の前の光景のもどかしさを歯噛みしつつ、ミレイアは残る杯をテーブルの上へと並べていくのだ。
ありがとうと礼を言いながら果実水をマリーヴェルが口に含んだ頃、メイアも丁度戻ってくる。
身体を水で清めたメイアは艶めかしく。歳が四つ違うとはいえ、自身に比べて遥かに出るところ引っ込むところの格差が激しいメイアの大人な身体を恨めしく思いつつも、マリーヴェルは口には出さない。プライドというものがある。
そんなマリーヴェルの気持ちなど当然気付く筈もなく、メイアはミレイアに礼を言いながら果実水を受け取り、席へと座る。
受け取った果実水を口に運ぶ姿は気品を感じさせる洗練されたもので、流石は貴族だな、などとマリーヴェルは考えながら眺めていた。自身が王女であることは完全にすっとんでしまっているらしい。
杯をテーブルの上に置き、メイアは改めて二人に視線を合わせ直す。そして背筋を伸ばしたまま、頭を下げるのだ。
「改めてお礼を言います、マリーヴェル、ミレイア。貴女達のおかげで、私はこうして生きて帰ることが出来ました」
「もういいってば。当然の事をしただけだし。もし、私とメイアが逆の立場でも同じように助けてくれたでしょ?ならそれでいいじゃない」
「そうですね……ですが、やはり皆さんには感謝してもしたりません。ですので、礼を受け取って頂けたら嬉しく思います」
「はいはい、丁重に受け取ってあげるから感謝してね」
「でも、本当に良かったですわ。メイアさんとこうしてお話する事が出来て」
「ええ、本当に……」
「一番安堵しているのは、間違いなくリアンさんでしょうけれど。リアンさん、本当にメイアさんのことだけを考えてましたから」
それは、ミレイアが何も考えずに発した一言だった。
ミレイアの眼から見ても、メイアがいなくなってしまって、一番傷ついていたのはリアンだった。そんなリアンの心配する姿を思い出しながら言った、なんでもない一言のつもりだった。
だが、それが点火の合図になろうとは誰が思うだろうか。事実、ミレイアはそんなつもりはなかったと涙目で後に否定している。
リアンという単語が出た瞬間、これまで穏やかに微笑んでいたメイアの顔が、まるで炎魔法に包まれたかのようにみるみる真っ赤に染まっていったのだ。
そんなメイアの変化に、マリーヴェルもミレイアも眼を見開いて驚く。急に真っ赤になって顔を俯かせるメイアの異常に、ミレイアは恐る恐る訊ねかける。
「そ、その、メイアさん、どうしましたの?お顔が凄く真っ赤ですけれど……」
「あ、あの……リアンが、その……私のことを、その……」
「リアンさんがどうかしましたか?」
「い、いえ……」
言葉を濁しながら押し黙るメイア。そんな普段の彼女らしくない姿に、ミレイアは少しばかり首を傾げるものの、ふととあることに気付きハッとする。
しかし、自身の推測が当たっていると確信出来ない。何故なら先程まで、リアンと共にいたメイアはいつものメイアだったからだ。
もし、彼女の心にミレイアの推測通りの感情が芽生えたのだとしたら、リアンと『抱き合っている』時点でそういう変化が見えていてもおかしくはないのではないか。
どうしたものかと迷うミレイアだが、彼女の妹は姉のように踏み込むことに躊躇をするような性格ではなかった。
軽く息を吐き、マリーヴェルは突っ伏した身体を机から起きあがらせ、軽く自身の髪を梳きながら、メイアに問いかけるのだ。
「あのさ、メイア。単刀直入に訊きたいんだけど。もしかして貴女――リアンが好きなの?」
どこまでも全力で直球を投げ込む妹に唖然とする姉。ただ、マリーヴェルは真剣にメイアを真っ直ぐに見つめている。
静寂が室内を包み込み、張り詰めた空気が続く。自分は関係ないのに、何故か胃が痛みだすミレイア。部屋の隅で果実水を呑むリーヴェ。
やがて、その沈黙の世界の中で、メイアは俯いたまま顔を真っ赤にしてコクンと小さく頷いて肯定する。それを見て、マリーヴェルは身体中から力が抜けるように机に頭を突っ伏して言葉を紡ぐ。
「いや、なんとなく分かってたけど……何ていうか……いつから?」
「……自分の気持ちに気付いたのは、トントの街がグレイドス達に襲われた時です。
あのとき、私はグレイドスに敗れ、自身の心を破壊されそうになりました。自身の死を強く感じる中で、その、強くリアンに会いたいと思った時に、その……」
「どこ?リアンの何処に惹かれたの?」
「初めは、恋ではありませんでした。自分を目標にし、日々成長するリアンの姿に胸を躍らせて彼に会うことが楽しみになっていました。
何処までも真っ直ぐな彼の心、何処までも前だけを見つめて走り続ける姿、そんなリアンに……知らずの内に、惹かれていたんだと思います。
先程までは、リアンに再び会えた喜びの方が勝っていたので、大丈夫だったんですが……その、今、冷静になって、その」
メイアからぽつぽつと返ってくる言葉に、マリーヴェルは頭痛を感じる。
ああ、成程。悔しいけれど、やっぱり自分達は似ている。『リアンに惹かれたところ』なんか、まるっきり同じではないか。
ただ、感情の発露の瞬間が違っただけだ。メイアはリアンとの永遠の別れに恐怖し、初めて自分の感情に気付いた。対してマリーヴェルは、メイアを失って壊れそうになったリアンの姿を見て、彼が失われることを恐怖し、自身の感情に気付いた。
どうしようもないほどにメイアの気持ちが分かる。分かるからこそ否定なんて出来ない。その否定は、自身の胸に抱くリアンへの想いも否定してしまうことになるから。
少し間をおいて、マリーヴェルはゆっくりと口を開いてメイアに想いをぶつける。そうしなければフェアじゃないと思ったから。
「……私もさ、好きなのよね、リアンのこと」
「ええ、知っています」
「驚かないのね?」
「貴女がリアンの為にとった行動、その全てに想いを感じますから。それに、私達は似た者同士ですからね……なんとなく、分かりますよ」
「そうね、私達は似てるんだわ。まさか惚れる相手まで同じだとは思わなかったけれど」
二人の会話を聞きながら、顔を真っ青にしてミレイアは思う。何故こんな修羅場に自分はいるのだろうと。そして何故誰よりも胃を痛めているのであろうと。
二人の言葉の交換を聞いてるだけで、小心者のミレイアは胃がキリキリと痛んでたまらない。何となく予想はしていたが、まさか妹とメイアがここまで刃を突きつけあって話す等とは思ってもいなかった。
逃げたい。このまま何も聞かなかったことにして、部屋に戻ってベッドに入ってリーヴェを抱きしめて眠りたい。
けれど、この場で自分だけ去れる空気など微塵も形成されていない。故にミレイアは、胃の痛みを抑えて必死に沈黙を貫くのだった。そして自分が惚れる男は競争率の少ない男にしようと強く誓うのだった。
真っ直ぐに視線を交わし合う二人だが、やがてマリーヴェルが大きく息をついて、再びメイアに向かって口を開く。
「リアン、良い奴よね。馬鹿みたいにお人好しで、優しくて、口を開けばサトゥン様サトゥン様って子犬みたいに喜んで。
ああもう、なんで私、惚れちゃったのかな……リアンじゃなかったら、メイアのこと素直に応援してあげられたのに。
ごめん、メイア。私、自分の心に正直だからはっきり言っておく。リアンのこと、譲れない。私、負けたくない。
リアンは初めて私に外の世界を、この世界の輝きを教えてくれた人なの。貴女とリアンのこと、笑って祝福するなんて、出来ない」
「当然です、マリーヴェル。私だって同じです。本当なら、貴女の気持ちを祝福してあげなければいけないのに……」
メイアの返答に、マリーヴェルが当然だとばかりに頷き、笑みを零す。
そして、彼女は答えを出すのだ。お互い譲れないのなら、お互い本気で惚れているのなら、取るべき道は一つしかないのだから。
「だからさ、勝負。どっちがリアンに振り向いて貰えるか、負けてもうらみっこなし。
ただ、いがみ合ったりケンカしたりするのは無しにしましょう。そういうの、嫌だから。私は正々堂々貴女に勝って、リアンに好きになってもらう」
「マリーヴェル……いいのですか。私が、リアンのことを好きでいても」
「良い悪いなんてないでしょ。だって仕方ないじゃない、私達二人、同じ男の子に惚れちゃったんだから。
リアンは一人、半分こって訳にはいかないわ。それに私、意外と独占欲強いみたいだから、半分程度の愛じゃ絶対に物足りないもの」
「ふふっ……そうですね、私だってそうです。愛する人は、全身全霊をかけて愛したいし、愛されたい。私も欲深いみたいです」
「それじゃ、正々堂々。負けないわよ、メイア」
「私もです、マリーヴェル」
お互いに手を差し出し、握り合う二人。互いに優しく、そして楽しげに微笑みあう二人に、ようやく修羅場は終わったのだとミレイアは身体をテーブルに突っ伏して倒れる。
胃の痛みからやっと解放されると涙目で喜んではいるが、別に修羅場が完全に終わった訳ではない。近い将来、また二人は一人の男をかけて争うことになるだろう。
いってしまえば、先送りしただけである。そのことを考えないことにして、ミレイアは胃を抑えながら神に感謝を捧げるのだった。
固く握手を交わし終え、満足したマリーヴェルは寝ようかと考えていたのだが、そんな彼女に再びメイアが顔を真っ赤にして、訊ねかける。
「その、マリーヴェル、訊きたいことがあるのですが」
「何よ、遠慮なんか今更私達の間にいらないでしょ」
「そのですね……私、リアンより四つも歳が上なのですが、その、こんなに年上の女性に一方的に想われるのは、迷惑だったりしないでしょうか……」
メイアのその言葉に、マリーヴェルは頭の中で何かがぷっつーんとぶっ飛びそうになる。
確かにリアンとマリーヴェルは十六、メイアは二十と四つ歳は離れているが、メイアのその年齢は逆に恐ろしい程の武器なのだ。
大人の女性としてマリーヴェルには無い妖艶な身体と気品さ、そして何より大人の落ち着き、言ってしまえば、メイアとマリーヴェル、リアンがどちらを女として意識しているかなど考えるまでもないのだ。
今からよーいドンとは言ったものの、スタート地点ではっきりいってメイアに遥かに軍配が上がっている状況なのに、こんなことを言ってくる女は許せぬとばかりに、マリーヴェルは天然娘を寝室に連れ込み、その身体を存分に抱き枕代わりに使い堪能することで鬱憤を晴らしていた。
まだ寒さが残る夜の頃合い、メイアという天然抱き枕は思いのほか暖かったとはマリーヴェルの言である。余談であるが、寒いからといってリアンのベッドにわざわざ潜り込んで満足気にぐーすか眠りこける筋肉もこの村にはいたという。
君は誰とキスをする(サトゥンorグレンフォードorグレイドス)
あと一話幕間を挟んで6章に移れればと思います。頑張ります。
ここまでお読み下さり、本当にありがとうございました。




